細菌が血液中に侵入し、血液凝固や臓器障害を来して生命を脅かす敗血症。診断したら速やかに適切な抗菌薬を投与することが求められる。適切な抗菌薬投与が1時間遅れると死亡率は7.6%上昇するという。それ故、いかに早期に原因菌を同定し治療効果の高い抗菌薬を選択できるかが重要なポイントになる。

 富山大学と日立製作所は10月3日、敗血症患者に有効な抗菌薬を迅速に選択できる新たな技術を発表した。細胞が活動するためのエネルギー分子であるATP(アデノシン三リン酸)に着目し、敗血症患者の血液培養陽性検体から原因菌のATPのみを検出する前処理技術と高速なATP発光計測技術を開発。従来は採血から3日以上かかった有効な抗菌薬の選択を、1日程度に迅速化できることを確認した。適切な抗菌薬の投与を早期に開始できるようになり、敗血症患者の救命率の向上や、複数の抗菌薬の過剰投与による薬剤耐性菌の蔓延防止が期待できるという。

 従来の臨床細菌の検査工程では、採血から血液培養(8~24時間)、陽性検体の分離培養(12~24時間)、原因菌種の同定と抗菌薬剤の感受性試験(18~24時間)という過程を経て有効な抗菌薬を選択する(図1上)。薬剤の有効性を判定する薬剤感受性試験では、原因菌に対して抗菌薬ごとに濃度を変えて分注し、増殖を阻止できたかどうかを濁度によって目視で判定する。そのため、目視判定できるよう細菌を培養増殖させたうえ、抗菌薬による培養変化を見極める必要があり、それぞれ一定の時間を要した。

図1●開発した検査法のワークフローと従来のワークフローの比較(出所:日立製作所、図2とも)

 今回開発した検査法では、分離培養工程を省力できる前処理技術と薬剤感受性試験を数時間に短縮できるATP発光計測を実現する装置によって検査工程全体を短縮し、採血から1日程度で適切な抗菌薬の選択を可能にした(図1下)。「ATPによる感受性試験は以前から行われていたが、今回は血液培養陽性検体から直接、ATP発光計測で感受性試験を開始できるようにしたことがブレークスルー」(日立製作所基礎研究センタ 研究員の内保裕一氏)という。