がんの過剰診断と過剰治療は、近年の医療における課題の一つだといわれています。進行の遅いがんや、放置しても致死的とはならないがんの割合が一定数あるため、治療による体への負担の方が大きくなってしまうケースもあります。個々の患者さんにおいて最適な治療法を見極めるには、まずはがんの性質を個別に正しく診断する、信頼できるテクノロジーが必要です。米国の分子診断と遺伝子診断のリーダーであるExact Sciences社とGenomic Health社の2社が手を結び、最先端のがん診断技術開発に挑戦します。

 一方で、米Rakuten Medical社は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑氏らが見いだしたオプジーボ療法と光免疫療法とを併用する新たながん治療の臨床試験を進めています。1分でがんを死滅させ、全身のがんにも効果を発揮する治療法として期待されています。がんの診断と治療の両面において技術がグローバルに躍進し、全てのがんを完治できる日が少しずつ近づいてきているのを感じます。


以下では、2019年11月11~15日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・がんの分子診断と遺伝子診断の最高峰が合弁会社を設立
  •  がん診断技術のリーダー、米Exact Sciences社が、米Genomic Health社との合弁会社を設立した。Exact Sciences社CEOのケビン・コンロイ氏は、「今回の合弁により、がん診断学の最高峰の知見を結集し、医療プロバイダーや患者に先進的な検診を提供できるようになる。我々のトップクラスのR&D(研究開発)、臨床分野とビジネス分野に精通した組織体制、グローバルなインフラを活用し、現行の検診技術を広めるとともに、検診技術をさらに進化させながら、がん診断学の未来を開拓する環境が整った。Genomic Health社の遺伝子医療に特化したスタッフがExact Sciences社のチームに加わることで、ビジネスを次のステージへと押し進めることができる」と熱く語る。

     Exact Sciences社は、分子診断分野でがんの早期発見と防止を目指してきた実績があり、自社で開発した侵襲性のない、結腸直腸がんの分子スクリーニング技術は特許を取得している。一方、Genomic Health社は臨床と遺伝子学のビッグデータを用いて、診断から治療の選択と経過観察までを一貫して行う遺伝子検査の世界的リーダーだ。新たな合弁会社で、「Cologuard」と「Oncotype DX」という二大がん診断ブランドが合体し、さらに強力なプラットフォームを形成して成長を拡大する。

     がんの過剰診断と過剰処置は近年の医療における、大きな課題の一つである。そもそもがん検診は、がんによる死亡を防ぐことを目的に、がんによる症状が発現する前に発見し、治療するために行われるが、実は放置しても致死的とはならないがんも一定割合で存在する。がんの成長が極めてゆるやかであったり、がんが発見された人が合併症を有したりする場合は、治療を行うことで、患者の不利益になる場合があり、「過剰診断」が害となる。がんに対し、遺伝子レベルの診断に基づく最適な治療法を選択できる、大事な最初の分かれ道を右へ進むのか、左へ進むのかをスマートに見極めるソリューションが、今求められている。
    Exact Sciences Completes Combination with Genomic Health, Creating Leading Global Cancer Diagnostics Company

  • ・光免疫療法とオプジーボ療法のコンビネーションでがんを撃退
  •  がんの光免疫療法の実用化を目指す米Rakuten Medical社(関連記事)が、免疫システムを使った新たな標的型がん療法の前臨床試験データを発表した。試験データは、第34回米国がん免疫学会(SITC)の年次総会にて、Rakuten Medical社のジェリー・フォン氏により発表された。今回Rakuten Medicalが行ったのは、CD25光免疫療法(PIT)と抗PD-1抗体(オプジーボ)療法の二つの免疫療法のコンビネーションによって、免疫チェックポイントをブロックし、体に備わる免疫システムの活性化によりがんから体を守る働きを強化させる試験だ。

     光免疫療法(PIT)とは、がん細胞に赤外線を当てるだけで、わずか1分足らずでがん細胞が死滅する画期的な治療法である。がん細胞を壊死させる一方で、正常組織にはわずかな影響しか及ぼさない点において、米国で大きな注目を浴びている。抗PD-1抗体は、免疫チェックポイントを阻害し、T細胞の活性化を亢進してがんへの攻撃力を強める作用がある。

     試験の結果、制御性T細胞が急速に減少して抗がん作用が高まること、また、二つの療法を組み合わせることで研究用マウスの抗がん活性が大幅に向上したことが確認された。治療法が限られているがん患者にとって、免疫療法のコンビネーションが新たな選択肢となる可能性が出てくる。Rakuten Medical社は、自社開発のがん治療プラットフォーム「Illuminox」に今回の研究成果を反映し、身体の免疫パワーを最大限に引き出すプレシジョンメディシン(個々の患者に合った最適な治療を行う医療)の確立を目指す。
    Rakuten Medical Investigational Anti-cancer Therapy Candidate Seen to Activate Immune System Response and Synergize with PD1 Checkpoint Blockade in Animal Models

  • ・元気なスタートアップ企業が高齢者の健康を守る
  •  米国のヘルスケアの非営利団体GuideWell Mutual Holdingが、「2020年スケールアッププログラム」の開催を発表した。これは、全ての高齢者が、年齢や所得、健康状態に関係なく、自宅と地域のコミュニティーに安全に、自立して、居心地良く生活できる環境づくりを目指す「Aging in Place」と呼ばれる、2カ月間のヘルステクノロジー促進プログラムである。オーランド市内のLake Nona Medical Cityで、2020年1月23日に開始される予定だ。まず2日間のキックオフ・ブートキャンプが実施され、続いて週次のメンタリング・セッション、各種ワークショップが行われ、2020年3月9日には投資家によるマッチメーキングサミットが予定されている。

     プログラムの目的は、革新的なヘルスケアテクノロジーを駆使し、高齢者が自宅で安全に過ごす支援サービスを提供するスタートアップ企業の発掘だ。ヘルスケア界のトップ企業や、実績のある起業家、投資家など、ヘルスケアエコシステムから各分野のプレイヤーたちが集結し、将来性の高いスタートアップ企業の成長を後押しする企画だ。

     プログラムを通し、より多くの高齢者がヘルスケアにアクセスできるようになり、心身ともに健康を増進し、高齢者の地域コミュニティーへの積極的な参画と自立を促す。元気な若いスタートアップ企業の力が、高齢者の健康を守り、健全な社会の原動力となる。
    GuideWell Launches Program Seeking Health Technology Start-ups that Support Aging in Place