厚生労働省の国民生活基礎調査(2016年)によると、腰痛と肩凝りが、男女とも自覚症状の上位1、2位を占めています。米国では、およそ1億人の成人が膝の慢性疼痛に苦しんでおり、その数は、心臓病、糖尿病、がん患者を合わせた人数よりも多いそうです。腰痛と肩凝り、関節痛は、いまや世界中の人々を苦しめる文明病。誰しも、なるべく早く腰痛や関節痛、けがなどの痛みから解放されたいと願っています。つらい痛みを緩和するために、鎮痛薬の処方や手術が一般的ですが、麻薬性鎮痛薬オピオイドによる中毒、手術のリスクもあるため、多くの人が対処を諦め、痛みとなんとかうまく付き合いながら過ごす道を選んでしまいがちです。そこへイスラエルの企業が、副作用やリスクの少ない、患部に高周波や赤外線、低反応レベルレーザーを当てるだけで痛みを消してくれる新しいテクノロジーを開発しました。


以下では、2019年9月23~27日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・腰痛やスポーツのけがの痛みを治す携帯デバイス販売開始
  •  イスラエルSolio社が開発した、痛みを止める革新的デバイス「Solio Alfa Plus」が米食品医薬品局(FDA)に承認され、米国での販売を開始する。Solio Alfa Plusは、高周波、赤外線、 低反応レベルレーザー治療(LLLT)の3つの技術を組み合わせた、家庭で利用できる痛み止めデバイスとして、初めて米国で承認された。この白くて、マウスのような形をした、手にすっぽりと収まる可愛らしいデバイスは既に3000個以上が売れており、慢性疼痛、スポーツによるけが、外傷性疾患、月経痛などの様々な痛みを緩和するとして、口コミが広がっている。

     Solio Alfa Plusは開発まで3年間、イスラエルのHillel Yaffe Medical Centerで研究が行われた。100人の腰痛患者が参加し、90%の患者に痛み止めの効果が表れた。Solio Alfa Plusは、家庭でも使用できるよう、高周波の安全性を重視し、開発された。一般的に痛み止め治療に行われる、TENS(経皮的電気神経刺激)や低反応レベルレーザーによる治療法には一時的な効果しかないため、開発チームは臨床研究にペインマネジメントの専門家を呼び寄せ、Solio Alfa Plusの効果の持続性を高めることに専念した。

    痛みを止める革新的デバイス「Solio Alfa Plus」(写真:Solio社)

     本デバイスを直接患部に当てると、ディープヒーティング技術によって4種のRFダイオードが肌を通過して患部に届く仕組み。まず、2極の高周波が筋肉や関節など患部の奥まで浸透し、血行を良くする。デュアル光エネルギー、赤外線、赤色スペクトルにより、肌の痛みやこわばりを緩和する。そして、低反応レベルレーザーで筋肉の痙攣を治療する。身体に備わる治癒メカニズムに刺激を与え、組織の再生を促進しながら自然治癒効果を高めてくれる、手軽な痛み止めとして、一家に一台は欲しいアイテムとなりそうだ。
    Solio Alfa Plus: First FDA-Cleared Radio Frequency Pain Relief Device Debuts in American Market

  • ・エンドオブライフケアに新たな試み、VRセラピー
  •  人生の最終段階の支援をするエンドオブライフケア。診断名や健康状態、年齢にかかわらず、差し迫った死、あるいはいつかは来る死について考える人が、生が終わる時まで最善の生を生きることができるように支援するケアを指す。高齢化社会が到来し、慢性疾患患者の増大に伴い、老いや病を抱えながら地域社会で生活し続ける人の暮らし方、家族との関係性や生や死に関する価値観、社会規範や文化とも関連した新たな生き方の探求でもある。

     そんな、新たな医療提供の在り方を創造する米VITAS Healthcare社が、サンフランシスコ市に、サンマテオ市とミルピタス市に続き、3つ目となる新たなホスピスを設立した。サンフランシスコでは人口の20%が60歳以上であり、2000年比でその数は18%増加、エンドオブライフケアの需要が増大している。同社は、患者と家族に対し24時間の緊急対応サービスなど、高品質のケアでニーズに応える。

     その一環として、VR(仮想現実)セラピーが開始された。360度の視界を覆うVRゴーグルを装着し、映像や音響効果により、限りなく実体験に近い体験が得られる技術で、終末期の困難を心地よく過ごすアシストをするセラピーである。VRを使うと、患者は、身体的には不可能なことを、まるで現実かのように体感することができる。例えば、不安を抱える患者を、森林浴へ連れ出したり、一度は見てみたい世界遺産のマチュピチュへ旅行し、精神的な充足感を感じることも可能だ。

     それ以外にも、VITAS社のケアチームが患者の家や施設を訪問してスピリチュアルケアの提供、ホスピスの医療機器の家庭への配送、マッサージセラピー、音楽療法、有志によるペットセラピーなど、人生の終末を豊かに過ごすケアの充実を目指す。
    VITAS® Healthcare Expands Hospice and Palliative Care Services in San Francisco, Introduces Virtual Reality Therapy

  • ・前立腺がん診断PACSにIBM WatsonのAIを搭載
  •  仏Guerbet社と米IBM Watson Health社が、2回目となる共同開発プロジェクトを発表した。Guerbet社は、造影剤(超音波の発射強度を増大させる物質)や疾患の診断と治療に使用する医療イメージングの世界的スペシャリストである。この度IBM社との提携によりWatsonの人工知能(AI)技術を統合し、臨床医による前立腺がんの診断をサポートする。1回目の共同開発プロジェクトでは、肝臓がん患者の診断とモニタリングに用いるAIプログラムを実施し、2回目にも期待が高まる。

     本プログラムでは、2社はPACS(医療画像保管伝送システム)にAIツールを搭載し、病変を発見、分類、分析、長期的モニタリングを行うことで、臨床医による前立腺がんの早期発見と詳細な診断をサポートする。前立腺がんは、男性のがんの中で2番目に罹患率が高く、がん患者全体の13.5%を占める。2017年のLancet誌に掲載された臨床研究によると、新たなマルチパラメトリックMRIによる前立腺がん検査が導入されることによって、不要な生検を27%減らし、今まで見過ごされたがんの発見が18%ほど増えると予測されている。

     IBM社のチーフ・メディカル・オフィサーのデビッド・グルエン氏は、「前立腺がん診断の課題は、早急な治療が必要ながんと経過観察を要するがんを区別し、不要な生検を減らすことだ。患者に正確な診断と治療を提供する必要があり、AI技術が大きく貢献する可能性がある」と言う。一般的にAIというと「Artificial Intelligence(人工知能)」を意味するが、IBMではAIを「Augmented intelligence(拡張知能)」と捉え、「人間の知識を拡張するコンピューターの仕組み」、つまり、「人間を助ける技術」と定義している。今回開発されるAIツールが、放射線科医や腫瘍内科医の意思決定を補助することで、より確度の高いがん診断が可能になる。
    Guerbet and IBM Watson Health announce a second co-development project as part of their strategic partnership for leveraging artificial intelligence in medical imaging