切断した腕に残された神経から発せられる信号を、自身の筋肉の組織を利用して増幅させることで、ロボット義手を直感的にコントロールできる技術を開発したと、米ミシガン大学アナーバー校医用生体工学科准教授のCynthia Chestek氏らが「Science Translational Medicine」3月4日オンライン版に発表した。この技術により、ロボット義手を装着した人は指を動かそうと考えるだけで、従来の義手と比べて、より複雑な作業を直感的に行えるようになるという。

 このロボット義手は、Mobius Bionics社が「LUKEアーム」として既に販売しているもの。その仕組みは、腕の切断部分に残された神経とロボット義手を電極でつなぐ。装着した人が腕や手を動かそうと考えると、腕の神経から微弱な電気信号が発生し、それを読み取って、自分の筋肉の組織を利用して信号を増幅させ、ロボット義手にそれを伝えて動きをコンロトールする。Chestek氏らによると、この技術により、ロボット義手をリアルタイムかつ直感的に、指先まで動かせるようになったという。

研究に参加したJoe Hamilton氏(提供:ミシガン大学)

 Chestek氏は「通常のロボット義手には多くの作業を行わせることができるが、装着した人がそれを直感的にコントロールしているわけではない」と指摘する。しかし、このロボット義手は「参加者に対して事前学習を行わなくても、初めて試した際にうまく機能した。神経の電気信号を意図した動きに変換するよう学習させたコンピューターアルゴリズムを用いており、この点が従来の方法とは決定的に違うところだ」と説明している。

 Chestek氏らは今回、新しい「LUKEアーム」を、事故などで腕を切断した4人の参加者に試してもらった。その結果、参加者はロボット義手を使って、指先で小さな木製のブロックを拾って積み重ねる、親指を連続的に動かす、ボールを持ち上げる、じゃんけんするなどの動作をすぐに行うことができた。

 研究に参加したJoe Hamilton氏は、2013年に花火の事故で腕を失った。彼は「このロボット義手では、本物の手で行う作業がほとんど何でもできた。まるで手を取り戻したような感覚だった」と振り返る。

 また、同じく研究に参加した米ミシガン州ジャクソンのKaren Sussex氏は、「この技術は、私だけでなく、義手を必要とする人ならば誰もが、未来に向けて踏み出せるよう後押ししてくれる」と話している。

 Chestek氏とともに研究を率いた同科教授のPaul Cederna氏は、「われわれは、手足の切断部に残された神経を利用して、ロボット義手を指先までコントロールできる技術を開発した。この技術によって、世界でも類を見ないほど高性能な義手を実現させることができた」と述べている。

 現在、臨床試験が進行中で、研究チームは新たな参加者を募集しているという。「実験室ではなく、ロボット義手が実際の生活にどのような影響を与えるのかを知る機会は、これまでほとんどなかった。ロボット義手を装着した人が、10年前には考えられなかったことを見るのは、とても喜ばしいことだ」とCederna氏はいう。

 前出のHamilton氏は「ロボット義手のおかげで未来に希望が持てるようになった。このロボット義手があれば、仕事にも行けるのではないかと思えるようになった」と話している。

[HealthDay News 2020年3月4日]

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