生命の設計図である「ゲノム」。ゲノムとは、ヒト染色体の中にあるDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれるひも状の物質で、A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)の4種類の塩基(文字)からなります。ヒトの46本の染色体には、なんと60億の塩基対があるそうです。この気が遠くなるほど複雑な塩基配列を解読する最新の装置が、「次世代型シーケンサー」。2000年代初め、ヒトゲノムの解読には数年を要していましたが、次世代型シーケンサーを使うとわずか1週間足らずで解読できるとのことです。一人ひとりの細胞をDNAレベルで分析し、個人の特性に合った薬のみを投与して、効果的に治療を行うプレシジョンメディシン(精密医療)の実現を陰で支える、スーパー頭脳です。


以下では、2019年9月2~6日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・モニタリングや健診は次世代シーケンサーを使う方向へシフト
  •  ハイテク分野の市場調査を手掛けるBISリサーチ社は、次世代シーケンサー(Next-generation Sequencing)を使った生体モニタリングと健康診断の今後10年の市場予測を発表した。2018年の市場規模は33.5億ドル(約3580億円)であったが、2028年には180.3億ドル(約1兆9300億円)と約5.4倍に拡大する見込み。年平均成長率は18.08%であり、製造業界の拡大との相乗効果が期待される。最も勢いがあるのは米国であり、2018年の世界の市場の約41.8%を占める。欧州は27.8%であり、アジア太平洋地域でも、2028年までに急成長すると予測される。

     ヒトゲノム計画(Human Genome Project)が2003年に完了し、新たな「次世代シーケンサー」と呼ばれる技術が出てきた。この新技術により、特定の病気に関係する遺伝子変異の研究がさらに拡張し、分子標的治療を個別に開発できるようになり、遺伝子研究のパラダイムシフトが起きようとしている。

     次世代シーケンサーが最も大きな変革を呼び起こしたのは、プレシジョンメディシン(精密医療)の分野だ。プレシジョンメディシンは、患者の遺伝子情報を収集・解析し、病気の特徴を患者特有のものとして調べ、個々の遺伝子プロファイルに基づく標的治療を行う方法だ。そこではバイオマーカー(特定の病状や生命体の状態の指標)に基づく診断が行われ、医療業界の慣行が大きく変わる。従来のトライアンドエラー方式の薬物治療の不透明性をなくし、無駄なコストを削減できる。DNAの塩基配列を決定する「DNAシークエンシング」は、遺伝情報を解析するための基本手段であり、今後バイオマーカーと遺伝学研究発展の重要なカギを握るといわれる。次世代シーケンサーを使ったモニタリングと健康診断の市場動向についてもっと詳しく知りたい方は、BISリサーチ社の報告書を読むと、新製品、パートナーシップ、ビジネス動向、M&Aなどについて知ることができる。
    Global NGS-Based Monitoring and Diagnostic Test Market to Reach $18.03 Billion by 2028

  • ・中国国際フェアで締結された、外資100%の20億円巨大プロジェクト
  •  在南中国米国商工会議所(AmCham South China)が、投資・貿易に関する中国国際フェア(China International Fair for Investment and Trade)に参加するため、中国福建省アモイ市を訪問した。この3日間の国際フェアに参加した企業は、Apple、Deloitte、Honeywell、Johnson & Johnson、KPMG、Nikeなど。医療とヘルスケアに関するラウンドテーブルも開催され、福建省とアモイ市の政府機関と、ヘルスケアの多国籍企業の間で建設的な対話がなされ、ビジネス連携の機会を探った。この国際フェアは、国境を超える投資の窓口といわれ、世界的に大きな影響力を持つイベントだ。

     本フェアで締結されたプロジェクトの中には、福建省新羅区に9つの蒸留酒製造所の工場を建設する1億5000万人民元(約22.5億円)の大プロジェクトも含まれる。この工場が実現すれば、中国において初めて100%外資の蒸留酒製造所が誕生し、ウォッカ、ジン、ラム、リキュールほか、長年米国で親しまれている各種のアメリカン・ウィスキーの味が楽しめるようになる。

     在南中国米国商工会議所が本フェアに参加するのは17回目。会長であるハーレー・セイデン氏は、「米国政府と中国政府間の取引が友好的で相互的に、また持続的で建設的に進み、ゴールを最優先に置く取り決めが行われるために今後もサポートを続ける」と述べ、両政府に対して貿易戦争を終わらせ、全ての関係者に悪影響を与える事態を避けるよう早急な対応を求めた。

