ドイツのPharmact AG社が、血液2滴の採取で済む新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)迅速検査キットを開発しました。臨床現場ですぐに結果が分かる即時検査です。指先から血液を2滴採取し、20分で血液中の免疫グロブリンM(IgM)とIgGを検知して感染を判断できます。信頼性も実証されており、新型コロナウイルスが拡大する欧州での高い需要が見込まれています。米Johnson&Johnson社はワクチン開発において3月末に候補薬選定を行い、年末までに第1相試験を開始すると発表しました。中国Huawei社が、高解像度の実物大映写を可能にする次世代型ビデオ会議システム「テレプレゼンスシステム」をタイ王国へ無償提供しました。中国湖北省の病院には、世界初の5GモバイルCTスキャンルームが設置され始めています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断能力を拡大し、治療が遅れる事態を防ぎます。


以下では、2020年3月9~13日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・2滴の血液で新型コロナウイルス即時検査
  •  ドイツにも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の脅威が広がっている。感染が疑われる患者がいた場合、「ポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR検査)」と呼ばれる血液検査を行って感染しているかを調べている。しかし、PCR検査は在庫が少ない上、複雑で侵襲性が高く、高額だ。しかも検査結果が出るまで数時間を要することもあり、決して便利なツールとはいえない。

     そこで、ドイツPharmact AG社はSARS-CoV-2迅速検査キットを開発。臨床現場で簡単にできる即時検査で、患者に感染したコロナウイルスを検出することができる。指先から2滴ほど血液を採取し、20分で血液の中の免疫グロブリンM(IgM)とIgGの存在を検知できる。このIgMとIgGはコロナウイルスに感染した患者にしか見られない物質だ。IgM値の陽性反応が見られた場合は、感染してから4~10日、IgG値の陽性反応が見られた場合は感染してから11~24日が経過したことが分かる。SARS-CoV-2迅速検査キットを使えば検体を研究所へ移送したり、複雑な機器を使用したりしなくてもその場で正確な検査を行うことができる。

     SARS-CoV-2迅速検査で行った126人の検査結果は、PCR検査の結果陰性と判定された126人のケースと100%合致し、信頼性は実証済みだ。SARS-CoV-2迅速検査は欧州CEマークを取得、キットには国際的な薬局番号が記されており、薬局でも購入可能だ。ドイツをはじめ欧州各国で高い需要が見込まれている。
    German Company Pharmact AG Develops a Point-of-Care Rapid Test for the Detection of the Coronavirus (SARS-CoV-2)

  • ・COVID-19ワクチン候補薬、3月末に決定
  •  米Johnson & Johnson社がイスラエルのBeth Israel Deaconess医療センター(BIDMC)との共同研究を開始した。世界が待ちわびる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防ワクチン開発競争に本格的に参入する。両社は既に複数のワクチン候補薬の臨床前検査を実施しており、今月末には、臨床試験を行うワクチンを特定する計画だ。Johnson & Johnson傘下の製薬会社であるJanssenグループが中心となって研究を進める。Janssenによると、2020年末までにワクチンの候補薬を使った第1相試験が開始されるとのこと。それまでに、ワクチン製造能力を拡大し、世界の需要に対応できる環境を整える。

     世界で今まさにパンデミックが起きている。Johnson & Johnsonは、世界の頭脳を結集し、BIDMCのディレクターであるDan Barouch博士のチームをプログラムに迎え、最先端の化学とテクノロジーを活用してワクチン開発を急ぐ。ワクチンプログラムでは、Janssenによる「AdVac and PER.C6」と呼ばれる技術で、最適なワクチン候補薬の製造能力を拡張する。同社はエボラ出血熱、ジカ熱、RSV(RSウイルス)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)ワクチンの開発を進めてきた実績を持つ。

     ワクチン開発と並行し、Johnson & Johnsonはグローバルな戦略パートナーと連携して、抗ウイルス性分子ライブラリの中から、COVID-19に効果のある治療薬候補の選定も進めている。世界が安心して元の生活に戻れるまで、アクセル全開でCOVID-19の研究が進む。
    Johnson & Johnson Announces Collaboration with the Beth Israel Deaconess Medical Center to Accelerate COVID-19 Vaccine Development

