脳神経外科手術に世界初の仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を活用したミックス・リアリティー・プラットフォームが実現しました。手術器具や手術方法を従来通り使用しつつ、360度のVRモデルと、手術用顕微鏡から見たライブの光画像をシンクロさせることで、医師は、手術中に実際は腫瘍の後ろに隠れて見えない重要な血管まで見えるようになり、詳細な手術シミュレーションを行うことができるといいます。2019年10月19日から23日までサンフランシスコ市で行われた米国脳神経外科学会(CNS)では、この「SynchronizAR」プラットフォームが発表されました。実際に360度の仮想現実の世界で、患者の体の内側を立体的に視覚化する体験を得ることによって、従来不可能と思われた脳外科手術も可能になるかもしれません。


以下では、2019年10月21~25日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・360度の仮想現実と拡張現実を活用した手術シミュレーションを実現
  •  仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を活用したヘルスケアサービスのマーケットリーダーである米Surgical Theater社は、世界で初めて、最新の戦闘機飛行シミュレーション技術を、人体の超音波スキャンに取り入れた。CTやMRI、DTI(拡散テンソル画像)、BOLD(血中酸素濃度依存型)効果などの先進的な自動定型処理を組み合わせ、360度の仮想現実の世界を作りだし、患者の体を解剖学的に、病理学的に視覚化できる。このソリューションを利用すると、脳神経外科医は患者の脳の白質と腫瘍の間に入って歩き回りながら点検に没頭でき、正確な診断が可能となる。医師が頭の向きを変えると、それに合わせて体の中を様々な画像角度から確かめることができ、開頭術、手術パス、方向や経路など全体的な手術戦略を、いまだかつてないほどクリアに練ることができる。

     2019年10月19日から23日までサンフランシスコ市で開催される米国脳神経外科学会(CNS)では、この「SynchronizAR」プラットフォームが展示され、実際にシミュレーションを体験できる。本ソリューションは、患者個別に作成されたプレシジョン(精密)VR画像を、手術用顕微鏡から見えるライブの光画像に組み込むという仕組み。これを使うと、医師は、実際は奥に隠れている血管構造や脳の白質の病態を可視化でき、手術を行う手元の景色とシンクロさせ、あらゆる情報を活用できる。

     展示ブースでは、従来の2次元のDICOM画像を使って、従来通りに手術の計画を立てた後で、今度は「Precision VR」と呼ばれる360度の仮想現実可視化プラットフォームを実際に使った手術計画を策定し、両者を比較する実験も行われるそうだ。仮想現実と拡張現実のテクノロジーを医療分野に活用することで、今まで目に見えなかった領域を可視化し、医師の勘と経験に、よりリアルな安心感を担保することができるようになる。
    Surgical Theater Presents Virtual & Augmented Reality across Neurosurgical Treatment Continuum: Perspectives from Masters, Mid, and Early Career Neurosurgeons at CNS 2019

  • ・スマートフィットネス・デバイス、世界のAppleストアで発売
  •  米Activbody社の看板商品である「Activ5」。この携帯式アイソメトリック・エクササイズ装置の販売が、このほどオンライン(apple.com)および世界のApple Storeの店舗で始まった。アイソメトリック・エクササイズとは、体を引き締めるためにデザインされた運動の一つ。バーベルなどの器具を使わずに、基本的に自重(自分の体重)を活用しながら様々な運動プログラムやルーチンを組み合わせ、筋肉を伸ばすことなく緊張を保つことでその効果を最大限に発揮する。日常的に運動して体を引き締めたいと考えている人だけでなく、けがや手術からの回復期にある人にも効果の高い運動だ。関節にストレスを与えることなく、一人ひとりの体調に適応するアイソメトリック・エクササイズは、リハビリテーションプログラムにおいても推奨される運動の一つとして、医療界でも注目されている。

     先日、このアイソメトリック・エクササイズ装置Aktiv5が、Applewatchアプリと、iOSが提供する健康データ管理機能Healthkitとの連携を発表した。ユーザーは、Activ5で様々なエクササイズアプリを使用することができるようになり、Apple店舗を訪れると、実際に100種類以上の5分間のパーソナルエクササイズを試し、使い勝手を確かめることができる。アプリを使うと、運動や心拍数のモニタリングに加え、消費エネルギー量も計算できる。Aktiv5は、Healthkitと連動する唯一のエクササイズデバイスであり、iPhoneのAppleHealthアプリにあるApplewatchにデータを記録できる点も便利だ。Activbody社はAppleとの協力なパートナーシップを元に、米国を皮切りに、Aktiv5のグローバル展開を狙う。
    Activ5 Smart Fitness Device Now Available in Select Apple Stores Around the World

  • ・最新式インフルエンザウイルス検査システムがCEマーク取得
  •  米BioGX社の欧州の子会社であるオランダBioGX B.V. が、インフルエンザA型、B型、RSV A/Bウイルスの新たな自動検査システムの、CE-IVD(体外診断用医薬品基準)を取得した。CE-IVDは、体外診断用医療機器メーカーが、欧州市場向けに自社製品をEU加盟国へ輸出する際に、安全基準条件(使用者・消費者の健康と安全および共通利益の確保を守るための条件)を満たすことを証明するマークである。この新たなインフルエンザ検査システムは検知範囲と感度が高く、従来の検査に比べ、より多くの種類の検体をテストすることができる。BioGX社はこれから販売会社や顧客と協力し、少しずつ、従来のインフルエンザ検査を新たな検査へとグレードアップさせる計画だ。

     この新たなインフルエンザ検査では、鼻腔洗浄器や咽頭用綿棒を使用して感染が疑われる患者から集めた検体から、インフルエンザA型、B型、肺の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症A型、B型特有のリボ核酸を、高い精度で検知できる。BioGX社のCEOは、「顧客のニーズを拾い、すぐに対応する能力が求められている。この新たな検査を導入したことで、我々の能力を証明することができた」と胸を張る。

     この新たな検査ツールには、BioGX社の独自のサンプルフォーマットが実装されており、全てのポリメラーザ連鎖反応(PCR)試薬をリアルタイムで、検査用に一つのチューブに凍結乾燥することができる。抽出カートリッジとして使用するのは、米Becton,Dickinson and Company(BD)社のBD MAX exK TNAだ。今回承認された、重要な臨床用検査ツールは、Bio GX社が開発したBD MAX検査の中で、過去2年間で出されたもののうち23個目となる。まだ米国での販売は開始されていないが、今後グローバルな展開が期待される。
    BioGX Receives CE-IVD Mark For Enhanced Flu Assay