けがや病気で心と体が弱ったときにお世話になる病院ですが、安心のはずの病院が、院内感染を広げる脅威の場所に様変わりすることもあります。病院には免疫力が弱った患者が集まり、人の出入りも激しいため、院内感染の原因となる黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌などの病原菌が蔓延しやすい条件がそろっています。そこで、新開発のスチールとプラスチックにコーティングする抗菌薬「NitroPep」を使用すれば、ドアノブや手術室、ベッドの手すりなどに付着した細菌を45分足らずで死滅させ、感染を防止します。病院や保育園、高齢者施設などで、守られるべき人たちを細菌からしっかりと守る、頼もしいガードマンです。


以下では、2019年8月26~30日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・院内感染を引き起こす細菌を45分でノックアウト
  •  英バーミンガム大学の研究者が、スチール(鋼)とプラスチックの表面をコーティングする抗菌薬を開発した。この抗菌薬を使用すれば、多くの院内感染を引き起こす細菌を即座に死滅させることができる。院内感染と闘うこの新たな抗菌薬は「NitroPep」と呼ばれ、同名のNitroPep社によって商用化される予定だ。効能があるのは、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、エントロコッカス属の球菌、緑膿菌、大腸菌の5つで、どれも院内感染が原因で広がることが多い病原菌だ。

     同大学は、英国の防衛医学センターと英国海軍と共同で、NitroPepを、英国海軍補助艦隊の船のドアノブ、手術室、トイレなどのスチール面に塗布するユニークな実験を行った。船は11カ月間の航海の間、通常通りに清掃を行い、NitroPepを塗布したエリアと、塗布していないエリアを1週間ごとに交代させながら効果を比較した。その結果、上述の5つの細菌を45分という短い時間で死滅させることが確認された。現在商用化されている製品では、細菌を死滅するのに24時間かかるところが、大幅に短縮される。

     感染症を防ぐための殺菌消毒は、病院の教育プログラム等を通して改善されてきてはいるものの、限界があり、院内感染をなくすまでには至っていない。今後、多くの人が使用する共用エリアに抗菌薬を塗布することで、感染をゼロにすることができるかもしれない。NitroPepはコストも安く、国際的な課題である細菌感染を防ぐ次世代のツールとして注目されている。スチールだけでなく、プラスチックにも使用でき、今後、セラミック、ゴム、シリコンにも適用する研究が進められている。同社がターゲットとしているのは、空港、駅のドアや手すり、飛行機内のトレー・テーブル、豪華客船、病院のベッドや医療設備、空調や浄水システムなどと幅広い。
    Research Conducted by the University of Birmingham Finds New Antimicrobial Coating Could be Key in Fight Against Hospital-Acquired Infections

  • ・ペットの病気予防にDNA検査が当たり前の時代到来
  •  最近の飼い主は、ペットの健康管理に余念がない。ノミやダニ、フィラリア症(犬糸状虫症)の予防や、疼痛、糖尿病、がんなどの疾患を防ぐために、最新のペット向けヘルスケア商品に関する情報をネットから入手し、対策を講じている。米国のペット関連市場(動物病院、店舗販売、オンライン販売を含む)は2019年には9億ドルに拡大し、過去5年の年平均成長率は8%に上る。

     ここで、注目のアイテムを紹介しよう。「Tailio」は、猫のトイレの下に敷くスマート計測器。猫の体重、排せつ物の量・頻度、排せつ行動のデータを収集し、クラウドで分析して愛猫のプロファイルを作成してくれる。飼い主は、スマホのアプリで常時データをチェックできる。「PrettyLitter」は、猫が病気にかかったときに、色で知らせてくれるトイレの砂。定期配送方式の便利グッズだ。「Petnostics」は、自宅で使える世界初のペット用尿検査キットで、獣医が使用するものと同じ診断技術を用いて診断できる。飼い主は、アプリで糖尿病、尿路結石などを早期発見でき、慢性の病気のモニタリングもできる。病気の早期発見は、飼い主にとって何よりも重要だ。

