KRASタンパク質を標的とする肺がん治療薬に期待

【要素技術】

  • ・骨粗鬆症に不老長寿薬でお馴染みの「高麗人参」が効く
  •  高麗人参は、ウコギ科の多年草で、古来より不老長寿の神薬、万能薬「Panax Ginseng」(ギリシャ語で万能薬はpanax)といわれ、王様へ献上するほど貴重で効果なものとされてきた。滋養強壮のほか、精神安定、抗炎症、免疫力向上などの働きがあることは既に知られているが、今回朝鮮人参協会の報告によると、骨の健康にも高麗人参の効用があることが分かった。

     Rural Development Administration、韓国バイオサイエンス・バイオテクノロジー研究所と全北大学病院は、3年間かけて行われてきた研究成果を発表した。本研究は今後2年間続く予定だ。40歳以上の骨粗鬆症女性90人を3つのグループに分け、1グループにはプラセボ(偽薬)を投与し、残りの2グループには、1日3g(1回1gを3回)の高麗人参粉末を投与した。結果、骨の非コラーゲン性タンパク質として25%を占めるオステオカルシンは、高麗人参を投与されたグループの方が11.6%高くなり、カルシウムレベルは3倍上昇。高麗人参の鎮痛作用と骨粗鬆症に伴う硬直の緩和も実証された。

     高麗人参にのみ含まれるジンセノサイドという有用成分には、タンパク質の合成を促進する働きなどもあることが科学的に解明されている。ジンセノサイドは、1本の高麗人参からわずか3%しか採取できない細長い「ひげ根」の部分に最も豊富に含まれているそうだ。加齢に伴う骨粗鬆症。諦める前に、高麗人参の効果を試してみる価値がありそうだ。
    The Korea Ginseng Association announces evidence for Korean Ginseng's effects on improving bone health

  • ・肺がんの経口治療に用いる画期的医薬品AMG510、治験進む
  •  IALSC2019国際肺がんカンファレンスにて、米Amgen社が、KRAS変異の一つ、G12C(12番目のグリシンがシステインに変わった突然変異)をターゲットとする治験薬「AMG510」について、新たなデータを発表した。AMG510は、KRASタンパク質を標的とする、経口治療に用いるfirst-in-class(画期的医薬品)である。治療が困難とされていたKRASを伴う非小細胞肺がん(NSCLC)患者に投与する第1相試験は現在も続いており、今回、最新データが発表された。

     AMG510を毎日960㎎投与した患者13人のうち7人(54%)が治療後最初の画像スキャンで部分奏効を示し、残る6人(46%)が安定を示した。治験に参加したのは34人であり、用量制限毒性(薬の増量がこれ以上できない理由となる有害事象)は1人も発生しなかった。グレード1と2の有害事象を発症したのは9人、貧血や下痢といったグレード3の有害事象を発症したのは3人、グレード4以上はいなかった。

     がんを引き起こす変異は、まだ治療法が確立されていないものが多く、標的型治療の開発が求められている。がん細胞の遺伝子変異の中では、RAS遺伝子の変異が最も多く、30年以上も研究が続けられている。KRASは、タンパク質の小分子結合ポケットが不足しているため、今までは「薬剤投与が不可能」といわれてきたが、Amgen社はその不可能への挑戦を続けている。毎年米国では3万人の患者がNSCLSを発症している。次の試験も開始されており、従来の治療では効果が得られないNSCLC患者にとって、AMG510の承認に期待が高まる。
    Amgen Announces New Clinical Data Evaluating Novel Investigational KRAS(G12C) Inhibitor In Larger Patient Group At WCLC 2019

  • ・既存薬「Ofev」、難病に伴う肺疾患の進行を抑制する効果
  •  米食品医薬品局(FDA)は、全身硬化症に伴う間質性肺疾患を治療する世界初の薬剤として、「Ofev」を承認した。このOfevは既に、米国をはじめ70カ国以上で、特発性肺繊維症を患う患者への投与を認められており、肺機能低下を抑える効果が実証されている。今回、全身硬化症に伴う間質性肺疾患の患者への投与が承認されたのは、第3相試験で高い効果が見られた結果だ。試験は、32カ国の576人の患者に対して52週間行われ、患者の努力肺活量を測定した。結果、Ofevを投与した患者は、偽薬を投与した患者に比べ、肺機能の低下を44%抑えることができた。また、Ofevは子供への安全性も確認されている。

     全身硬化症は珍しい自己免疫疾患であり、皮膚だけでなく、内臓などにも硬化性病変が見られる。米国では10万人、世界では250万人程が発症し、うち4人に1人は3年以内に肺機能が低下してしまう怖い病気だ。新たな治療薬が承認されることで患者のコミュニティーに希望がもたらされる。

     米大手製薬企業のBoehringer Ingelheim社は、Ofevを処方された患者向けに、OPEN DOORSという患者サポートプログラムを開始した。看護、通院などの社会的サポート、金融支援、教育など、病気に関する様々な支援サービスを提供することで、全身硬化症という難病と闘う患者の治療を多角的に支援する。
    FDA approves Ofev® as the first and only therapy to slow the rate of decline in pulmonary function in patients with systemic sclerosis-associated ILD

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)