新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界的に拡大するなか、既に感染しているのに顕著な症状がないため気づいていない「隠れ感染者」が、実は何千人もいるのではないかとの推測もなされています。COVID-19 qPCR検出キットを販売する米国企業はウイルスの拡散を防止するため、各地域の関係施設でCOVID-19の検査を実施しよう、というキャンペーンを始めました。

 光エレクトロニクスをご存じでしょうか。電子工学と光学を融合し、光を使って演算や通信、エネルギー源に利用することを目的とする技術を指し、既に私たちの日常生活の様々な場面で活用されています。特に情報コミュニケーションや赤外線、プレシジョン光学、光学センサーには欠かせない技術です。COVID-19対策においてもインテリジェント・ドローンやロボットに活用され、重要な役割を果たしています。また、高性能のカメラを使ってCOVID-19のスパイクタンパク質の原子3Dスケールマップの作成にも成功。COVID-19のワクチンや治療薬の開発に期待がかかります。


以下では、2020年2月24~28日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・COVID-19検査キットで定期的に感染チェック
  •  米Rapid DX社が「Wake Up World!(世界よ、目覚めよ!)」と呼び掛けている。新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散を防止するため、各地域でCOVID-19の検査を実施しよう、という取り組みだ。同社は、CE-IVD(体外診断用医療機器基準)を取得した「Logix Smart」というCOVID-19 qPCR検出キットを販売。欧州のCEマークを受け入れている研究所や病院、政府、企業ならこのキットを使用し、COVID-19の検査を実施できるようになった。世界的なパンデミックを予防するには、地域の医師をはじめ医療従事者が感染の有無を検査し患者を隔離するための指標となる診断キットが必要だ。

     顕著な症状がないため、COVID-19に感染していることに気づいていない「隠れ感染者」が実は何千人もいるのではないかといわれており、これが感染を拡大する要因となり得る。COVID-19に感染すると、ほとんどの人が咳、発熱、息苦しさや呼吸のしづらさなどの軽い症状しか発症しないものの、40歳以上の1~3%が正しい治療を受けずに亡くなっているという。子どもや40歳以下の人は比較的軽症で済むが、気づかずに両親や祖父母の住む家にウイルスを持ち込んでしまうリスクがある。

     Rapid DX社は、国内線と国際線の空路を制限するよう推奨しており、フライトクルーや空港、病院、輸送スタッフには定期的にCOVID-19のテストを行うことを奨励。世界中の移動式診断ラボで検査プロジェクトを行い、感染撲滅をサポートしている。COVID-19のワクチンも現在開発中だが通常、ワクチン開発には数カ月から1年かかるといわれており、今から6カ月間は世界の80%以上がワクチンを接種することは不可能であろう。

     1918年~1920年にスペイン風邪と呼ばれるインフルエンザの1種が世界的に大流行し、5億人が感染、65万人以上のアメリカ人が死亡した。全世界では4000万~5000万人が命を落とした歴史がある。ウイルスは決して眠ることはない。今すぐにウイルスを封じ込め、長閑な村や町にウイルスが侵入するのを防がなければならない。
    Wake Up World - Get Tested Today for Coronavirus COVID-19

  • ・光エレクトロニクス技術を活用した新型ウイルス対策
  •  中国Irayテクノロジー社は、X線のフラットパネルの探知機(FPD)や赤外線画像モジュールを提供するハイテク企業だ。同社は、COVID-19が発生してすぐに、赤外線サーマル画像デバイスの製造を増加させ、感染の兆候である発熱検知に焦点を当てた。赤外線サーマル画像技術を使うと、高い精度で温度計測をリアルタイムに、広範囲に実施することができる。Iray社の発熱検知デバイスは、ウイルスの発生地とされる武漢市内や広州白雲国際空港、成都駅、またバス停、工場、オフィスビル、病院、学校などの公共施設に設置され、感染予防に役立てられている。

     DALI社やGuide Infrared社、SATIR社など、赤外線と光学技術を提供するその他の中国大手企業も、自社のサーマル画像製品を感染隔離されている地域に寄付し、現場で組み立て方や使い方の研修を行い、ウイルス撲滅をサポートしている。Sunell社の体温検出ネットワークカメラには顔認証機能があるのが特徴だ。リアルタイムデータを収集し、異常な体温を検知するとアラートを発信して知らせてくれる。カメラ業界をけん引するHIK Vision社は、赤外線サーマル画像デバイスの寄付に参加しただけでなく、家庭で勉強する学生向けのオンライン教育サービスや、企業のリモートオフィスに使えるクラウドウェブ会議サービスを提供し、長期に及ぶ可能性のある隔離ライフをサポートする。

     Xi’an Institute社はグループ会社と共同で、赤外線血管検知システムを開発、医療施設に寄付した。ウイルスに感染した患者は感染防護服を着ており、治療のための注射の際に血管の場所を把握するのが困難だ。このシステムを使うと血管を可視化でき、治療の手助けとなる。インテリジェントシステムを製造するLeishen社は、「LiDARs」と呼ばれる光を用いたリモートセンシング技術を活用し、人材不足の医療施設にサービスロボットを導入。配送や除菌、掃除、パトロール、体温測定などをロボットに任せ、ロボティクスによる感染症の管理と予防に大きく貢献している。