     中でも、今もっともペット業界で話題となっているのが、DNA(デオキシリボ核酸)検査である。「Mars」や「DNA My Dog」などの検査キットでペットのデータを採取し、血統証明書と合わせて分析に出すと、遺伝的に受け継いだリスク要因を教えてくれる。ペット用DNA検査の人気は高まるばかりで、今年7月にはAmerican Kennel ClubがDNA検査に関するガイドラインと使用法をリリースした。アンケートでは、ペットの飼い主の29%がDNA検査を受けたいと回答している。DNA検査でペットのかかりやすい病気が分かれば、食事や生活スタイル、予防薬などで効果の高い予防策を取り入れやすくなる。ペットのDNA検査が広まることで、人間のDNA検査への意識も変わるかもしれない。
    Growth in Pet Health Monitoring and DNA Testing by Dog and Cat Owners, reports Packaged Facts

  • ・ずっと続く安心のケアモデルで、けがの補償をアシスト
  •  事故でけがをした人の補償をサポートする法律事務所向けに、いまだかつてない新たなプログラムが提供される。カナダのllumina社が提供するのは、Continuity of Care Model(ずっと続く、安心のケアモデル)に基づいた、法律事務所とクライアントをつなぐコンシェルジュ・サービス。事故の被害に遭ったクライアントが、適した治療を受けているかを確認する支援をしてくれる。本プログラムが法律事務所に提供するサポートは、以下の通り。(1)クライアントのけがの状態や変遷を正確に、時間の経過を追って把握し、正当な治療が受けているかを確認する、(2)案件の初期、中間、最終レビューを行い、段階を追って正しく評価する、(3)レビュー結果を弁護士に知らせ、クライアントのけがの状態や労働能力を伝える、(4)クライアントのけがの状況に合わせ、診断評価や個別健康診断の実施を適時推奨する、(5)客観的証拠の管理、(6) クライアントの医療データを集め、法律事務所の時間、コスト、人件費を削減する──。

     このプログラムは、クライアント側にはAI(人工知能)による遠隔医療相談を提供し、医師とのコミュニケーションを支援しながら効率よく医療データを管理してくれる。バイクの衝突やスリップ、転落事故などが原因で、後遺症が生じてしまったクライアントにとって並行して訴訟を行う過程は、身体的なだけでなく、感情的、金銭的に苦しい経験となる。本プログラムを活用すれば、法律事務所での一連の手続きを簡略化し、クライアントの負担も減らすことができる。医療のスペシャリストではない弁護士と、人生の危機に陥ったクライアントにとって有能な右腕となることが期待される。
    Ilumina Launches the Continuity of Care Concierge Program for Personal Injury Law Firms

  • ・成長率83.9%と驚異的な成長を見せる香港バイオテクノロジー企業
  •  香港のViva Biotech Holdings社の成長が目覚ましい。同社は、医薬品初期開発のグローバルなプラットフォームを提供し、まさに時流をつかんだ。2019年度前半期のグループの決算報告によると、昨年の同時期と比べ総収入は83.9%伸び、総額約1億4230万人民元(約21億円)に上った。うち、純利益は47.4%伸び、約9860万人民元(約14.6億円)に達した。同社は有望なバイオテクノロジーのスタートアップ企業の育成をミッションとして掲げ、従来のキャッシュ・フォー・サービスモデル(CFS)と、自社特有のエクイティ・フォー・サービスモデル(EFS)を組み合わせることで、拡張可能なビジネスモデルを展開してきた。この二つのビジネスアプローチにより、バイオテクのスタートアップ企業を効果的に育成し、CFSの顧客から安定的に資金収入を得ながら、知的財産の潜在的な価値を伸ばしていく。

     同社は、生体高分子(糖質、タンパク質、核酸など)、遺伝子、細胞療法の分野に進出し、プロジェクトと資金調達をそれぞれ拡大してきた。2019年前半期だけで、新たに10社のスタートアップ企業を育成計画に加え、すでに抱えている2社は投資額を増額させた。EFSのビジネスだけで見ると、1年で127.8%の成長を遂げている。テクノロジーの面では、今後創薬と生体高分子の生物学的検出の分野を特に強化する予定。上海の新技術産業開発区にある研究所をさらに5km2拡大し、薬剤開発アウトソーシングビジネスの波に乗る。

     Viva Biotech Holdingsは、スタートアップ企業のR&D(研究開発)と育成に、豊富な顧客の資金を投入する、「サービス+資本」という多次元のビジネスポートフォリオを強みとして掲げ、グローバルなバイオ医薬品のイノベーターたちと連携できるオープン・プラットフォームを形成。科学者、バイオテクノロジースタートアップ企業、大手医薬品会社、研究所、投資機関、学術界、医療界やその他の業界と手広く手を組み、バイオテクノロジーのイノベーションを目指す。
    Viva Biotech Announces 2019 Interim Results