急性心筋梗塞や不安定狭心症といった心臓発作が起きる兆候にいち早く気づき、アラートを発信してくれる頼もしいデバイスが米国で開発されました。ペースメーカーのように胸部に植え込み、心臓をモニタリングするインプラント装置、その名も「Guardian」。指でつまめる、目薬のようなコロンとした可愛らしいフォルムで24時間患者の心に寄り添う、この命の番人Guardianが、2021年にもオーストラリアと日本を含むアジア諸国で販売を開始します。また、米Injectsense社はセンサー技術を活用し、眼圧をモニタリングできる、世界初のインプラントモニタリングセンサーを完成させました。米粒の大きさにも満たない超小型のその機器は、医師による注射器を使った、5分ほどのインプラント術で安全に患者の目に移植され、長期にわたる正確な眼圧測定で、失明につながる緑内障の進行に関わる兆候を見つけてくれるといいます。


以下では、2019年10月7~11日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・世界初の心臓発作アラートデバイスFDA承認、2021年アジアで販売開始
  •  米Angel Medical Systems社が、心疾患モニタリング用のインプラント装置を開発し、米食品医薬品局(FDA)の承認を世界で初めて取得した。この、心疾患治療のゲームチェンジャーとも呼ばれるインプラント装置「Guardian」の専売権を獲得したのはオーストラリアHydrix社。これから各種の認可を取得後、2021年度にシンガポールや日本を含む主要アジア諸国での販売を開始する。

     Guardianは、急性心筋梗塞や不安定狭心症などの急性冠症候群(ACS)患者に対し、心臓発作の発生リスクが高まると、アラートを発信して警告する。患者は、アラートを受けたら、そのまますぐに自分の足で医療施設へ向かうことができる。ACSは、処置が早ければ早いほど、回復の可能性が高まる。Guardianは、ACSの発作を経験したことのある、高リスクの患者向けに作られた製品であり、24時間AIによって心臓発作の兆候をモニタリングし続ける。発作が起きそうになると、体の中で振動し、さらにワイヤレスのポケットベルのようなデバイスに同期し、音と光で異常を知らせる仕組みだ。

     これまで、ACS患者は胸痛など自分の体の感覚だけを頼りに、緊急受診すべきかを判断してきた。しかし、心臓発作のうち約半数は無症状か、もしくは気づかない程度の自覚症状しか起きない。また、胸の痛みを訴える患者のうち80%はACSの発作ではないと診断されているため、不要な診察も多い。米国の調査結果によると、発作が起きてから患者が病院に到着するまでの経過時間は平均12時間である。Guardianを利用すれば、発作から病院到着までの時間を2時間以内に短縮できることが実証されている。この新たな心疾患モニタリング用インプラント装置が、2021年から多くの人に使われるようになれば、発作の重症度を下げ、患者のQOL(生活の質)の向上、心臓へのダメージ軽減や入院期間の短縮により、ヘルスケアコストの削減にもつながることが期待される。
    World-first heart attack alerting technology to be launched in Australia

  • ・目に超小型インプラントセンサー、眼圧モニタリングで緑内障進行防ぐ
  •  センサー技術を活用するデジタルヘルスカンパニーの米Injectsense社が、in-vivo study(動物の生体研究)を終え、長期的に眼圧のデータを収集する、世界初のインプラントモニタリングセンサーを完成させた。「IOP-Connect System」と呼ばれる、体のデータをクラウドと連携するシステムにより、医師はいつでも緑内障の治療効果を評価できる。本システムは、患者の眼圧の状態を可視化するという、いまだかつてない新たな方法で長期的なモニタリングを行い、緑内障の進行に関わる兆候に気づくことを可能にしてくれる。

     目の中に移植するワイヤレス・シリコンセンサーモジュールは、米粒よりも小さく、注射器を使って移植可能な上、自己固定機能を備える。医師の手により、5分でインプラント術が完了する手軽さだ。研究の一環として、米国の研究所でこのIOP-Connect Systemを用いて1週間実験を行ったところ、インプラント機器は安全に患者の目に移植され、正確に眼圧測定結果を収集することに成功した。また、インプラントデバイスに起因する副作用は報告されていない。

     ドレクセル大学のマイロン・ヤノフ博士は、「緑内障の課題は、眼圧の数値変動を可視化できない点である。Injectsense社が開発した製品は、緑内障治療の方法とタイミングを大きく変える可能性がある。医師は、臨床現場で実用性の高い情報を得ることができる上、今後緑内障のメカニズムを解明する基礎研究分野の発展にもつながる」と評価する。

