手術などでできた傷口をふさぐ際、針や糸を使わず両面テープを貼るだけでよい時代が来るかもしれない──。米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学・土木環境工学准教授のXuanhe Zhao氏らは、傷口の縫合処置に用いる医療用両面テープを開発。動物実験で、テープを貼ると傷口の組織が数秒で接着するという有望な結果が得られたと「Nature」10月30日号に報告した。この両面テープは、縫合糸に取って代わることが期待されるという。

 Zhao氏によれば、世界で行われる外科手術は年間2億3000万件以上に上り、その多くでは傷口を縫合糸で縫い合わせる処置が施されているという。しかし、同氏は「針と糸を用いて縫合すると組織にストレスを与えるほか、感染症や痛み、瘢痕の原因となることがある」と指摘。「われわれは、縫合糸とは根本的に異なるアプローチを提案している」と説明している。

 Zhao氏らが開発した両面テープは、生体高分子(ゼラチンまたはキトサン)とポリアクリル酸から成るもので、クモが濡れた状態の獲物を捕らえるのに用いる粘着性物質に着想を得た。同氏らがマウスやラット、ブタの組織を使った実験を行った結果、傷口に両面テープを貼ってから5秒以内に、肺や腸などの組織はしっかりと接着することが分かった。

組織接着テープ(写真:MIT)

 外科用縫合糸は、一部の組織の縫合には適さず、患者によっては合併症を引き起こすこともあるという。今回の研究結果を踏まえ、Zhao氏らは「この両面テープが縫合糸に代用される日が来るかもしれない」と期待を寄せる。

 また、従来の液状組織接着剤は接着するまでに数分かかり、体の他の部位に液が漏れるといったデメリットがあったが、この両面テープを使うと、組織ははるかに速く接着する。さらに、実験の結果、両面テープは、心臓などの臓器に医療機器を植え込む際にも活用できる可能性も示された。

 論文の筆頭著者を務めた同大学のHyunwoo Yuk氏は「私たちが開発した両面テープは、組織にダメージを与えたり、二次性の合併症を引き起こしたりすることなく、さまざまな部位で利用できる。そのため、植え込み型心電計や薬物送達デバイスの適用を広げ、より簡便かつ効率的な方法でこれらを使えるようになるだろう」と述べている。

 Zhao氏らは今後も、動物実験を続けていくとともに、医師との共同研究でこの両面テープの新たな可能性を探っていく予定だ。ただし、基礎研究で得られた結果は、ヒトに適用できるとは限らない点に注意が必要だとしている。

[HealthDay News 2019年10月31日]

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