世界保健機関(WHO)が「国際緊急事態」を宣言した新型コロナウイルス(2019-nCoV)の感染拡大。現在までに1万人超の感染が確認され懸念が広がる中、様々な団体や企業が対策に取り組んでいます。シンガポールNGL社は、ウイルスが発生した中国・武漢市をはじめその流行地域の医療施設にマスク100万個を無償提供。米国企業のウイルス防護服は、着ている人の体温を計測し、さらに身体を冷やす機能を新たに搭載、ウイルス感染の早期検知・隔離を支えます。中国では8万人分の新型コロナウイルス抗体を製造する施設が整い、遠方の地域における感染を都市部の医療専門家が遠隔診断できる最新の5G技術の活用も急速に進んでいます。国際連携とテクノロジー開発が一気に進み、次なる危機に備える体制が強化されるのを感じます。


以下では、2020年1月27~31日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・発熱を検知して感染を早期発見するウイルス防護服
  •  新型コロナウイルスとの闘いが続く中、患者や医療スタッフをウイルス感染から守る新たなテクノロジーが活躍している。米Radiation Shield Technologies(RST)社の「Demron Chemical Biological Radiological and Nuclear」スーツには、特許取得済の熱伝導機能が搭載されており、スーツを着ている医療スタッフの体温を外からモニタリングし、感染の最初の兆候である発熱をいち早く発見することができる。また、ウイルスに感染した患者を感染者移送ユニットで搬送する際、スーツを着せて体温をモニタリングしながら、身体を冷やすこともできるという。チェコ共和国のMasaryk大学で、現在この分野の実験が行われているところだ。

     化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)の頭文字をつなげたCBRN(シーバーン)という言葉がある。Demronは、世界で唯一CBRNから人を保護しつつ、外部温度をモニタリングできる素材からできている。Demronは米軍、米国CSTチーム、FDNY、IAEC、DSTA、NASA、その他世界各国の軍隊で使用されている人気製品。Demronの素材には熱を発散して分解する能力があり、外部の温度を管理・モニタリングできる。接触せずに温度を計測できるように設計された赤外線温度計が、スーツを着用している各医療スタッフの基礎体温をチェック。その後、管理者が患者の移送作業に励むスタッフの体温をランダムに外から測り、感染の早期発見につなげることができる。

     RST社は過去20年以上、軍隊や消防士、法律や医療スタッフ向けに、危機的状況に対応する高性能素材のDemron製品を提供し続けている。この技術を開発したRST社のCEOロナルド・デメオ博士は、「新型コロナウイルスの患者、そして感染を防ぐために闘う医療スタッフの安全を守るための貢献を続けたい」と語る。
    Coronavirus: New Gear Offers Protection For Patients And Healthcare Workers

  • ・8万人分の新型コロナウイルス抗体を製造する施設
  •  中国のオープンアクセス生物テクノロジープラットフォーム企業、WuXi Biologics社。生物学的発見や開発、製造のエンド・ツー・エンドソリューションを提供している。このたびWuXi Biologics社は、自社の統合型テクノロジープラットフォームを活用し、新型コロナウイルスを中和する抗体を複数開発するために立ち上がった。グローバルなバイオテク企業から集まった抗体には、新型コロナウイルスを中和する効果があることが予備研究で証明されている。

     WuXi Biologics社は100人以上のR&D(研究開発)チームを結成し、抗体の開発と製造に専念している。最初の抗体は2カ月後に生産を開始する計画で、毒物学の予備研究と人への最初の臨床試験が始まる。研究に引き続き、同社の4カ所のGMP施設(製造管理および品質管理に関する基準を満たした施設)にて、抗体の大量生産の準備が整う。全ての施設を合わせると、8万人の患者を治療する抗体が製造可能だという。

     同社CEOのクリス・チェン博士は、「ウイルスが猛威を奮う中、WuXi Biologics社は感染症の分野の豊富な知見を活用し、複数の抗体の開発を加速させるべく、早急に取り組みを開始した。今まで1年から1年半かけて行ってきたDNA解析からIND(臨床試験実施申請)までを、品質を保ちつつ4~5カ月以内に完了したい。新型コロナウイルスを効果的に、早急に撲滅することを目指す。そのために、我々は海外と国内のバイオテク企業や病院、医療機関、その他様々な団体と協力し、ウイルスとの闘いに勝利する」と語る。

     WuXi Biologics社の独自のテクノロジープラットフォームにより、世界で初めて黄熱病の抗体と、ジカ熱の抗体のCMC(製剤の化学・製造・品質管理)の非臨床試験が、それぞれ最速の7カ月と9カ月で完了した。新型コロナウイルスの抗体開発と製造のスピード競争に世界が注目している。
    WuXi Biologics Enables Development of Multiple Neutralizing Antibodies for Novel Coronavirus

  • ・マスク100万個を中国の医療施設に無償提供
  •  シンガポールのNovena Global Lifecare(NGL)社は、アジア太平洋地域の主な20都市に250以上の医療クリニックを展開する、アジア最大の医療・美容関連企業の1社だ。中国・武漢市を中心に広がっている新型コロナウイルス流行地域の医療施設に100万個のマスクとその他の医療用品を寄付することを発表した。北アジア地域に強い影響力を持つ同社の子会社Novena Bellagraph Healthcare社が先導し、中国における新型コロナウイルスとの闘いに支援の手を差し伸べる。

     NGL社は、中国の非営利組織である児童保険特別基金と上海瑞金委員と協力し、武漢市金銀潭医院に緊急医療サポートチームを送る予定だ。また、上海の疾病対策センター(SCDC)とともに、海外の支援機関から医療品を配送するサポートを行う。中国ではウイルスの感染拡大に伴い、市民がマスクや手袋、消毒液の大量買いに走る中、医療用品が著しく不足する非常事態となっている。

     WHOが新型コロナウイルスを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)と宣言すると同時に、NGL社は医療用品の寄付を開始した。この緊急事態宣言は、世界の医療機関がウイルスを撃滅する対策としてモニタリングや対応措置を開始することを推奨する。また、各国政府が支援金や人材などのリソースを調達し、市民に対してガイダンスを提供することを求められる。

     NGL社の創業者兼会長であるネルソン・ロー氏は、「新型コロナウイルスの大流行から、世界はつながっており、人類は同じ一つの小さな村の住民であることを改めて実感した。アジアのヘルスケア企業の1社として、我が社はウイルスにさらされるリスクを最小化することを目指す。この取り組みに他の多くの企業が参加することに期待している」と協力を呼び掛けた。まさに爆心地で医療活動を行っている武漢市の医療スタッフを保護し、1日も早く新型コロナウイルスを除去して感染を止めることが不可欠だ。
    Singapore's Novena Global Lifecare donates one million masks & other medical supplies to support fight against coronavirus in China