新型コロナウイルス(COVID-19)感染症への対策に世界の企業が動いています。中国StoneWise社は、自社の創薬研究AIデータベースを無償で提供し、製薬企業の活動をサポート。1日も早いCOVID-19治療薬の登場が待たれます。韓国Seegene社は、COVID-19の検査を1日10万件まで処理できるアッセイを開発。感染者の早期特定と隔離でCOVID-19感染の拡大を抑えます。タイの空港には、ウイルス感染者の発熱を画面で知らせるバイオメトリック出入国管理システムが設置されました。その他にも、医療用コンピューターガラスの抗菌化や、薬剤感受性テストを自動化して抗菌薬を素早く選定できるツールなど、感染症の広がりを予防、特定し、対策を立てるための様々な技術開発が進んでいます。


以下では、2020年2月17~21日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・AI創薬プラットフォームで新型肺炎治療薬を開発
  •  中国StoneWise社が、新型コロナウイルス(COVID-19)の治療薬を選定するキャンペーンを行い、様々なRNA(リボ核酸)に対する1400個以上のヌクレオチド抑制因子の電気構造データを公開した。AI(人工知能)で、これらの分子の中から多数のヌクレオチドを優先付けし、新型肺炎を引き起こすSARS-CoV-2 のRNAポリメラーゼ阻害薬として使用できる可能性を探る。同社は2018年に設立された創薬研究所だ。AI、マイクロ流体力学などの最先端技術を用い、薬理学、臨床医学、計算科学と計算生物学を掛け合わせ、製薬会社に統合的な創薬ソリューションを提供し、製薬業界の研究開発を後押しする。

     中国国家医療製品管理局(NMPA)は複数のCOVID-19治療薬の臨床試験を迅速に承認した。特に注目されているのは、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、エボラウイルスにも効果があり、安全性の高さを認められている「Remdesivir(GS-5734)」という治療薬だ。もちろん、新型コロナウイルス肺炎を引き起こすSARS-CoV-2は、SARSやMERSなどと全く同じというわけではない。独自の薬物特性を要求し、独自の薬物耐性を持つ可能性があるため、SARS-CoV-2特有のプロファイルを持つRdRp阻害剤を開発する必要がある。

    StoneWise社が公開した分子ライブラリの一部(出所:StoneWise社プレスリリース)

     過去数十年の間に、様々なウイルスに対するRdRp阻害剤となる低分子ヌクレオチドが多数合成され、分子の有効性と毒性に関する研究が進んだ。GS-5734を含むStoneWise社の分子ライブラリは、新型コロナウイルスの治療成分となるSARS-CoV-2にぴったり適合する分子を発見するためのリソースとして、高い潜在価値を持つ。StoneWise社は、自社の研究の進捗状況と関連データを共有することで、COVID-19治療の基礎研究に大きく貢献することを目指す。AIによって基礎研究が成熟すれば、新型コロナウイルスや将来発生し得る新たなウイルスに対して、より強固で充実した対応戦略を立てることが可能になる。
    StoneWise AI-driven Drug Discovery Platform: Investigation and Repurpose of Nucleoside-based RNA Polymerase Inhibitors and Their Potential Use in COVID-19 Infection Treatment

  • ・10万人検査できるアッセイ、最悪のシナリオに備える
  •  韓国Seegene社が新型コロナウイルス(COVID-19)の新たなアッセイ(評価・分析システム)を開発した。韓国食品医薬品安全庁(KFDA)から承認が下り、緊急時における使用が認められた。また、CE-IVDマーク(体外診断用医療機器)を取得し、2月18日に韓国をはじめ世界各国で販売が開始された。

     COVID-19感染の世界的大流行を防ぐためには、正確で迅速な診断と治療が必要だ。Seegene社が開発したのは、「Allplex 2019-nCoVアッセイ」と呼ばれる、1つのチューブを使うアッセイ。世界保健機関(WHO)が推奨する国際プロトコルに基づき、3つの異なる遺伝子(E遺伝子、RdRP遺伝子、N遺伝子)をターゲットとするアッセイだ。1つのチューブで3つの検査を同時に行うことができるため、従来の複数のチューブを使用する検査法に比べ、ワークフローの大幅な効率化につながる。大量の試験を行う処理能力を最大化しつつ、検査費用を最小限に抑えることができる。

     Seegene社のアッセイには自動分析ソフトウェア「Seegene Viewer」が組み込まれている。今後感染症が大流行し、1日に何千件もの検査を行わなければならないようなシチュエーションに陥ったとしても、4時間で検査結果を出すことができる。他にもSeegene社が提供する呼吸器官アッセイと併用すれば、呼吸器に感染する19種類のウイルスと7つの細菌性肺炎の症状のわずかな違いをそれぞれ見分け、正確かつ迅速に診断ができる。このアッセイはCOVID-19の検査を1日10万件実施することが可能だという。

     Seegene社の創業者でありCEOのジョン・ユン・チュン博士は、「新たに発生したウイルスと対決するため、我々の分子診断技術を使って国際社会に貢献したい。世界の医療機関が必要とする本ソリューションがKFDAに承認されたことは喜ばしい」と述べた。ウイルスに感染したら治療開始は1秒でも早い方がよい。検査のキャパシティーを最大化し、最悪のシナリオに備えることが肝心だ。
    Seegene launches KFDA Approved COVID-19 Assay

  • ・新出入国管理システムがウイルスをシャットアウト
  •  世界各国を飛び回ることが可能になった現代。ウイルスもいとも簡単に国境を越え、グローバルな大流行(パンデミック)を繰り広げることが可能になった。生体認証を用いるバイオメトリック出入国管理システムが普及する中、ドイツのDERMALOG社は新たな「発熱検知システム」を導入した。旅行者自身が運び屋となり、国境を越えてウイルスを持ち込むのを防ぐ効果を強化する狙いだ。

     このシステムを最初に試験的に実装したのは、タイだ。バンコクのDon Mueang国際空港で、タイ入国管理局次長のポル・マジェン・スラポン・チャイチャン氏が本システムのデモンストレーションを行った。このシステムを使うと、指紋と顔写真認証を行うだけでなく、カウンターを通る人の体温も測定できるようになる。体温は入国審査官のスクリーンに映し出され、発熱している人を見つけたら直ちに健康チェックに回すことができる。他にもDERMALOG社は特別な熱感知カメラを提供し、それを使うと出入国管理カウンターから1.5m以内に立っている人の体温も目視でチェックできる。

     海外旅行者は必ず出入国管理カウンターに立ち寄るため、発熱チェックを行うには打ってつけの場所である。複数の人の体温を同時に捉えるカメラ機能でまずは感染者を一次スクリーニングし、その次に新たなバイオメトリック管理システムが体温の数値を割り出してウイルス感染者を1人残らず洗い出すことができる。国境をガッチリ守って新型コロナウイルスの侵入を防止するツールで、パンデミックを防ぐ。
    DERMALOG Provides the World's First Biometric Border Control System With Integrated Fever Detection