人工知能(AI)が人間よりも正確にマンモグラフィ検診の画像(マンモグラム)から乳がんを識別できる可能性を示した研究結果が報告された。この研究は米Google社が英Cancer Research UK Imperial Centreや米ノースウェスタン大学など英国および米国の複数の研究機関と共同で実施したもの。研究グループは以前からマンモグラフィ検診による乳がん検出率の向上を目的としたAIモデルの開発に取り組んでいる。今回明らかにされたのはその初期段階での結果であり、「Nature」1月1日号に掲載された。

 マンモグラフィ検診は乳がんの早期発見に有用だが、確実に全てのがんを発見できるわけではない。米国がん協会(ACS)は、マンモグラフィ検診で乳がんが見落とされる確率を約20%と推定している。また、10年にわたって毎年マンモグラフィ検診を受けた場合、いずれかの時点で、がんではないのに誤って陽性とされる偽陽性の判定を受ける確率は約50%に上るという。

 研究グループは今回、乳がんの定期検診を受けた英国人女性7万6,000人以上と米国人女性1万5,000人以上のマンモグラムから成るデータセットで腫瘍の兆候など重要な乳がんの特徴を学習させたAIモデルを構築。その後、別の非特定化したデータセット(英国人女性2万5,000人以上と米国人女性3,000人以上)でこのAIモデルを評価した。

 その結果、専門家による判定と比べAIモデルでは、偽陽性率が英国では1.2%、米国では5.7%、それぞれ低下した。また、がんが存在するにもかかわらず陰性と判定される偽陰性率も、英国では2.7%、米国では9.4%、それぞれ低下した。

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 これらを踏まえ、研究グループの一人であるノースウェスタン大学のMozziyar Etemadi氏は「素晴らしい結果だ」と評価するが、医療でのAI活用に関する研究はまだ初期段階であることを強調。また、AIは人間の代わりとなるものではなく、医師による診断の効率化や精度の向上を高めるためのツールとして位置付けられるものだと説明し、「例えば、放射線科医による読影は撮影された順番ではなく、AIで乳がんが疑われる所見があると判定されたマンモグラムを優先して行うなどの活用法が考えられる」としている。

 なお、今回の研究では、AIモデルによって偽陽性率と偽陰性率が低下することが示されたが、特に米国のデータセットでこれらの低下度が大きかった。その理由について、Etemadi氏は「明確には分からない」としながらも、「英国では、2人の放射線科医がマンモグラムの読影を行うのが標準であるため、全般的な精度が高いのではないか」との見方を示している。

 AIが特定の種類のがんを人間よりも正確に診断できる可能性は、これまでにも複数の研究で示唆されている。例えば、ある研究ではメラノーマと良性のほくろを識別する精度は皮膚科医よりもAIの方が高いことが示されている。また、リンパ節の検体から腫瘍細胞を検出する精度についても病理医と比べてAIの方が高かったとする報告もある。

 今回の報告を受けて、北米放射線学会(RSNA)のスポークスパーソンで、米ロチェスター大学のStamatia Destounis氏は、AIで全てのがんを検出できたわけではないこと、また偽陽性率が0%ではないことなどを指摘し、「このAIモデルが現実世界でも有用かどうかは現時点では不明だ」とする。その一方で、同氏は「AIが、放射線科医ができるだけ早期の段階で乳がんを検出するのに役立つツールとなることに希望を抱いている」と話し、将来的にAIが臨床で活用されることに対する期待を示している。

[HealthDay News 2020年1月3日]

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