人類の夢、若返り。米国のLibella Gene Therapeutics社が、世界初の、20歳若返る「アンチエイジング遺伝子治療」の臨床試験を行うと発表しました。被験者は臨床試験の参加費用として破格の100万ドル(約1億円)を支払わなければならないという点でも、話題を呼んでいます。長年老化は自然現象と思われてきましたが、近年この見方は変わってきており、科学者たちの間では老化を「病気」として扱うようになってきています。老化は、染色体の末端部にある「テロメア」という構造を治療することで防げるといわれ、研究が進められています。

 一方、シンガポールの「タイムマシン」という教育用ウェブサイト上で、「人生の何年間をスマートフォンやタブレットの前で過ごすことになるか」を計算することができるというトピックもありました。なんと21歳の若者は、人生の11年間をデバイスの前に座って過ごすことになるという驚愕の結果が出ました。遺伝子操作で20年間若返った時間をどのように過ごしたいのか、今から考えておく必要があるかもしれません。


以下では、2019年11月18~22日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・コロンビアでアンチエイジング遺伝子治療の臨床試験が承認
  •  老化を止める画期的なアンチエイジング遺伝子療法の臨床試験が南米コロンビアで開始される。施設内IRB(治験審査委員会)により世界で初めて臨床試験の実施が承認され、今回20歳若返るという遺伝子治療に挑むのは、米Libella Gene Therapeutics社だ。この臨床試験は珍しいpay-to-play方式を採用し、参加に同意した被検者はなんと100万ドル(約1億円)を支払い、コロンビアの病院へ移ってLibella社の遺伝子治療を受けることになる。

     最近の研究では、老化は体の中の「テロメア」という、染色体末端部にある構造が、年とともに擦り減ることが原因だということが分かっている。テロメアは、「体の時計」といわれている。細胞が分裂するたびにテロメアは短くなり、分裂が徐々にうまくできなくなっていくことで老化が進む。過去の研究で、テロメアを伸ばすことで若返りの症状が表れることは既に実証されている。今回の若返り遺伝子治療は、Libella社独自のAAV(アデノ随伴ウイルスベクター) 逆転写酵素を用い、テロメアを長くすることに焦点を当てる。既に200の臨床試験によって安全性が確認されており、マウスの遺伝子実験では、老化を抑制して寿命が延びるという結果が出ている。

     なぜ、試験を北米ではなく南米コロンビアで実施することにしたのかについて、Libella社社長のジェフ・マチス博士は「北米では、臨床試験を行うためには何年もかかり、何十億ドルという高いコストがかかる。コロンビアではより迅速に、コストを抑えて試験を行うことができる上、今回の試験のためのテクノロジーと有能な科学者、医師、研究パートナーがそろっており、準備は万端だ」と語る。人間の究極の目標である若返りの臨床試験、結果が注目される。
    Breakthrough Gene Therapy Clinical Trial is the World's First That Aims to Reverse 20 Years of Aging in Humans

  • ・人生の何年間をスマホの前で過ごすことになるか
  •  シンガポールのPlano社の「Planoタイムマシン」というウェブサイトが面白い。このサイトに登録すると、ユーザーは自分がこれからの人生の中でどれくらいの時間をスマホやタブレットの前で過ごすことになるかを算出し、数字で示してくれる。サイトは最新のデータとアルゴリズムを活用し、ユーザーが自分のインターネットの過剰使用に意識を向けるよう警告する、教育目的で作られたものだ。このPlanoタイムマシンはリリース後すぐに話題になり、数日で43カ国以上から3000件以上のアクセスがあった。そこで明らかになったのは、21歳の平均的なユーザーは今後の人生において11年間(1日8時間で計算)をオンラインデバイスの前で過ごすことになるという、驚愕の事実だ。シンガポール人に至っては、1人平均15年間、つまり人生の33%もの時間をデバイスの使用に費やすことになるという結果が出た。

