AIを活用した精密がん放射線療法がアジア地域に

【要素技術】

  • ・アトピー性皮膚炎に対する画期的な経口薬の第2相試験が開始
  •  米Arena製薬が、「Estrasimod」という次世代型のアトピー性皮膚炎の経口薬の第2相試験を開始し、最初の被験者への投与が始まったと発表した。Estrasimodは、スフィンゴシン1-リン酸受容体のモジュレーターであり、1日1回の経口投与で、中・重度のアトピー性皮膚炎患者に効果を発揮するとされている。試験は米国、カナダ、オーストラリアで実施され、約120人の被験者が12週間Estrasimodを2錠服用し、その後4週間かけて経過を観察する予定だ。結果は、EASIと呼ばれる、アトピー性皮膚炎の評価スケールを使用し、2020年後半に測定される予定だ。

     厚生労働省が発表した「平成29年度患者調査」によると、日本におけるアトピー性皮膚炎患者数は51万3000人に上り、その数は増え続けている。アトピー性皮膚炎には、皮膚科でステロイド外用薬を処方されるケースが一般的である。ステロイド外用薬は、一瞬にしてかゆみが止まるため、一時は「魔法の薬」と呼ばれたが、薬が処方されるようになってからも、患者数は増える傾向にあり、新たな治療法が模索されてきた。今回の試験では、アトピー性皮膚炎に最新の経口薬の効果を試す機会となる。今まで、患者のニーズに応えるような特効薬が開発されず、患者と家族にとっては精神的にも負担が大きく、日常の活動が制限されることが多いアトピー性皮膚炎。Estrasimodが、画期的な作用を持つ「ファースト・イン・クラス」の医薬品となることに期待が寄せられる。
    Arena Pharmaceuticals Announces First Subject Dosed in ADVISE Phase 2 Trial Evaluating Etrasimod in Atopic Dermatitis

  • ・成長ホルモン欠乏症の新薬、欧州の希少疾病用医薬品に指定
  •  内分泌関連障害の治療薬を開発する中国VISEN製薬が申請した、成長ホルモン欠乏症の新薬に対し、中国国家食品監督管理局(NMPA)の承認が下りた。新薬は、「TransCon HGH(TransConヒト成長ホルモン)」と呼ばれ、小児期の成長ホルモン欠乏症に対する第3相試験が開始されることになった。中国で初めて、長期間作用する成長ホルモンに焦点を当てた治療法であり、患者に1週間に1回、薬を投与し、成長ホルモンの分泌を促す。欧州委員会より、希少疾病用医薬品指定(医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少ないことにより、研究開発が進んでいない分野を促進するための特別支援措置)を取得し、まだ欧州でも米国でも治療法が確立していない、成長ホルモン欠乏症の分野に期待が高まる。

     TransCon HGHは、世界で唯一、革新的な「一時接合」テクノロジーを用いることで長期間作用する成長ホルモンの分泌を促す。成長ホルモン類似体を使った従来の治療法とは異なり、改良されていないヒト成長ホルモンを一定の割合で1週間以上継続的に体内に分泌させることで、効果を発揮する。成長ホルモン欠乏症の患者は、従来の治療法では数年間毎日皮下注射を投与しなければならないため、治療負担が大きく、コンプライアンスの問題も重なり、患者の約70%は治療を全うせずに中断してしまう傾向が強い。治療の回数を減らすことができれば負担が減り、より患者のニーズに応えられるようになる。中国のHealth China Action(2019年~2030年)計画では、5歳以下の成長ホルモン欠乏症患者の数を2022年までに7%以下とし、2030年までに5%以下にする目標を掲げ、新薬の適用を急ぐ。
    VISEN Pharmaceuticals announces China Phase 3 clinical study initiation for TransCon human growth hormone, the first unmodified long-acting growth hormone in China

  • ・パーソナライズされたがん放射線療法をアジア太平洋地域に導入
  •  がん治療ソリューションを提供する、オーストラリア最大手のIcon Group社が、自社のニュージーランドとアジアの事業にVarian社のハードウェアとソフトウェアのがん治療ソリューションのパッケージを今後1年かけて導入する予定だ。この中には、Ethos療法と呼ばれる、オンラインのアダプティブ・インテリジェンス・ソリューションも含まれ、今回アジア太平洋地域に導入されるのは初めて。Ethos療法は、最先端のAI(人工知能)を活用し、放射線治療の範囲、柔軟性、効果を高めるよう設計されている。またIdentify Guidance Systemは、ピンポイントな精密放射線治療に利用され、患者の精神的な負担となるタトゥーの必要性をなくし、治療時間を最小限に抑えることができる。

     Ethos療法により、患者の体内・体外の病態の変化に応じ、患者個別にカスタマイズした、最適な治療を施すことが可能になる。AIが腫瘍だけを標的にし、患者に合わせて放射線量を調整する。治療は、15分単位で毎回行われ、他社のオンラインソリューションが40分かかるところを、大きく時間削減できる。Icon Group社は今後、シンガポールと中国にも事業を拡大し、この最先端の放射線治療を提供する予定だ。

     さらに、同社は香港のSunTech Medical Group社を買収、シンガポールのMt Alvernia病院に総合がんセンターを設立。がんセンターにはVarian社のTrueBeam linear acceleratorやHyperArcテクノロジーなどの最新設備をそろえ、アジア太平洋地域における放射線治療医や臨床医、放射線セラピストのための訓練施設を目指す。パーソナライズされた放射線療法の未来は、すぐそこだ。
    Icon Group Expands Cancer Care Capabilities with Purchase of Varian Adaptive Therapy Solution

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)