     在南中国米国商工会議所は、2018年には世界中から延べ1万人近くの経営者、政府関係者、ジャーナリストを招き、カンファレンス、セミナー、委員会などの会合を開催してきた。米国の蒸留酒製造所の大規模プロジェクトを契機に、ヘルスケアを含む各分野において今後、中国の投資と貿易の窓口がさらに世界に向けて開かれるだろうか。
    Multi-Hundred-Million-Yuan U.S.-International Joint Venture Projects Land in Fujian by the Help of AmCham South China

  • ・骨を固定、治す、感染を防ぐの3拍子そろった整形外科用インプラント
  •  シンガポールSyntellix Asia社と、ドイツSyntellix AG社、中国Beijing Chunlizhengda Medical Instruments社がグローバルな提携を発表した。これから無限の可能性が広がる中国医療テックマーケットに参入し、Syntellixの得意分野であるマグネシウムを使ったインプラント技術で快進撃を始める。Beijing Chunlizhengda Medical Instrumentsは整形外科用インプラントサプライヤーの大手である。3社はマーケティング・セールスだけでなく、中国国内展開、R&D(研究開発)、学術的な研究、トレーニングなどでも連携し、中国とドイツ間の技術交換によって、マグネシウム合金を駆使した革新的なインプラントを推進する。15億人の巨大市場を持つ中国は、これから世界一の医療テックマーケットに成長することが確実視されている。

     3社の提携上の最低購入量は今後5年間で1億ユーロ(約117億円)に設定されており、この強気な額を見るだけでも、中国全土における3社の優位性が分かる。Syntellix社のマグネシウム・インプラント「MAGNEZIX Pins」は今年5月にドイツ技術博物館で行われた、German Design Council主催のドイツ・イノベーション・アワード「医療テックB2B部門」で金賞を受賞している。「MAGNEZIX Pins」は、金属の安定性、化学分解性、生体適合性の面で、他では類がないほど高い効果がある。Syntellixの骨ねじは、従来のチタン製のインプラントよりも医学的に優れているといわれており、同社が開発したマグネシウム合金は著名な医師の間で、「インプラントのゴールド・スタンダード」と呼ばれている。

     驚いたことに、このマグネシウム合金は、骨の中で完全に分解される。従来のインプラントは、取り除くための2回目の手術が必要であった。しかし、MAGNEZIXのインプラントは、分解されて骨の組織の一部となり、その上治療を促す作用もあるという。また、感染を抑制する効果もあり、インプラント界に飛躍的な進化をもたらした。恐らく、今後チタン、鋼、ポリマーはインプラントに使用されなくなるだろうとまでいわれており、マグネシウム合金のインプラント革命がいよいよ始まる。
    Syntellix Asia and Chunli Agree Far-reaching Co-operation to Introduce and Market Innovative "Quantum Leap in Implantology" MAGNEZIX® Medtech Devices in China

  • ・インドの若いママたちのエンパワーメントツール、搾乳器の市場予測
  •  インドにおける、乳児を抱える女性のための搾乳器の2025年までの市場予測が発表された。搾乳器市場は、メディカルデバイス分野の中でこれから急成長が見込まれる分野だ。現代の働き者の若いママたちにとって、搾乳器は必需品であり、需要は高い。搾乳器を使うと、母乳を仕事の合間に集め、成分効果を保ったまま保管し、哺乳瓶で必要な時に赤ちゃんに与えることができる。インドでは、80%の女性が搾乳器を使いたいと答えており、特に30歳以上の女性の間で人気が高い。

     インドでは、文化的に搾乳器に抵抗があった。しかし、最近は医師や婦人科医が搾乳器で刺激を与えることで母乳が出やすくなる効果があるとし、医学的な見地から、利用を推奨するようになってきた。女性の間ではホルモンの異常、陥没乳頭、乳腺の未発達などが増加しており、搾乳器をうまく利用することで母乳育児が楽になるケースも多い。

     搾乳器には手動、電気、電池式、携帯型など様々なタイプがあり、軽量で、搾乳の強さを調節できるため、利用者にとっても使いやすい。国内では、医療と教育団体が、赤ちゃんにとって大切な母乳の栄養成分をテーマに取り上げ、搾乳器の利用を奨励するセミナーやカンファレンス、様々なプログラムを実施している。人口が増え続けるインドにおいて、女性の育児スタイルの選択肢が増え、子育てをしながら社会で活躍するためのエンパワーメントツールとして、搾乳器が活躍しそうだ。
    India Breast Pump Market Opportunity, Price and Sales Report 2025 Featuring Medela, Philips Avent, Haakaa, Spectra, Lasinoh, R for Rabbit, Trumom, Freemie