     シンガポールの広告会社We Are Social社の2018年の調査報告によると、インターネット利用者は1日平均6時間をスクリーンの前で過ごしているという。デバイスの画面を見過ぎることによって、不安症やうつ病、近視、心血管疾患、糖尿病やがんのリスクも高まることが警告されている。Plano社のCOOのケビン・テイ氏は「Planoタイムマシンは、人生の最も重要な質問に回答する手助けをしてくれるツールとして開発した。質問は、残された人生の時間をあなたはどうやって過ごしたいのか、ということだ。普段あまり考えたくない質問かもしれないが、ユーザーをはっとさせる目覚ましになればと思う。人生の時間の使い方を自分の問題として受け止め、自己管理を促していきたい」と述べる。

     過去100年の間に平均寿命は2倍以上延びたにもかかわらず、現代人は日々時間が足りないと感じて生活している。今、4歳児の97%がスマホやタブレットを使用し、3歳以下の子供は平均2時間から5時間をデバイスの前で過ごしているというデータもある。まだ歩き始めたばかりの1歳児の3分の1が1日1回デバイスを使用しているという。スマートデバイスとのスマートな付き合い方を模索するべく、スクリーンからいったん目を外して人生の時間を見つめなおそうではないか。
    We Lose 11 Years on Smart Devices: Singapore health tech company calculates the cost of screen time with this revolutionary tool

  • ・おなかに巻くバンドで、いつでもどこでも胎児の遠隔モニタリング
  •  母体と胎児のヘルスケア業界のリーダーである米国のNuvo Group社が、妊娠モニタリング・管理プラットフォーム「INVU」の新臨床データを発表した。フィラデルフィア市で開催された米国心臓協会学術集会(AHA2019)で発表された研究のタイトルは「妊婦と胎児のための、自分でできる、非侵襲性の遠隔心電図検査(ECG)」。本研究は、18歳~50歳までの、妊娠32週目以降に入る健康な女性150人が被験者となり、妊婦と胎児の心拍数を、遠隔のINVU技術と従来のCTG (cardio toco grap)技術とで測定し、比較した。結果、両データはほぼ同じであり、INVUによる遠隔モニタイングの高い潜在性が示された。

     おなかにフィットする柔らかいINVUのセンサーバンドを着用すると、母体と胎児から複数のデータが収集可能だ。母体と胎児の様々な生体データを同時に取得した後、INVUプラットフォームのクラウド環境へ送信される。データ処理と分析を行った後、医療チームと妊婦の元へ送られ、管理する仕組みだ。

     胎児の心拍数モニタリングプログラムのディレクターであるジャック・リチック博士は、「このユニークなツールは、胎児の心拍数を継続的に、簡単に、正確に測定することを可能にする。胎児の不整脈や心拍数の変動を検知して長期的に管理し、今後母体と胎児の様々な症状の改善につなげていきたい」と語る。おなかの中からヘルスケアイノベーションは始まっている。
    Nuvo Group Presents Positive Data Results For Remote Maternal-Fetal Heart Rate Monitoring At The American Heart Association Scientific Sessions 2019

1日に必要な水分量摂取をサポートするアプリの仕掛けとは

【プロダクト/サービス】

  • ・明るさに反応して目をケアする、賢い調光コンタクトレンズ
  •  英国Johnson & Johnson Vision社が、コンタクトレンズのACUVUEシリーズの最新作、「調光ACUVUE OASYS」の国内販売を開始した。この調光コンタクトレンズは、目を光から保護するために、屋内と屋外、昼夜問わず、あらゆる明るさに迅速に反応して色の濃淡が自動的に変わる。TIMEマガジンでも、「すごい発明品」として取り上げられたこのコンタクトレンズを装着すれば、目にかかるストレスを軽減し、光ぼけやチカチカするまぶしい光を和らげてくれるため、目を細めて刺激を我慢する必要もなくなる。屋外へ移動すると目の中で急な光の変化を察知し、60秒で濃淡が変化して目を保護するため、もはやサングラスは不要になりそうだ。また、ブルーライトの影響が心配な人にも、日常使いをお薦めしたい商品だといえる。

     同社の調査によると、英国人の70%が光によって目が疲れたり、支障や気持ち悪さを感じたりすることがあると答えた。映画館やショッピングセンターなど、暗い場所から明るい場所へ移動した時に目に違和感があると答えた人は51%おり、サングラスをかけたり、目を細めたり、もしくはPC画面をなるべく暗く設定して目をケアしていると答えた人は半数近くに上った。

