母乳に含まれる成分に殺腫瘍効果

【要素技術】

  • ・固形腫瘍を遺伝子エンジニアリングで治癒できる可能性に迫る
  •  個人特有のがん細胞の突然変異を突き止め、その異常(新生抗原)のみを標的とする完全に個別化した免疫治療を施すことでがんを治すことができるようになるかもしれない。米PACT Pharma社はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と共同研究を実施し、自社の遺伝子エンジニアリング技術を駆使して、各人に最適な個別化免疫細胞を製造しようとしている。人に本来備わる免疫システムを使った免疫細胞療法は、血液がんの治療においては既に成功例が報告されているが、今後固形腫瘍やその他のがんにおいても活用できる可能性が見えてきている。
    Personalized gene-edited immune cell therapy for patients with solid cancers: New data establishes approach for verifying patient-specific cancer mutation targets

  • ・「そのまま使える」静脈内注入用インスリンの開発
  •  ヘルスケアに特化した戦略的投資会社、米Water Street Healthcare Partners社が米医薬品メーカーCelerity Pharmaceuticals社と、その場で使用可能な(ready-to-use)インスリン「Insulin Human」(ヒトインスリン製剤)の開発に成功し、米食品医薬品局(FDA)に初めて承認された。「Insulin Human」は、健常人から分泌されるインスリンと同じアミノ酸の並び方に作られたインスリンであり、開発された新薬は0.9%のナトリウムクロリド注射液に使われる。品質保持期限は従来の製剤よりも長くなり、常温(25℃)では30日間、冷蔵庫なら2年間保管可能とされる。米Water Street Healthcare Partners社が商品開発に成功したのは今回8回目となり、これからも革新的な製剤開発で、ますます臨床現場における効率化と治療の高度化に向けて活動を展開する。
    Water Street's Partnership with Leading Medical Products Company Leads to FDA Approval of the First and Only Ready-to-Use Insulin for IV Infusion

  • ・アスピリンの日常的な服用、米国で物議を醸す
  •  米国では、長年心臓発作予防に、少量のアスピリン(代表的な消炎鎮痛薬)を毎日服用するとよいと信じられてきた。2017年には、心臓病の診断を受けていない40歳以上の米国人2900万人が日常的にアスピリンを服用しており、そのうち660万人は医師から薦められたわけではなく、自己判断で服用していた。しかし、昨年複数の研究において、アスピリンの服用が、健康な人の頭蓋骨内出血のリスクを高めることが明らかにされた。アスピリンの服用の是非について物議が醸される中、米ライフサイエンス企業Bayer社は、「心臓病の患者が急にアスピリンの服用を中止すると、心臓発作のリスクは63%増え、血栓性脳卒中のリスクは40%増える」と注意を促した。現在、ガイドラインにおいては、アスピリンは心臓病を患う患者の2次予防としてのみ使用が許可されており、「アスピリンの服用計画を立てる場合は、必ず事前に医師と相談すること」とされている。
    Daily Aspirin Still Recommended for Millions of Americans Who Have Had a Heart Attack or Ischemic Stroke

  • ・妊娠14週目に破水したのちに、元気な双子の赤ちゃんを出産
  •  陣痛が起こる前(分娩開始前)に卵膜が破れ、羊水が流出したものを前期破水(PROM)という。特に妊娠37週未満(早産)の場合はpretermPROMと呼ばれ、アメリカでは毎年14万人の妊婦に発生する。レイチェル・シャドレー・バーローさんは妊娠14週目に、お腹の中の双子のうち1人の羊膜が破れ、医師からは今子宮から子供を出すと肺が生成されずに、2週間以内に流産する危険があると告知された。レイチェルさんと夫のジェズさんは失意の中自宅に戻り、藁にもすがる思いで米PPROM財団が提供するオンラインサポートネットワークとガイダンスを頼りに、母体を安静に保った。24週目の検診で赤ちゃんの羊膜が完全に離れたことが確認され、その後無事に赤ちゃんは出産された。子宮の中で、赤ちゃんが3カ月間羊水がない状態で過ごしたことによる大きな影響はなく、片足に外科系の症状が残ったのみで済んだという。PPROM財団は、今回のようなケースはまれだとし、前期破水のさらなる研究を推進し、妊婦が正しい情報を元に自己チェックできるよう、ホームページで意識啓発を促している。
    Mother Delivers Healthy Full Term Twins After Water Breaks at 14 Weeks With Support From The PPROM Foundation

