イノベーションに求められる「インパクトと持続性」

【要素技術】

  • ・eラーニングでパンデミックを乗り越える
  •  各国で新型コロナウイルスの拡大を阻止する緊急措置として、学校閉鎖が相次いでいる。そこで一時的なソリューションとして、また新たな教育の形として一躍脚光を浴びているのが、eラーニングを提供する「スマートスクール」だ。生徒が学校で授業を受けられない中、新たな学びの場としてオンライン教育に期待が集中している。しかし、オンライン授業のシステムはまだまだ準備不足の段階であり、従来の授業と同等の効果を得られないのではないか、と生徒側からあまり人気がないのが実情だ。

    eラーニングプログラムのトレーニングセッションの様子(出所:Nguyen Hoang Groupプレスリリース)

     新型コロナウイルス感染拡大で学校閉鎖が続く中、ベトナムのNguyen Hoang Group(NHG)の教育システムを使用する学校では、生徒に合わせ、アプリを使ったオンライン授業を実施している。また、先生側にもトレーニングを提供し、ソフトウェアの使い方やオンライン授業の上手な進め方を教育している。NHGはMicrosoft Office365を使用し、従来の授業と同じような講義、試験、テスト、生徒へのアドバイスを場所と時間を問わずにいつでも提供できる環境を整えている。

     NHGの高校生向けのeラーニングプログラムは、ダブルデグリーと呼ばれる複数学位制度を取り入れており、ベトナム国内と米国の協定校の両方で学ぶことができるのが特徴だ。将来米国へ留学を希望する生徒は、学生ビザを簡単に取得できるシステムだ。ベトナムのホアセン大学(HSU)はeラーニングシステムを構築し、専門の撮影スタジオ、オンライン教材開発を推進するためのポリシー、先生へのトレーニング、生徒の受講状況による習熟度を予測したり盗作検知をしたりする人工知能(AI)サービスの導入などに取り組む。
    E-teaching in epidemic season, NHG advances smart school model

  • ・新型肺炎による課題解決、国際協力が鍵
  •  世界100カ国以上でCOVID-19の感染者が11万人、死者は4000人を超え(3月10日時点)、各国で医療体制と救命活動に大きな負荷がのしかかっている。医療製品や感染予防グッズの需要が供給を上回り、感染が拡大しているエリアでは隔離生活による弊害も懸念されている。COVID-19の状況が深刻化する中、改めて中国の回復力の強さと緊急事態における国際連携の大切さが見直されている。

     COVID-19感染の発祥地である中国湖北省では、救命スタッフが24時間体制で貢献を続けている。健康チェックやスクリーニング、移動制限などの対策が功を奏し、ウイルス拡大を阻止する効果が表れている。世界保健機関(WHO)が中心となり、各国へ新型ウイルスに関する最新情報が配信され、感染を管理して国民を守るための様々な支援がなされている。国連開発計画(UNDP)はCOVID-19対策の初期費用に50万ドル(約5400万円)を拠出し、輸液ポンプや患者モニタリングシステム、防護服などの救命救急機器を中国へ提供し、火元の感染予防を支援している。

     WHOはネットによるインフォデミック(情報過多で信頼できる情報が得にくくなる現象)に警鐘を鳴らしている。新型のウイルスが中国で発生したことで、中国人に対する差別や偏見が広まっているからだ。パンデミックの最中で根拠のないオンラインの偽情報を元に「犯人捜し」をしている場合ではない。国際協力が最重要な時に、恐怖や分断が起きてはならない。UNDPはソーシャルメディアキャンペーンを立ち上げ、「Spread the word, not the virus(ウイルスではなく、正しい情報を広めよう)」とうたい、WHOが発信する信頼できる情報を40種類以上の言語と方言に翻訳し、高齢者や少数民族のコミュニティーがアクセスしやすくなるよう活動を広めている。既に約2700万人が情報にアクセスしている。

     COVID-19は中国だけでなく、世界の経済活動に大きな影響を与えている。2002年から2003年にかけてSARS(重症急性呼吸器症候群)が大流行した頃は中国の世界のGDP(国内総生産)における比率は4%であったが、今や16%に成長し、世界で第2位の経済大国となった。グローバル・バリューチェーンや輸送ネットワークにおける存在感は大きく、中国経済の不安定はもはや国内だけの問題ではない。

     COVID-19の被害を最もダイレクトに受けるのは貧困層だ。隔離生活を強いられることにより、多くの労働者が職場へ行くことができず、貯金や財政支援策がない。最近やっと貧困のスパイラルから抜け出た人が、また困窮に直面する危機にある。感染拡大予防と一緒に、COVID-19による社会的なインパクトを受けやすい弱者を保護する対策が必要だ。地方コミュニティーや中小企業、各家庭への経済的な影響を調べるために、UNDPは湖北省の各家庭にアンケートを行い、地方政府の対策策定に役立てることを目指す。

     COVID-19がUNDPの持続開発目標を阻害するようなことがあってはならない。今回のパンデミックは、最後の感染者の治療で終了する問題ではない。ウイルスによる影響は広範囲に、長期的に残存することが予測される。早急に目の前の課題を把握し、今後の長期的な対策を練る必要がある。
    World must work together to defy the consequences of Coronavirus

  • ・イノベーションに求められる「インパクトと持続性」
  •  カタール世界保健イノベーションサミット(WISH)がWISHイノベーションスパーク・コンテストとWISHイノベーションブースター・コンテストの2つの大会を開催する。本大会では毎年、世界中から有望な起業家を発掘し、医療サービスの新しいアイデアを創出して製品を市場へ打ち出すための支援プラットフォームを提供している。我こそは、と思う起業家にとっては大チャンス。応募期間は2020年7月31日までだ。

    2018年のWISHの様子(出所:WISHプレスリリース)

     1つ目のスパーク・コンテストは、スタート間もない初期のイノベーションやスタートアップ企業向けのコンテストだ。医療サービスの課題を解決するためのプロジェクトをこれから開発し、検証していきたい人向けだ。2つ目のブースター・コンテストは、既に始動しているプロジェクトの拡大・成長を狙う人向け。イノベーションの誕生期と成長期の二つの段階をそれぞれ支援する。

     評価ポイントは、市場のニーズにどれだけマッチしているか、持続的な成長の潜在性など。コンテストの1次審査を無事に通過した企業は、ドーハで2020年11月16~18日に開催される2020WISHサミットの大舞台で、世界トップの医療エキスパート、政府関係者や投資家向けにプレゼンを行うことができる。さらに、市場動向に関する専門家からのメンタリングやメディアプロモーション、研修を受けたりすることができる。運が良ければ投資家との1対1の商談を進めることも可能だ。

     今年度からは、応募者の年齢制限が取り除かれ、より多くの人に応募の機会が与えられた。今年は「インパクトがあり、持続性が高い」という2つのポイントがイノベーションに求められている。どんな革新的な医療デバイス、アプリケーション、配信モデル、デザインに基づいたソリューションやビジネスモデルが飛び出すか楽しみだ。
    Qatar Foundation Global Health Initiative Launches New Competitions for Innovators

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)