     Johnson & Johnson Vision社の英国とアイルランドのゼネラルマネジャーのジェイコブ・スヴィーン氏は「消費者はコンタクトレンズに単なる視力矯正だけでなく、もっと高い効能を求めている。この、他に類を見ない調光機能付きのコンタクトレンズは、まさに健康とアイケア業界のゲームチェンジャーだ」と語る。同社は、ライトインテリジェントレンズ調光メガネ開発で世界的に有名な米Transitions Optical社とパートナーシップを組み、10年以上調光コンタクトレンズの技術開発に取り組んできた。既にうるおい、UVカット、乱視用など様々な新商品を打ち出してきているJohnson & Johnson Vision社のACUVUE OASYSシリーズの進化はまだまだ続く。
    Johnson & Johnson Vision Announces National Availability of ACUVUE OASYS with Transitions Light Intelligent Technology in the UK

  • ・音声で周囲の様子を案内、視覚障害者をサポートするスマートアプリ
  •  韓国のソフトウェア開発企業TUAT社は、スマホのカメラを利用して周囲の情報を高齢者や視覚障害者に提供するアプリ「Sullivan Plus」の提供を開始した。どういうアプリかというと、Google PlayかApp Storeからダウンロードし、テキスト認証と顔認証、画像認識によるAI(人工知能)ベースの音声案内をしてくれるものだ。音声は、韓国語、中国語、英語、日本語、ロシア語、スペイン語で利用できる。

     Sullivan Plusのキャッチコピーは、Another eye to understand the world(世界のことを教えてくれる、もう一つの目)。スマホを洋服にかざすと色を教えてくれたり、目の前にいる人の写真を撮ると、年齢や性別、表情を読み取り「4歳の女の子が笑っている」などと伝えてくれたりする。カメラで周囲の景色を撮影すると、「木製のテーブルの前にイスがあります」などと教えてくれるため、ぶつからずに移動できる。TUAT社のチョ・スーウォン氏は「AIの進歩により、スマホを使った視覚サポートを視覚障害者に提供できるようになった。同社はその技術をさらに改善し、よりユーザーフレンドリーにしていくことを目指す」と述べた。私たちの周りには、視覚的な情報が溢れており、それらを音声で伝えることができれば、視覚障害者とって世界はもっと安全な場所になる。
    AI-Based App Gives Voice Guidance for Visually Impaired

  • ・あなたが飲んだ水ですくすく育つ、かわいい水分補給リマインダー
  •  人間の体は70%が水分でできているため、水分補給はとても大切である。台湾のFourdesire社は、最新版の「Plant Nanny2」というスマホアプリで、全ての人の1日に必要な水分量摂取をサポートする。アプリはGoogle PlayとApp Storeから無料ダウンロード可能。2019年の「Google play Best of 2019」において、イタリア、香港、台湾で「ユーザーズ・チョイス賞」にノミネートされている人気アプリだ。

     米国で職場のウォーターソリューションを提供するQuench社が行った調査によると、働く米国人の80%近くが必要な水分を十分に取っていないという。忙しかったり、何かに夢中になったりするとついつい水分補給を忘れて軽度の脱水症状により、気づかないうちに生産性が落ち、元気と集中力に差が出る、と専門家も指摘する。Plant Nanny2は、水を強制的にただ飲むというのではなく、飲む体験を楽しく、張り合いのあるものに変えてくれるアプリだ。ユーザーは水を飲むたびにアプリに登場するタンポポやサボテン、ヒマワリ、キノコなどのキュートな植物に水を与えて育てることができる。タップすると植物たちがニコッとリアクションをしてくれる姿が可愛いと、ユーザーの間で評判だ。2~6時間ごとにプッシュ通知で水分補給を知らせてくれる機能もあり、熱中症対策としても活用できる。このアプリがあれば、自分も植物も枯れないよう水分を適切に取る習慣がつきそうだ。