     現在、IOP-Connect Systemは臨床研究にのみ利用可能で、一般販売は開始されていない。センサー活用したデジタルヘルスプラットフォームは応用範囲が広く、今後頭蓋内や泌尿器、心血管における血圧測定、神経外科などの分野において診断や治療に生かせるのではないかと期待されている。
    Injectsense Demonstrates Animal-to-Cloud IOP Sensing Pathway for Glaucoma

  • ・糖尿病プレシジョンメディシンで腎・心血管疾患の合併症を早期予防
  •  レバノンのPrecision Diabetes社は、糖尿病にプレシジョンメディシン(精密医療)を取り入れ、バイオマーカーやアルゴリズムを使った、早期糖尿病合併症診断法を開発し、業界に革新を起こしている。今回、同社は糖尿病の合併症である腎症や心血管疾患(CVD)を発症するリスクを精密に予測する、2つの研究結果を発表した。1つは、「プレシジョンDKD」と呼ばれる、2型糖尿病患者の腎機能低下を予測する血液検査の研究であり、8年間にわたり、169人の被験者が参加した。糖尿病性腎臓病(DKD)の診断において、メイラード反応後期生成物(AGE)や最終酸化生成物(OPs)のバイオマーカーを使って測定したところ、従来の検査メソッドよりも、各段に正確な予測ができた。

     もう一つは、「プレシジョンCVD」と呼ばれる、糖尿病患者の心血管疾患を予測する研究だ。これは、1型糖尿病患者のCVDを早期発見するために、AGEとOpsのバイオマーカーを用いるもので、30年間かけて459人の被験者に対して検査が行われた。結果として、高いレベルのメチオニンスルホキシドとAGEによって、心血管疾患の予測診断を改善することができた。

     この検査方法を採用することで、糖尿病患者は、合併症の症状が表れる何年も前から、自分の体が腎症や心血管疾患を発症するリスクを、個人的なレベルで測定できる。予防治療を、早期に開始することができれば、治療効果を各段に高めることができる。Precision Diabetes社は、現在包括的な糖尿病検査製品のポートフォリオを構築中であり、糖尿病治療にパラダイムシフトを起こし、プレシジョンメディシンのリーダーとして、ますます存在感を発揮する。
    Precision Diabetes, LLC, Presents Data on Novel, Predictive Tests for Diabetes Complications at American Diabetes Association (ADA) Research Symposium: Advancing Precision Diabetes Medicine

  • ・運動や健康の情報をアプリで提供し、心を豊かにするスポーツジム
  •  プレミアム感があり低価格が売りの米国のスポーツジムBlinkFitnessが、この秋、新手法を打ち出す。バージョンアップしたBlinkアプリだ。アプリには、パーソナライズ化(個別化)した健康や運動に関する情報を1200以上のコンテンツから提供し、栄養バランスを考えたレシピや、瞑想法のガイダンスなどを含む。ジムのメンバーになると、アプリを使って音声フィットネスガイドを提供するAaptivやDaily Burnなど、パートナー企業のトレーニングコンテンツをストリーミングで自由にスマホから視聴できる。トレーニングセッションの予約も、手軽にオンラインでできる。

     BlinkFitnessはユニークな哲学の下、従来の「one-size-fits-all(画一的)」なジムのイメージを打ちこわし、一人ひとりの体形やライフスタイルに合わせ、ポジティブで多様性のあるアプローチを奨励している。スローガンは、「Mood above muscle(筋肉よりもムード)」であり、運動によって見た目を変えるだけでなく、気持ちを元気にすることに重きを置く。体重計の数値ではなく、運動後にどれだけ気分がリフレッシュされたかにこだわるジムなのだ。運動を終えると、より健康なものを食べたくなる、水分をたくさん取りたくなる、笑顔が増えるなどの効果を狙う。スタッフのモチベーションの高さも売りであり、いつでも元気で明るいエネルギーで対応し、メンバーと密なコミュニケーションを取っている。

     Blinkのメンバーは、親しみを込めて#MembersNotModels(モデルではなく、メンバー)と呼ばれている。メンバー間の交流を深めるソーシャルチャネルを用意し、アプリを活用しながら、運動を通し一人ひとりの心の充実感の向上を目指す。
    Blink Fitness empowers its members to work out anytime, anywhere with their enhanced mobile app