今回も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の克服に向け、世界中の企業が急ピッチで進めている技術開発の最新動向をお伝えします。米国の企業がAR(拡張現実)と熱探知技術を組み合わせたサーマルイメージング・スマートグラスを開発。このメガネをかけると、街中ですれ違う人が発熱しているかどうかを瞬時に検知でき、近づかないことで感染を防げるといいます。また、未承認のCOVID-19治療薬を臨床現場で安全に使用するため、危険な副作用を早期発見するモバイルAI(人工知能)心電図や、セルフアセンブリーワクチンと呼ばれる高性能なワクチンを作り出すためのプラットフォームなども開発され、COVID-19に対する闘いは続きます。


以下では、2020年3月23~27日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ・道行く人の発熱を知らせるARスマートグラス
  •  街中で発熱している人を見つけたらアラートを出してくれるスマートグラスと連携するシステム「Feevr」が3月26日に発売された。この画期的なメガネは米国のX.Labs社とVuzix社のコラボ製品だ。X.Labs社は、もともと「SWORD」と呼ばれる、武器を検知するシステムを開発した企業である。今回、スマートグラスと拡張現実(AR)技術を提供するVuzix社と提携し、Feevrと連動する「Vuzixブレードスマートグラス」を100個出荷するよう注文を出した。

     Feevrはモバイルプラットフォームであり、高精度のサーマルイメージング(熱画像)カメラとAI(人工知能)を搭載したモバイルアプリを、アンドロイドのデバイスに統合している。このノンコンタクト(非触式)ソリューションは、設定された値よりも体温が高い人を発見すると、周りには分からないよう、こっそりとアラートを送信する。新型コロナウイルスのような感染症の検出には、発熱が最も分かりやすい指標の1つとなるため、Feevrを使えば、感染者を効率的に特定することが可能になる。ウイルスという強力な武器を体内に持ち運ぶ人を検出するシステムとしては、SWORDと同じだといえる。ウイルスの場合は、隠し持っている人自身が自分では気づいていない場合が多いため、本人にとっても早期の検出が重要だ。

     Vuzixスマートブレードグラスは、人間の視野に直接情報を映し出す「ヘッドアップディスプレー(HUD:ハッド)」という技術を使っており、ユーザーはリアルタイムでメガネに表れるアラートを確認できる。X.Lab社の創設者兼CEOのバリー・オーバーホルツァー氏は、このUD技術を次のように説明する。「Vuzixブレードは透明な画面のようなものを提供する。顧客は視界を保ったままで、Feevrソリューションから送られるリアルタイムのアラートを受信できる」。HUD技術が普及すれば、情報を確認するためにスマホ画面に目を移す必要がなくなりそうだ。
    Vuzix Blade Selected as the Smart Glasses Companion for X.Labs' New AI Screening and Temperature Detection System Feevr

  • ・新型コロナ治療薬の副作用を防ぐモバイルAI心電図
  •  COVID-19に対して様々な治療薬が使われ始めている。未知のウイルス感染の急拡大に対し、新たな治療薬の臨床試験と各国政府機関の承認が追い付かず、適応外の薬の使用開始を余儀なくされている。中でもクロロキンやアジスロマイシン(マクロライド系抗生物質)を含む治療薬には、不整脈の一種である「QT延長」の症状を引き起こす可能性があり、使用する際には細心の注意が必要だ。

     QT延長が見られた場合、最悪のケースではDI-SCD(薬物による突然死)が引き起こされる危険がある。QTcとは、心拍数を補正する間隔を指し、心臓のどのような異常があるかを判断するためのデータだ。QTc間隔が異常に延長される症状は、先天性のQT延長症候群やその他の疾患を患っている患者、また治療薬の副作用として引き起こされることがある。

     米AliveCor社は、AI(人工知能)を用いたパーソナル心電図テクノロジーを提供している企業だ。自社の「Kardia Mobile 6L」と呼ばれる製品は、患者の危険なQT延長の状態を検知するために使用されている。Kardia Mobile 6Lは、米食品医薬品局(FDA)から世界で唯一承認され、COVID-19の治療薬を用いる患者のQTcのモニタリングのための使用が認められた。AliveCor社CEOのプリヤ・アバニ氏は「医療が世界的な緊急事態となり、患者の心電図の数値を個別に遠隔から測定できるソリューションが、今程求められる時はない。生命を助ける心臓病治療デバイスを、必要とする人に迅速に提供することを目指す。FDAがこのタイミングで、我が社のデバイスの普及を拡大するためのガイダンスを発行したことには、大きな意義がある」と語る。

     Kardia Mobile 6Lの遠隔モニタリングテクノロジーにより、医師はCOVID-19の治療薬を使用する患者のQTcを遠隔で計測し、1人ひとりの治療効果を評価し、安全を確保しながら治療が進められる。Kardia Mobile 6Lは、心電図の6つの波形のうち、スマートウォッチの心電図では計測できない「II誘導」を捉えることができ、より精密にQT延長を検知することが可能だ。自宅などで治療薬を飲みながら隔離治療を受ける患者にとっての命綱となる。Alivecor社は、さらに専門性の高いQTcモニタリングサービスを開発し、数値の解析まで一括で行えるシームレスなワークフローを実現できるよう、研究を続けている。
    New FDA Guidance Allows Use of KardiaMobile 6L to Measure QTc in COVID-19 Patients

  • ・新型コロナ用セルフアセンブリーワクチン開発開始
  •  セルフアセンブリーワクチン(SAV)と呼ばれるプラットフォームを使った新型コロナウイルスワクチン開発が始まる。米国のHoth Therapeutics社とVoltron Therapeutics社のジョイントベンチャーであるHaloVax社の新たな取り組みだ。本プロジェクトを米マサチューセッツ総合病院(MGH)が支援する。

     このワクチンプラットフォームの名前は「VaxCelerate」だ。迅速に新たなワクチンを生成し、ターゲットとする病原体に対して臨床前試験を行うことができる。過去にはラッサ熱に対してプラットフォームの実用化が実証され、今回COVID-19のパンデミックに対しても同じようにSAVを用いてワクチンの開発推進を狙う。

     VaxCelerateは、新型コロナウイルスのワクチン開発において、DNA(デオキシリボ核酸)だけでなく、内部と外部の変異タンパク質に焦点を当て、免疫システムにとって攻撃対象なるターゲットをより広範囲に提供することができるという。

     Hoth社CEOのロブ・ニー氏は「このVexCelerateの技術を使えば、COVID-19のワクチンを探すための、他にはないアプローチが可能だ」と語る。Hoth社は開発されたワクチン製品の売り上げのうち数%のロイヤリティーを受け取り、HolaVax社の30%の持ち分を取得する契約を結んでいる。
    Hoth Therapeutics Announces Agreement to Joint Development for a Self-Assembling Vaccine (SAV) for the Potential Prevention of the Coronavirus (COVID-19)