  • ・共感力と思いやりを生む脳のメカニズム
  •  ビジネスパーソンであり、慈善活動家としても知られるT・デニー・サンフォード氏が、カリフォルニア大学サンディエゴ校に「共感と思いやりの研究所」を新設。共感と思いやりを脳神経学的に研究するために、最新の神経画像技術を駆使し、脳の活動マップを作成。思いやりのある振る舞いを抑制・促進する因子を解析し、共感力を高めるシグナルを増加させる方法を探る狙い。サンフォード氏は、ダライ・ラマの科学と信仰への深い洞察に触発され、共感力を生む脳の仕組みを、医療従事者のトレーニングに取り入れようとしている。米国では医師や医学部の学生の燃え尽き症候群が問題となっており、1万5000人の医師の44%が燃え尽き症候群を経験したと回答している。医学の道を目指す人の多くは、最初は「人の役に立ちたい」という強い思いやりと共感力が動機として働くものの、ストレスの高い医療現場で目的を見失うケースもあるという。科学データに基づいた「共感力と思いやり」を医療現場に効果的に取り入れることにより、世界はよりハッピーで健全な場所になるとサンフォードさんは語る。
    With Landmark Gift, UC San Diego Will Map Compassion in the Brain, then Prove its Power

  • ・南フロリダLee Memorial病院で、初めて消化器外科手術をロボットが支援
  •  米最大手の総合的がん治療ネットワーク21st Century Oncologyの一部門である、South Florida Surgical Oncologyが初の消化器系ロボット支援手術を実施した。医師は、患者の横のコンソールの中に座り、最新の技術を使ってロボットの腕を操作しながら手術を進める。手術支援ロボットを使うことで作業の正確性を高め、侵襲を最低限に抑えることで患者の入院期間を短縮し、痛みを軽減しながら回復を早めることができる。多くの患者がオンラインでロボット支援手術が受けられる病院を検索し、遠方から訪れているそうだ。
    South Florida Surgical Oncology, A 21st Century Oncology Practice, Performs Its First Robotic-Assisted Operation

  • ・母乳成分を使った「未来のやさしいがん化学療法」
  •  スウェーデンの研究グループが、1995年に人の母乳に含まれる成分が、普通の細胞を傷つけることなくがん細胞を撃退することを突き止めた。母乳に多く含まれるたんぱく質α-ラクトアルブミンがオレイン酸と結合することで、殺腫瘍性の効果が発揮されるという。この最新の治療成分はHAMLETと名付けられ、第1相と第2相試験が行われた結果、膀胱がん患者への効果が立証され、副作用も報告されていない。また、他にも40種以上のがん細胞をやっつけることが研究で明らかにされている。この母乳成分を使った治療を開発した米Hamlet Pharma社は、未来の「gentle chemotherapy(やさしいがん化学療法)」としての確立を目指すとして意欲を示す。
    HAMLET Pharma Announces Results of First Major Clinical Trial for a New Cancer Killing Molecule

  • ・脳はどうやって匂いを判別しているのか
  •  米Cold Spring Harbor Laboratory(CSHL)とハーバード大学の神経科学者が共同で、脳の嗅覚を解明する研究を行ったところ、従来の見解を打ち消す結果が出た。従来は、それぞれの匂いの分子特性を脳が予測するシステムが存在するとされていたが、今回の研究では、ある種の匂いの中には分子特性と脳の神経反応に関連性が見られるものの、初めて遭遇する匂いやバラバラな分子特性でテストをしてみたところ、脳には匂いを予測する能力はないということがわかった。今回の研究ではっきりしたのは、匂いに関する脳の働きは解明できず、脳から発信される物理的・科学的な機能は見つからなかったということである。人が匂いをかぐと、まず嗅覚受容体によって鼻から取り込まれ、前脳にある嗅球によって情報が大脳皮質など、脳の他の部位に伝達される。そこで匂いの情報が分析され、嗅球へとフィードバックされる仕組みだ。視覚とは違い、嗅覚の体験は非常に主観的であり、それぞれの人の個人的な経験に左右されるそうだ。以前の研究結果とは異なる見解が生まれたことは、新しい発見につながるチャンスだとして、研究者の間では期待が高まっている。
    Quantifying how the brain smells

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)