  • ・Huawei社のテレプレゼンスシステム、タイ王国へ寄付
  •  中国Huawei社がタイ王国の各病院と保健省疾病管理局(DDC)へテレメディシンウェブ会議ソリューションを寄付した。COVID-19対策の一環として、タイ王国のIT(情報技術)活用が進むきっかけとなる。プラユット・チャンオチャ首相とアヌティン・チャーニビラクール保健相は、DDCのITセンターを訪問。Huawei社のウェブ会議システムを使ってBamrasnaradura病院やスワンナプーム空港の医療スタッフの労をねぎらい、感謝のメッセージを伝えた。

     首相はさらに「Huawai社からはおよそ1000万バーツ(3400万円)に相当する、自社のクラウドプラットフォームを使った7台のテレプレゼンスシステム、200個のモバイルユーザーアカウントをタイ王国へ無償提供された。Huawei社のプロジェクトチームの手で、1週間でタイの5つの拠点へのインストールが完了した」と述べた。

     テレプレゼンスシステムとは、「遠隔地であっても、あたかも同じ空間で会議をして環境を実現できるシステム」を指す。従来のビデオ会議システムよりも、超高解像度の実物大の映像を映し、高品質な音声でリアルな息遣いまで聞こえる点で優れている。医師が遠隔から患者の症状を正確に把握するためには、なくてはならない技術だ。

     これからHuawei社の高品質なプラットフォームを使用し、タイ国内の医療専門家が現場の医療スタッフとオンラインで患者の診断を実施することができるようになり、より効果的な診断と治療が可能になる。医師は患者の容体をスマホから遠隔モニタリングし、感染リスクを下げることにつなげる。また、遠隔地のスタッフ向けに医療トレーニングを提供して、感染管理能力を向上させることができるのもこのプラットフォームのメリットの1つだ。

     プラユット首相は「Huawei社がタイのCOVID-19との闘いをサポートし、将来に向けた我が国のデジタルトランスフォメーション(デジタルを利用した変革)を推進して人々の生活改善に貢献してくれると期待している」と述べた。
    Huawei Powers Thailand Telemedicine Video Conference Solution to Fight Covid-19

  • ・5GモバイルCTスキャンルームでCOVID-19診断
  •  中国で、COVID-19の影響を最も強く受けた都市の1つである湖北省のHuanggang病院に世界初のモバイルCTスキャンキャビンが設置された。作ったのは中国Yangzhou Tailee Special Equipment社だ。COVID-19のスクリーニングと診断にはCTスキャンが使用されるが、感染患者が増加している地域では数が足りない。病院内にCTスキャンルームを新設するには時間がかかるため、モバイルCTスキャンキャビンがベストな選択肢となっている。

     YangzhouTailee社のゼネラルマネジャーであるツァオ・ユーシャン氏は「普通はモバイルCTスキャンキャビンを作るには調査・開発・設計・建設に20日かかるが、今回100人の従業員が昼夜問わずに急ピッチで作業を進め、たったの6日で完成させることができた」と語った。

    モバイルCTスキャンキャビン(出所:YangzhouTailee社プレスリリース)

     このモバイルCTスキャンキャビンは病院に到着してから、組み立て、CT機材のインストールとテストを行い、36時間後には使用を開始できる。河南州のHuanggang、Ruyang、Xinyang病院などから計25個のモバイルCTスキャンキャビンの注文を受け、これから設置予定だ。モバイルCTスキャンキャビンは5Gネットワークに接続、医師が遠隔からCT機器を操作して診断を行う。広さ27m2のモバイルキャビンはモジュールコンテナから作られ、移動と再利用が簡単にできる。CT機器が動作するための最適温度は18~22℃である。そのため、モバイルキャビンには断熱のための「サンドイッチ」スタイルの構造パターンを適用し、断熱層にはアルミ合金シートや炭素繊維プレートを使用。医師が操作を行う部屋とCT検査室は分離した設計となっており、感染予防にも余念がない。
    CIMC-produced Mobile Cabins Put Into Use in Chinese Hospitals to Help Combat Coronavirus