     光エレクトロニクスは様々な局面でCOVID-19との闘いを支えている。2020年9月には「赤外線アプリケーションExpo2020」が開催され、そこで最先端の赤外線製品が紹介される予定だ。
    Optoelectronic Technologies Assisting in the Fight Against COVID-19

  • ・インテリジェント・ドローンとロボットで空中除菌
  •  中国でドローンやR80ロボットを使った、空中からの広範囲のウイルス除菌のデモンストレーションが行われた。使われたのは、農業テクノロジーで世界をリードする中国XAG社のドローンとロボットだ。公共施設における衛生面の改善と、物体の表面を介したウイルス感染を予防することが目的だ。

     2020年2月28日までの間に、370の専門家チームが2600体のXAG社の農業用ドローンを使い、中国の20州の9億m2のエリアにおけるボランティア除菌活動が行われた。特に念入りなウイルス除菌を行う必要があるのは、公共の施設、感染ゾーン、人口が密集するエリア、ウイルス防護車や廃棄施設などである。医療業界がCOVID-19のウイルス診断技術とワクチン・治療薬開発を急ぐ中、テクノロジー界ではオートメーション技術が闘いの第一線に参戦している。人の手で行われてきた除菌活動を、ドローンやロボットが代行する技術が確実に進化している。

    XAGロボット(出所:XAG社プレスリリース)

     XAG社の農業用ドローンのロボティック制御技術、自動走行、高精度操縦技術は、迅速さと正確さを求める除菌活動に最適だ。人の手で行う除菌活動には、どうしても感染のリスクがつきまとう。ドローンやロボットを使えば、より広範囲を安全に除菌でき、また一か所を集中的に狙ったスプレー除菌も可能だ。今まで100人がかりで手動除菌していたエリアを、XAG社のドローンは1日で60万~70万m2カバーすることができる。また、除菌剤の照射量を自動制御することで、従来の5分の1量で現行と同等の効果を発揮できるという。

     ドローンでは届かない複雑で細かい所には、XAG社のR80農業用多目的車が活躍する。もともとは農業用ロボットであるが、360度のハイスピード・インテリジェントJetSprayerを用い、1cm単位のナビゲーションを利用して細長いエリアを、障害物を避けながら横断し、多角度からスプレー照射ができる。ドローンやロボットが空気中に照射した除菌剤は空気中の水分に吸収され、ゆっくりと地面や物体の面に振りかかり、ウイルスフリーな環境を整えることが実証されている。

     XAG社が広州市公安局と共同で行った実験では、ターゲットとする患者輸送車を目がけてドローンがプログラムされた通りに近づき、自動で輸送車の3~5m上空から除菌スプレーを照射、車体の99.8%にスプレーを撒くことに成功したそうだ。その他にも、広南中山大学第三付属病院や広州天河幼稚園などの幼稚園や学校施設などでも同様の除菌活動が行われた。

     現在、既に50カ国において8万人以上がCOVID-19に感染し、2800人以上が死亡している。ハイテク企業が最先端の技術を活用し、世界に広がる懸念に応えるためのソリューションを惜しみなく提供し、緊急支援チームを全力サポートすることが求められる。
    XAG Robot Joins Drone Fleet to Initiate Ground Air Disinfection in Coronavirus Battle

  • ・新型コロナウイルスの原子スケール3Dマップ
  •  米国立衛生研究所(NIH)と米テキサス大学オースティン校の研究チームがタッグを組み、初めて新型コロナウイルスの原子スケール3Dマップを作成した。未知のウイルスに対抗するためのワクチンや抗体医薬、その他の医療対策の早期確立に活用することが狙い。研究チームは「スパイクタンパク質」と呼ばれるウイルスの一部分をマッピングするために、米AMETEK Gatan社の高精度のK3カメラを使用。このスパイクタンパク質とは、ウイルスが宿主細胞に侵入し、複製するために使う部位である。

     研究チームは単粒子低温電子顕微鏡を用いて、スパイクの原子構造を特定した。この構造を理解することで、なぜ類似している他のウイルスに効果のある抗体に対して新型コロナウイルスが耐性を持つのかが分かる。至上最短の速さでこの構造を解明できたのは、K3カメラの功績が大きい。本プロジェクトの主管研究員であり、テキサス大学の准教授であるジェイソン・マクレラン博士は「K3カメラが超高画質の画像提供だけでなく、データ収集を効率化してくれたお陰で、チームメンバーが作業に集中できた」と述べた。

     AMETEK Gatan社の部門副社長のナラヤン・ヴィシュワナサン氏は「限られた時間を最大限活用し、ブレイクスルーを成し遂げた研究チームを賞賛する。我が社の最先端のデバイスが生命科学の重要な研究に価値を提供できたことを誇りに思う」と述べた。K3の一つ前の製品K2Summitカメラは、2016年に初めてジカウイルスの3D構造を捉えることに成功した経緯を持つ。これが、ジカウイルスの全容と潜在的な治療法を理解するための大きなステップとなった。再びGatanの次世代型カメラ技術が、新型ウイルスという難題の早急な謎解きに挑む。
    Solutions from AMETEK Gatan Help Advance Coronavirus Vaccine Development