慶応義塾大学医学部が主催する「第4回 健康医療ベンチャー大賞」の決勝進出チームが決定した。2019年12月8日に東京都内で開催される決勝大会で、ファイナリストによるプレゼンテーションを実施する。

 ここ数年、医師が自ら起業する例が目立つようになってきている。その流れの中、医学部生の起業マインドの育成に向けたタスクフォースを立ち上げ、2017年に開始したのが「健康医療ベンチャー大賞」だ。社会人部門と学生部門がある。当初は慶応義塾大学に関連があるチームによるイベントだったが、今では募集要件は同大学とのつながりを無関係としている。

以前の「健康医療ベンチャー大賞」の様子(写真:Beyond Healthが撮影)

 前回の第3回健康医療ベンチャー大賞では、社会人部門はIcaria、学生部門はMETRICAが優勝した。いずれもその後、業界内から様々な形で評価されている。

 Icariaは、尿からがんを早期に検出することを目指すスタートアップ。このほど、東芝が血液1滴から13種類のがんを99%の精度で2時間以内に検出する技術の開発を発表したが、そこで着目しているのが血液中に含まれる「マイクロRNA」と呼ぶ分子(関連記事)。Icariaも同様に、マイクロRNAを調べることでのがん検出を目指すが、血液中ではなく尿中に含まれるマイクロRNAを独自デバイスによって分離・回収するのが特徴だ。

 優勝直後の2019年2月には総額数億円前半の資金調達を実施。同年7月に開催された招待制カンファレンスInfinity Ventures Summit(IVS)2019 Summer Kobeのスタートアップ・ピッチコンペ「LaunchPad」でも入賞を果たしている(関連記事)

 学生部門のMETRICAは、「エッジコンピューティング×AI」によって医療・介護現場のワークフロー改善を目指している。ベンチャーキャピタルであるライフタイムベンチャーズが2019年に設立した最大10億円規模の2号ファンドの投資先として、同社は高く評価している(関連記事)

決勝進出は社会人・学生それぞれ3チームずつ

 今回の決勝進出チームは次の通りだ(社名またはチーム名)。

<社会人部門>

■FORWARD
介護保険で作成されるケアプランとそれに付随する介護者のフィードバックを投稿・共有できるサービスを構築。介護生活に関する情報を蓄積し、それを閲覧することで介護における不安の排除を目指す。同時に、ケアプランのセカンドオピニオンを提供し、介護家族の介護の知識の少なさを補いながら、専門家による意見によって介護への不安をなくす。

■グレースイメージング
乳酸を汗から連続計測可能なウエアラブルデバイスを開発。現在、同デバイスを用いた心臓リハビリテーションにおける実証試験を始めている。今後、スポーツ領域において、疲労度計測することで怪我の予防につなげたり適切な筋負荷でのトレーニングを実施したりする実証試験を予定している。

■Welloop
脳卒中などの後遺症によって体の半分に麻痺が残ってしまう片麻痺者用の杖を開発。市販されている杖は体を支えることだけに特化したものばかりで、片麻痺者特有の歩き方に合わせて設計されているものがなかったが、専用の杖によって片麻痺者が生涯「ずっと歩き続ける」ことを目指す。

学生部門の決勝進出は…

<学生部門>

■GramEye
グラム染色画像の菌株同定を機械学習で行うスマホアプリGramEyeと、染色を自動で行うロボgetgramを開発。菌株同定のハードルを下げ、抗菌薬が適正に利用されることにより、薬剤耐性菌の発生を防ぐ。将来的には、どの菌が発生したかをトラッキングすることで、世界中で起こるパンデミックをリアルタイムモニタリングすることを目指す。

■SpinLife
贈り物の文化があるチョコレートに着目し、完全栄養のチョコレートを開発。摂食嚥下障害による栄養状態の悪化は患者のQOLや治療効果の低下を導くことや、既存の栄養剤は食事としての楽しみを考慮しておらず患者や高齢者が一般社会から疎外感を感じる要因となっている現状の課題の解決を目指す。

■プロジェクトPOST
ポケット言語聴覚士「post」の開発。日本に100万人いる成人吃音者。社交不安障害を発症したり自殺を考えたりする人も後を断たないという。しかし、吃音を診てくれる医療機関や医療従事者が圧倒的に不足している現実がある。この社会課題に対してテクノロジーの力での解決を目指す。

(タイトル部のイメージ:monsitj -stock.adobe.com)