世界中の糖尿病の有病率が驚くほど上がっている

【要素技術】

  • ・パーキンソン病の前駆症状が新たなバイオマーカーになる
  •  ドバイで第24回世界神経学会議2019が行われ、世界126カ国から神経学者や専門家4000人が集い、パーキンソン病に関する最新動向が発表された。パーキンソン病とは、脳の異常のために体の動きに障害が現れる病気であり、主に50歳以上の中高年に見られる進行性の疾患である。現代の医学では完治が困難な難病として知られる。

     研究によると、パーキンソン病の前駆症状(ある病気の起こる兆候として現れる症状)は、もともと考えられていたよりもずっと早くから起こり、病気診断の何十年も前から発生することもあることが分かった。前駆症状には、レム睡眠の時に体が動き出してしまう睡眠障害であるレム睡眠行動障害、便秘、うつ病、嗅覚鈍麻、不安症、日中の過度な眠気などが挙げられる。米国のVan Andel研究所のディレクターのパトリック・ブランデン氏は、「これらの前駆症状を新たなバイオマーカー(疾患の有無や進行状態を示す目安となる指標)にすることでパーキンソン病を早期に診断し、治療法が広がる可能性が出てきた。今、私たちはこの病気に対してかつてないほどの知識を有し、この20年で飛躍的な進歩を遂げてきた」と語る。

     パーキンソン病の原因の10%は遺伝子の家系的な突然変異であり、残りの90%は遺伝と環境因子、ライフスタイルが全て絡んで発症する。病気がいつ、どのようにして発症して進行するのかを突き止めることが、より効果的な治療法開発の鍵となるはずだ。ワクチン、神経ブロック、外科手術など、新たな治療法の研究が進められ、既存の薬物を利用する臨床試験も進められている。臨床試験では、糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬、抗炎症薬、αシヌクレインというタンパク質に作用する治療、ミトコンドリア療法、鉄キレート療法など様々なアプローチが取られてきた。今後焦点となるのは、既に損傷が進行した患者の機能を回復できるかどうかである。これには、幹細胞由来の神経細胞の移植に関する研究が有望視されており、パーキンソン病のブレイクスルーとして期待が寄せられる。
    Potential New Biomarkers for Parkinson's Disease Could Change Trajectory of Diagnosis and Treatment

  • ・世界中で4億6300万人が糖尿病を患い、その数は増え続けている
  •  11月14日は、世界糖尿病デーだ。この日、国際糖尿病連合(IDF)は、世界中の糖尿病の有病率が驚くほど上がっていることを浮き彫りにする最新データを発表した。2017年と比べ、3800万人上回る成人が現在糖尿病を患っており、その数は世界中で4億6300万人に上るという。糖尿病の世界的な有病率は9.3%に達し、成人の半分以上(50.1%)はきちんと診断を受けていないという結果も出ている。

     糖尿病患者の90%が2型糖尿病に罹患している。2型糖尿病患者数の増加は、社会・経済的、人口統計学的、環境的、遺伝的要因の複雑な相互作用によって促進されており、主な要因には都市化、高齢化、身体活動レベルの低下、太り過ぎや肥満レベルの上昇が含まれる。IDF会長のナム・H・チョウ氏は「糖尿病の早期診断、合併症予防のため、我々はさらに努力する必要がある。全ての糖尿病患者が、低価格で途切れることなく必要なケアにアクセスできるようにしなければならない」と語る。

     110万人以上の20歳未満の子供と青少年が1型糖尿病に罹患しており、糖尿病患者の4人に3人が労働年齢(20歳~64歳)である。また、65歳超の5人に1人が糖尿病を患っている。調査によると、2045年までに糖尿病患者の総数は7億人に増加すると予測され、喫緊の予防策が求められている。2型糖尿病は、生活習慣を見直すことで予防できることが多く、早期診断と適切なケアへのアクセスにより合併症を回避し、遅らせることが可能だ。IDFは、世界中の専門家の協力を得て「糖尿病アトラス第9版」という調査書を定期的に発行し、人々に糖尿病のケアと予防について情報発信を続けている。
    International Diabetes Federation: Latest Figures Show 463 Million People Now Living With Diabetes Worldwide as Numbers Continue to Rise

  • ・世界初のモノクローナル抗体による黄熱病治療薬が第1相試験を完了
  •  シンガポールTychan社の、ファースト・イン・クラス(従来の治療体形を大幅に変えるような独創的医薬品)のモノクローナル抗体による黄熱病治療薬が、無事にヒトへの第1相試験を終了し、安全性が確認された。モノクローナル抗体とは、目的の抗原のみを培養して作製された、抗原特異性が単一な抗体である。この抗体は、1990年代後半からバイオテクノロジー界に革命をもたらし、がん治療などにも使われる、安定性が高く、免疫増幅効果が期待されるヒット製品として注目されている。

     世界初の黄熱病治療薬「TY014」は、2018年11月にシンガポールのヘルスサイエンス庁にヒトへの試験を承認され、続いてブラジルでも、黄熱病が蔓延する地域において規制当局の承認が下りた。黄熱病は、蚊が媒介する出血性疾患であり、サブサハラ地域、中央・南アフリカの47カ国で発症する、また治療薬のない感染症である。致死率は15%と高く、ワクチンの数が世界的に不足している上、ワクチンによる深刻な副作用も問題になっている。今まで、生物学的・小分子の黄熱病治療薬が臨床試験まで発展したケースはなく、今回初めてモノクローナル抗体による治療によって、感染した患者の症状を改善し、感染を防ぐことができるようになるのではないかと期待されている。

     Tychan社会長テオ・ミン・キアン氏は、「感染症の大流行に備えることが、我々の最終目的である。今回行われた世界で初めての黄熱病治療薬の試験が成功し、ゴールに一歩近づいた」と述べた。TY014は、既に試験を完了しているジカ熱の治療薬「Tyzivumab」と同様、香港のWuxi Biologics社とのジョイントプログラムで開発され、規制当局の承認が下りてから8カ月という異例のスピードで、第1相試験を成功させた。両社は、シンガポールのTemasek Holdings社からの支援を受けながら、感染症撲滅に挑む。
    World's First Candidate Antibody Treatment for Yellow Fever, Developed by Tychan, Tested Safe and Effective in Human Volunteers

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)