新年を迎えたヘルスケア業界に、常識を覆す新たなビジネスモデルやサービスが続々登場しています。健康な免疫細胞を預けて未来の病気に備える「幹細胞バンク」や、個人の能力を活用して各地にヘルスケアを届ける「バックパッカープロジェクト」、アシストロボットを身に付けて自宅で手足のリハビリができるビデオゲーム「エクソスケルトン」など、あちこちで人を元気にするイノベーションが起きています。また「バイタルモニタリングアプリ」や「オンライン健康診断」などの健康管理ツールが昨年に引き続き増え、未来のヘルスケアは医療者から患者へ提供するという従来の図式から、各自がスマートフォンなどで健康を自己管理するものへと変わっていきそうです。

 一方で、メンタルヘルスケアの話題も多く、『ストレスなく生きるためのバイブル』という、セラピストによる著書が注目されています。World News Digestでは2020年も、外の世界に広く目を向け、従来の常識を覆すような革新的なテクノロジーの登場を見逃すことなく、激動するヘルスケアの明日を追いかけていきます。


以下では、2019年12月30日~2020年1月3日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・将来の免疫治療のため健康な免疫細胞を預かる「幹細胞バンク」
  •  細胞・遺伝子治療における自動細胞処理ツールやサービスを提供する、米国のThermoGenesis社とHealthBanks Biotech社が、ジョイントベンチャーを立ち上げた。ImmuneCyte Life Sciences社で、健康な消費者の免疫細胞を保管し、将来的に免疫治療が必要になった時に活用できるサービスを提供する。ThermoGenesis社の特許登録済みの自動細胞処理プラットフォーム「CAR-TXpress」と、HealthBanks社のグローバルな幹細胞バンクシステムを掛け合わせ、未来の新たな医療ビジネスモデルが展開される。

     健康な消費者の免疫細胞は、ThermoGenesis社が独自に開発したCAR-TXpressを用いて150~200mLの末梢血から分離され、取り出される。細胞・遺伝子治療において品質管理の徹底は不可欠だ。ImmuneCyte社の幹細胞バンクはこの最新鋭のプラットフォームを活用し、免疫細胞処理の機能を独立させることに成功、またcGMPと呼ばれる「現行医薬品適正製造基準」に準拠することで、細胞処理に世界初の安全性を実現させた。

     新年早々、ある民間企業がImmuneCyte社と300万ドルの株式投資に合意し、A種普通株式60万株を1株当たり5ドルで受け取ったと発表した。合弁会社設立後間もなく高額の株式投資合意が実現したのは、ThermoGenesis社が提供するテクノロジーの信頼性と新たなビジネスモデルの高い潜在性があるからこそ。今回の投資により、細胞・遺伝子治療ビジネスの長期的な成長と新たな価値創出に期待がかかる。
    ThermoGenesis Holdings Announces That ImmuneCyte Joint Venture Receives $3.0 Million Equity Investment

  • ・バックパッカーを活用するeHealthプロジェクト
  •  スウェーデンのBraineHealth社は2020年、eHealthに関する複数のプロジェクトを開始すると発表した。eHealthとは、耳慣れない言葉であるが、「IT技術を積極的に医療に導入することで個人の健康を高める」取り組みを意味する。早速、BraineHealth社のeHealthプロジェクトの内容を幾つか見てみよう。

     一つは、「Diagnosio」というAI(人工知能)のプラットフォームだ。患者が自分の体の症状を説明すると、過去の診断や問い合わせを記録した巨大なデータベースと照合して正確な評価とオンライン診断が提供される。二つ目は、糖尿病を管理する「Diagnosio」というロボティックプラットフォーム。そして、三つ目は「Medipacker」という面白いプロジェクトだ。これは、人の役に立ちたいと願う旅行者が無料で登録し、自分のスキルと能力を生かして訪問先のコミュニティーのヘルスケアに貢献するサポートや資格を提供するという斬新なプロジェクトだ。各プロジェクトの詳細は、同社のウェブサイトから参照できる。

     BraineHealth社の目標は、世界中の医療システムと医師、そして患者をつなぐ橋となり、在宅の患者に診断や医療に関するアドバイスをたったの数分で提供することだ。患者の医療費削減と、インターネットを介した高品質の医療提供を目指す。オンライン診療が一般的に普及するのは遠い先の未来のように思われるが、既に同社はスウェーデンで様々なパイロットプロジェクトを導入し、着々と実績を重ねている。高齢者や精神疾患患者などを含む全てのヘルスケアにもっと一人ひとりが積極的に参画できる世界を目指す、eHealthによる革命はまだ始まったばかりだ。
    BraineHealth - Leveraging Digital Technologies to Revolutionize Healthcare

  • ・喫煙者は採用面接で落とされる時代に
  •  従業員の健康を推進するビジネスリーダーである米U-Haul International社は、世界で初めて「ニコチンユーザー」、つまり喫煙者を採用しない方針を固めた。この「ニコチン・フリー」に関する採用ポリシーは、2020年2月1日から米国の21の州で施行される。既に雇用されている従業員はポリシーの対象からは除外されるそうだ。

     U-Haul社は、アリゾナ州の州都であるフィーネックスに約1.6万m2の広さの会議・フィットネスセンターを建設し、米国とカナダで最も健康的な企業としてイメージアップを図る。「健康」を企業文化のキーワードとして掲げ、アリゾナの最優秀人材の獲得を狙う。スタッフチーフのジェシカ・ロペス氏は、「従業員の健康増進のための投資は欠かせない。ニコチン製品には依存性があり、様々な病気を引き起こすリスクとなっている。喫煙者を採用しないポリシーは、我が社の健康な企業文化を推進し、従業員の健康増進に役立つ」と語る。 

     U-Haul社の従業員は米国とカナダを合わせて3万人に上る。アリゾナ州を含む21の州では、ニコチン製品使用者の採用を拒否することが既に合法化されている。21の州には、フロリダ、ハワイ、カンザス、マサチューセッツ、テキサス、ワシントンなどの州が含まれる。U-Haul社は、従業員に「Healthier You(もっと健康になろう)」と呼ばれる福利厚生プログラムを提供し、例えば昔からの従業員に対する禁煙サポートや、ジムの費用負担、食事療法、オンラインヘルスポータルなどで健康を支援している。「従業員を大切に扱うと、従業員は顧客を大切に扱うようになる」とロペス氏は付け加える。これから、入社面接の際、「煙草を吸いますか?」と聞かれニコチン検査をされることが、採用の常識になるかもしれない。
    U-Haul to Implement Nicotine-Free Hiring Policy for Healthier Workforce