CTデータから骨折リスクを計算するアルゴリズム開発

【プロダクト/サービス】

  • ・痛みをゼロにする新脊髄刺激デバイス
  •  米国オハイオ州にあるバイオテクノロジー企業Soin Neuroscience社は、慢性的な疼痛を和らげる、新たな脊髄刺激デバイスを開発し、臨床試験を開始した。同社の設立者であるアモル・ソイン博士は、「慢性的な疼痛を患う患者を治療する、新たなプログラムにワクワクしている。既存のスタンダードを上回る効果に期待している」と意欲を示す。異常を来した神経機能に対し、微弱な電気刺激を行うことで症状の改善を図る治療は「ニューロモデュレーション」と呼ばれ、パーキンソン病や難治性の疼痛の新たな治療法として注目されている。

     Soin Neuroscience社のこの医療デバイスは、脊柱の中の硬膜外腔という部位に、「電極リード」と呼ばれる電気ワイヤーを植え込んで電気刺激を与え、患者の痛みを和らげる脊髄刺激療法(SCS)に使用される。試験では複数の患者がデバイスを試し、効果を実感したと語る。その中の1人、メルビンさんは、過去に別の脊髄刺激デバイスを試した時は効き目を感じなかったが、今回のSoin Neuroscience社の新規デバイスを使ってみたところ、痛みのスケールスコアが10点中0~2点のレベルまで軽減されたと語る。また、今まで痛くてできなかった長時間の立ち姿勢が可能になったという。その他にもロビンさんは、試験の最中に痛みのスコアが0点まで下がるのを経験し、「今まで治療のために背中に注射を打っていたが、それに比べるとこのデバイスは非常に快適だ」と語る。

     まだ試験は始まったばかりではあるものの、ソイン博士は「痛みを抱える患者にとって素晴らしい結果が出そうだ。我々の新たなデバイスは、体の神経の情報伝達メカニズムに合わせて設計されている」と、確かな手応えを示す。このデバイスはまだ米食品医薬品局(FDA)に承認されておらず、商用化はこれからだ。同社はこれまで様々な痛み止め薬品開発に成功してきており、今回のニューロモデュレーションデバイスは、依存性の高いオピオイド不要の新たな製品分野開拓につながる。
    Soin Neuroscience Develops A New Spinal Cord Stimulator to Treat Chronic Pain

  • ・いつものCT画像で骨粗鬆症性骨折リスク分析
  •  イスラエルのZebra Medical Vision社とClalit Health Services社が共同研究を行い、患者の既存のCTデータから、将来骨粗鬆症性の骨折が起きるリスクを計算するアルゴリズムを開発した。事前にリスクが分かれば、患者は予防治療を早期に開始することが可能になる。このアルゴリズムが今、世界中のヘルスケアプロバイダーから注目を集めている。

     本アルゴリズムの利点は、他の目的のために取得したCTデータを使って、骨密度や圧迫骨折の兆候を計測することができる点だ。データは既に手元にあるため、追加の撮影も放射線照射も不要だ。Zebra Medical Vision社の骨密度評価技術がClalit社の研究チームの精密な骨折リスク予測技術と組み合わさり、AI(人工知能)を活用した骨折リスク計算ができる仕組みだ。現在、骨折リスクを評価するツールとして最もよく知られているのは「FRAX」であるが、今回開発された新たなアルゴリズムの精度の方が高い。また、FRAXを利用するには多くの医療データが必要なため、利用を広げにくいという課題があった。

     米国では50歳以上の女性のうち3人に1人、男性は5人に1人が骨粗鬆症性の骨折を経験するといわれている。腰の骨の骨折後1年以内に死亡する確率は20%以上と高い。さらに、年間およそ180億ドル(約1.96兆円)が骨粗鬆症に関連する医療費に使われ、大きな財政負担となっている。骨粗鬆症の検査を受ける人の数は少なく、正しい診断も治療も行き届いていないのが現状だ。分析能力とビッグデータ技術を駆使して健康増進につなげることができれば、AIの医療活用の良い例となるだろう。
    New Study Published on Nature Medicine Unveils the Power of AI in Predicting Osteoporotic Fractures

  • ・難治性白血病の原因物質を阻害する新薬
  •  米国とオーストラリアが国際的なコラボ研究を行い、リスクの高い白血病を治療する新薬を発表した。米Oncotartis社とオーストラリアChildren’s Cancer Instituteは血液悪性腫瘍の専門誌『Leukemia』において、2つの研究論文を掲載した。テーマは、Oncotartis社の新薬候補である「OT-82」について。血液悪性腫瘍は、成人、子供ともに従来の治療に抵抗性があり、死に至る確率の高い病気である。今回、米国のバッファローと豪州のシドニーの2カ所で行われた共同研究で、これまで治療が不可能といわれてきた血液悪性腫瘍患者に対し、効果の高い新たな新薬の可能性が打ち出された。

     1つ目の文書には、難治性白血病やリンパ腫に対するOT-82の作用のメカニズム、中毒性、臨床前の効能について書かれている。ニコチンアミド・ジヌクレオチド(NAD)という、細胞の中にある代謝とストレスのメカニズムの中の重要な部分があるが、その値の上昇が、体の造血システムの悪性腫瘍と深い関わりがあることが特定された。OT-82には、NAMPTという酵素を阻害する物質が含まれ、NADの生成を抑制する効果がある。OT-82は現在米国で第1相試験を実施中だ。

     二つ目の文書には、Children’s Cancer Instituteが行った、世界有数の小児白血病研究について書かれ、従来の小児白血病の治療とOT-82の効果を比較している。OT-82は単体でも治療効果が認められるが、従来の治療と合わせることでさらに効果が高まることが分かっている。成人のみに実施された臨床試験の成功を受け、難治性白血病を患う子供を対象とした試験がこれから行われる見通しだ。Oncotartis社のチーフサイエンティフィック・オフィサーであるアンドレ・グドクフ博士は、「NAMPTを阻害する物質が、がんだけでなく、血液の悪性腫瘍にも有効であることが初めて判明した。今後OT-82を使った治療の可能性に期待している」と語る。難治性の小児白血病患者の治療の選択肢はまだ少なく、新たな治療が早急に求められている。化学療法と比較し、副作用が少ない点でも、OT-82の意義は大きいとして、治療の実現が待たれる。
    International Research Collaboration Reveals Promising Drug Candidate for Treatment of Blood Cancers