人工知能(AI)技術を用いて心電図波形を分析することで、心房細動の発症リスクが高い患者や1年以内に死亡するリスクが高い患者を同定できる可能性があることが、米国のグループによる2件の研究で示された。これらの研究結果は、米国心臓協会の年次集会(AHA 2019、11月16~18日、米フィラデルフィア)で発表された。

 研究グループは、過去30年間に収集された200万件以上の心電図データを用いて、心電図所見から将来のイベントを予測する「ディープニューラルネットワーク(DNN)」を開発した。

 一つ目の研究は、心房細動が検出されなかった23万7,000人を超える患者の心電図データ110万件を使用し、このDNNによる心房細動の予測精度を検証したもの。なお、心房細動は心筋梗塞や脳卒中リスクを高めることが知られている。

 その結果、DNNによる心房細動リスクの予測で上位1%だった患者のうち、3人に1人は1年以内に心房細動と診断されたことが分かった。また、1年以内に心房細動を発症すると予測された患者は、他の患者と比べてその後25年間に心房細動を発症する確率が45%高いことも明らかになった。

 研究グループの一人で、米ガイシンガー・ヘルス・システム心臓画像技術研究所のChristopher Haggerty氏は、どの患者が心房細動を発症するのかを判別するのは困難で、脳卒中を発症して初めて心房細動に気付くケースも少なくないと指摘。「このAIモデルを活用すれば、心房細動を早期に発見して治療することで脳卒中の予防につながるのではないか」と期待を寄せている。

 また、約40万人の患者から収集した177万件の心電図データを含む医療記録を用いた二つ目の研究では、DNNは他の機械学習モデルと比べて1年以内の全死亡の予測精度が高いことも示された。医師が心電図判読で正常と判定した患者においても、DNNは1年以内の死亡リスクを正確に予測できたという。

 研究グループの一人で同研究所のBrandon Fornwalt氏は、「これは素晴らしい結果だ。医療の現場では、医師とコンピュータが連携して患者ケアの向上を目指す“医療の変革期”を迎えようとしているが、そのことを支持するエビデンスが得られた」と話す。一方、二つ目の研究論文の筆頭著者である同研究所のSushravya Raghunath氏は「これらのモデルをルーチンの心電図データ分析に組み込むのは簡単だが、コンピュータの予測に基づいて適切な治療計画を立てることは大きな課題になるだろう」と強調している。

 研究グループは現在、AIで心房細動を予測することで心血管の健康状態を改善できるかどうかを調べる研究を進めているという。

 なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

[HealthDay News 2019年11月12日]

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