胃がんの手術で胃を取った後に、低栄養や貧血、ダンピング症候群と呼ばれる併発症が生じ、大腸がんリスクも高まることが知られています。それらの要因に腸内細菌叢の変化が関係していると、東京工業大学や大阪大学、慶應義塾大学、国立がん研究センター中央病院のグループが1月17日に発表しました。

 ヒトの腸管内には、全細胞数約37兆個を超える約40兆個、1000種類以上の腸内細菌が共生しており、食餌成分の分解・吸収を助けています。例えば、善玉菌と呼ばれる乳酸菌やビフィズス菌は、ヒトが分泌する消化酵素だけでは分解できない繊維質を乳酸や酢酸、酪酸などの短鎖脂肪酸に分解し、エネルギー源に変えます。産生された短鎖脂肪酸は腸壁を刺激して蠕動運動を活発にします。さらに、免疫臓器としての腸管上皮に抗原刺激を常時与えることにより、腸管局所のみならず全身の粘膜免疫機構にも重要な役割を果たしており、その乱れは炎症性腸疾患など様々な疾患と関係することが分かってきています。

 東工大らの研究グループが、健常者と胃切除術を受けた患者の便検体中の腸内細菌のゲノムや代謝物質を分析したところ、胃切除患者では健常者に比べて、腸内細菌の種がより豊富で多様性に富んでいることが確認されました。大腸がん発がんとの関連性が報告されている細菌や、肝臓がんおよび散発性大腸がんで発がん性が知られている代謝物の量が、胃切除後患者に多いことも明らかになりました。研究グループは、「この成果は、胃切除後の併発症の要因を理解し個々人の腸内環境を評価することで、胃切除後の併発症の予防や治療に貢献する医薬品などを生み出す可能性を示すもの」だとしています。

 今回の研究は胃切除後の病態を対象にしたものですが、得られた知見は、他の疾患や病態についても治療後の腸内細菌叢の変化が予後に関係することを示唆しています。便検体を用いた腸内環境評価や、それらを改善する医薬品や健康食品の可能性に今後注目が集まりそうです。(大滝隆行=Beyond Health)


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