     フィリピンにいるユーザーは「自国が水不足と熱波に襲われていた時に、周りの人も自分も水分を取ることをついつい忘れがちであった。そんな時にPlant Nannyのアプリを知り、ダウンロードしてみた。植物のキャラたちが枯れ始めると、自分のカラカラに乾燥した身体の状態と同じだと感じ、水分補給の大切さをもう一度見つめ直す機会となった」とインスタグラムに投稿している。現在Plant Nanny2は世界中で170万人のユーザーが愛用中だ。水分とともに、ユーモアも適度に補給することで、体と心をしっとりと満たしてくれるアプリだ。
    Plant Nanny 2, the Self-care Water Consumption Reminding app Has Been Nominated for "Google Play Best of 2019" Launches Brand New Version 2.0

  • ・4.5秒に1本売れている日本のベストセラー角質ケア製品Cure
  •  日本で売り上げ1位のフェイシャル角質ケア製品、「Cureナチュラルアクアジェル」のメーカーである東洋ライフサービス社が、ワールド・ブランディング・アワードの健康と美容部門で2019年「今年のブランド賞」受賞した。同ブランドがこの名誉ある賞を受賞するのは、これが連続3回目となる。イベントは英国ロンドンのケンジントン宮殿で2019年11月14日に開かれた。

     受賞者は、3つの部門で行われる独自の審査過程を通して選定された。総得点の30%はブランド査定、他の30%は一般投票、40%は消費者市場調査が占める。次に、ワールド・ブランド・フォーラムのインカム・アプローチ・モデルによって財政的な査定が行われ、賞にノミネートされた各企業の市場調査スコアを算出する方式だ。

     これまでにナチュラルアクアジェルCureは世界中22カ国以上で販売されており、Amazonで5つ星のうち4.2を獲得し、顧客から2400件を超えるレビューを持つ。日本で売り上げ第1位の角質ケア製品として、同製品はなんと4.5秒に1本売れており、カルト的人気商品、日本の伝統的美容製品としての確固たる地位を築いてきた。同社のモットーは、ナチュラルなスキンケア製品を通して顧客1人ひとりに笑顔をもたらすこと。Cureは刺激の強い化学物質を使用せず、優しく効果的に角質をケアし、約束通り肌をCure(癒す)してくれることで、角質ケア界のトップランナーであり続ける。
    Japan's #1 Exfoliator, Natural Aqua Gel Cure, Wins World Branding Award

世界中の糖尿病の有病率が驚くほど上がっている

【要素技術】

  • ・パーキンソン病の前駆症状が新たなバイオマーカーになる
  •  ドバイで第24回世界神経学会議2019が行われ、世界126カ国から神経学者や専門家4000人が集い、パーキンソン病に関する最新動向が発表された。パーキンソン病とは、脳の異常のために体の動きに障害が現れる病気であり、主に50歳以上の中高年に見られる進行性の疾患である。現代の医学では完治が困難な難病として知られる。

     研究によると、パーキンソン病の前駆症状(ある病気の起こる兆候として現れる症状)は、もともと考えられていたよりもずっと早くから起こり、病気診断の何十年も前から発生することもあることが分かった。前駆症状には、レム睡眠の時に体が動き出してしまう睡眠障害であるレム睡眠行動障害、便秘、うつ病、嗅覚鈍麻、不安症、日中の過度な眠気などが挙げられる。米国のVan Andel研究所のディレクターのパトリック・ブランデン氏は、「これらの前駆症状を新たなバイオマーカー(疾患の有無や進行状態を示す目安となる指標)にすることでパーキンソン病を早期に診断し、治療法が広がる可能性が出てきた。今、私たちはこの病気に対してかつてないほどの知識を有し、この20年で飛躍的な進歩を遂げてきた」と語る。

     パーキンソン病の原因の10%は遺伝子の家系的な突然変異であり、残りの90%は遺伝と環境因子、ライフスタイルが全て絡んで発症する。病気がいつ、どのようにして発症して進行するのかを突き止めることが、より効果的な治療法開発の鍵となるはずだ。ワクチン、神経ブロック、外科手術など、新たな治療法の研究が進められ、既存の薬物を利用する臨床試験も進められている。臨床試験では、糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬、抗炎症薬、αシヌクレインというタンパク質に作用する治療、ミトコンドリア療法、鉄キレート療法など様々なアプローチが取られてきた。今後焦点となるのは、既に損傷が進行した患者の機能を回復できるかどうかである。これには、幹細胞由来の神経細胞の移植に関する研究が有望視されており、パーキンソン病のブレイクスルーとして期待が寄せられる。
    Potential New Biomarkers for Parkinson's Disease Could Change Trajectory of Diagnosis and Treatment

