将来、眼科医は、患者が眼に装着したコンタクトレンズ型のウェアラブルデバイスを用いて眼の健康状態を管理するようになるかもしれない――。そんな「スマートコンタクトレンズ」の実現を感じさせる初期段階の研究の結果を、蔚山科学技術大学校(韓国)教授のSang-Young Lee氏らが「Science Advances」12月6日号に発表した。

 Lee氏らは今回、視力障害の兆候をモニタリングしたり、点眼薬の投与を助けたりすることを目的として、微小な電子回路とバッテリー、アンテナを搭載したソフトコンタクトレンズを作製。その試作品をウサギとヒトに使用する概念実証(proof of concept;POC)研究を実施した。

 Lee氏によると、スマートコンタクトレンズは視力の矯正と同時に電子デバイスを作動させる役割も担う。また、理論上、このようなデバイスを用いて涙液を継続的にスクリーニングすることで、緑内障や糖尿病などの兆候を早期に捉えられるようになるという。なお、このスマートコンタクトレンズは、装着した時に眼に刺激を感じたり、熱による不快感や視野障害が生じたりしないように、一般的なソフトコンタクトレンズと同じくらい小型で、柔軟性があるように作製された。

 それを可能にしたのが、「直接インク書き込み法(direct ink writing)」と呼ばれる最先端の3Dプリント技術だ。この技術によりコンタクトレンズの外縁に超極薄のペーストで複数の微小な電子回路が重なっている層を追加。ペーストの部分はミニチュア版のエネルギー貯蔵システムとして働く「固体スーパーキャパシタ(蓄電器)」になるという。このキャパシタがあるおかげで常にワイヤレスで充電でき、コンタクトレンズの外縁まで張り巡らされた超極細繊維のナノファイバーに電力が供給される仕組みになっている。

 「最終的にはかさばらず、硬くもなく、余計な熱も放出しないスマートコンタクトレンズが完成した」とLee氏は説明。また、「1週間にわたって涙液に曝露しても、内蔵した電子回路の機能に問題はなかった」としている。