  • ・世界中で4億6300万人が糖尿病を患い、その数は増え続けている
  •  11月14日は、世界糖尿病デーだ。この日、国際糖尿病連合(IDF)は、世界中の糖尿病の有病率が驚くほど上がっていることを浮き彫りにする最新データを発表した。2017年と比べ、3800万人上回る成人が現在糖尿病を患っており、その数は世界中で4億6300万人に上るという。糖尿病の世界的な有病率は9.3%に達し、成人の半分以上(50.1%)はきちんと診断を受けていないという結果も出ている。

     糖尿病患者の90%が2型糖尿病に罹患している。2型糖尿病患者数の増加は、社会・経済的、人口統計学的、環境的、遺伝的要因の複雑な相互作用によって促進されており、主な要因には都市化、高齢化、身体活動レベルの低下、太り過ぎや肥満レベルの上昇が含まれる。IDF会長のナム・H・チョウ氏は「糖尿病の早期診断、合併症予防のため、我々はさらに努力する必要がある。全ての糖尿病患者が、低価格で途切れることなく必要なケアにアクセスできるようにしなければならない」と語る。

     110万人以上の20歳未満の子供と青少年が1型糖尿病に罹患しており、糖尿病患者の4人に3人が労働年齢(20歳~64歳)である。また、65歳超の5人に1人が糖尿病を患っている。調査によると、2045年までに糖尿病患者の総数は7億人に増加すると予測され、喫緊の予防策が求められている。2型糖尿病は、生活習慣を見直すことで予防できることが多く、早期診断と適切なケアへのアクセスにより合併症を回避し、遅らせることが可能だ。IDFは、世界中の専門家の協力を得て「糖尿病アトラス第9版」という調査書を定期的に発行し、人々に糖尿病のケアと予防について情報発信を続けている。
    International Diabetes Federation: Latest Figures Show 463 Million People Now Living With Diabetes Worldwide as Numbers Continue to Rise

  • ・世界初のモノクローナル抗体による黄熱病治療薬が第1相試験を完了
  •  シンガポールTychan社の、ファースト・イン・クラス(従来の治療体形を大幅に変えるような独創的医薬品)のモノクローナル抗体による黄熱病治療薬が、無事にヒトへの第1相試験を終了し、安全性が確認された。モノクローナル抗体とは、目的の抗原のみを培養して作製された、抗原特異性が単一な抗体である。この抗体は、1990年代後半からバイオテクノロジー界に革命をもたらし、がん治療などにも使われる、安定性が高く、免疫増幅効果が期待されるヒット製品として注目されている。

     世界初の黄熱病治療薬「TY014」は、2018年11月にシンガポールのヘルスサイエンス庁にヒトへの試験を承認され、続いてブラジルでも、黄熱病が蔓延する地域において規制当局の承認が下りた。黄熱病は、蚊が媒介する出血性疾患であり、サブサハラ地域、中央・南アフリカの47カ国で発症する、また治療薬のない感染症である。致死率は15%と高く、ワクチンの数が世界的に不足している上、ワクチンによる深刻な副作用も問題になっている。今まで、生物学的・小分子の黄熱病治療薬が臨床試験まで発展したケースはなく、今回初めてモノクローナル抗体による治療によって、感染した患者の症状を改善し、感染を防ぐことができるようになるのではないかと期待されている。

     Tychan社会長テオ・ミン・キアン氏は、「感染症の大流行に備えることが、我々の最終目的である。今回行われた世界で初めての黄熱病治療薬の試験が成功し、ゴールに一歩近づいた」と述べた。TY014は、既に試験を完了しているジカ熱の治療薬「Tyzivumab」と同様、香港のWuxi Biologics社とのジョイントプログラムで開発され、規制当局の承認が下りてから8カ月という異例のスピードで、第1相試験を成功させた。両社は、シンガポールのTemasek Holdings社からの支援を受けながら、感染症撲滅に挑む。
    World's First Candidate Antibody Treatment for Yellow Fever, Developed by Tychan, Tested Safe and Effective in Human Volunteers

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)