愛知県豊明市は、利用者の予約に応じて運行経路やスケジュールを調整して運行するオンデマンド型の乗合送迎サービス「チョイソコとよあけ」の事業実施に向けて実証実験を行っており、2019年3月末から2020年3月末までの結果を公表している 。調査の結果、市では新型コロナウイルスの影響による減少はあるものの、利用者数、収入とも増加傾向となっており、高齢者などの外出支援に一定の定着・貢献があったとしている。

「チョイソコとよあけ」の仕組み(資料提供:アイシン精機)
「チョイソコとよあけ」の仕組み(資料提供:アイシン精機)
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 「チョイソコとよあけ」は、高齢者などの外出支援と効率の高い公共交通網の形成を目的とした新たな交通システム。2018年4月から豊明市と、刈谷市に本社を構えるアイシン精機が共同で道路運送法第21条の許可による有償での実証実験を行っている。この実証実験の対象は、市内在住の65歳以上の人や障害者、交通不便地域に在住する人。事業者の設置する約50の停留所に加え、公共施設や公園、資源ごみ置き場などに現在、計120カ所の停留所を設置している。登録者数は1682人(利用者数:548人、未利用者数:1134人)だ。

 利用状況については、2019年3月末の利用開始当初から2019年末にかけて1日あたりの利用者数が増加した。2019年12月には1日あたりの利用者数が52.8人と、実証実験期間中最大利用の月となったが、2020年3月は新型コロナウイルスの影響で前月の3~4割減となっている。

「チョイソコとよあけ」の地区別の登録者数と利用者/未利用者数(出所:豊明市)
「チョイソコとよあけ」の地区別の登録者数と利用者/未利用者数(出所:豊明市)
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1日あたりの利用者数(出所:豊明市)
1日あたりの利用者数(出所:豊明市)
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 一度利用するとリピーターとなる人がいることも見えてきた。利用者のうち、実証実験期間中に1~30回の利用が27.7%、31回以上の利用が4.9%と、交通不便地域の交通手段として、一定数の地域住民がヘビーユーザーとなっていることがわかる。市は活動範囲や停留所の位置によっては、移動手段として定着する可能性があると考えている。

リピート率(出所:豊明市)
リピート率(出所:豊明市)
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全体満足度は高いが運行日時などに課題

 実際に利用した人の「利用満足度」は、サービス全体では「満足」「まあまあ満足」と回答する人が84%と満足している人が多い。一方で、運行日や運航時刻、停留所に関しては「満足していない」「あまり満足していない」との回答が多く見受けられ、21.9%の利用者が利用をやめたという結果も出ている。利用しなくなった理由として「利用したい曜日や時間帯に運行していない」という回答が最も多く、「予約が面倒」という利用時の手間も課題として浮き彫りになった。市は今後、地域住民の生活リズムや行動範囲に即した運行時間や停留場所を模索する必要があると考えている。

利用満足度(出所:豊明市)
利用満足度(出所:豊明市)
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チョイソコ利用離反者と利用しなくなった理由(出所:豊明市)
チョイソコ利用離反者と利用しなくなった理由(出所:豊明市)
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 事業運営面では、「チョイソコとよあけ」は市の負担金や運賃以外に「エリアスポンサー」と呼ばれる協賛者を多数募ることで、運賃以外にも収益源をつくって事業継続を目指している。その他収入(協賛金、運賃収入)は、新型コロナウイルスの影響により2020年3月に減少したものの、全体として増加傾向にある。

収入状況(出所:豊明市)
収入状況(出所:豊明市)
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 市は、今回の実証実験の結果を受け、市民の生活や健康増進のための外出と移動手段をセットで確保することで、促し、自家用車の運転や家族の送迎に頼らない暮らしを創出することに一定程度貢献できていると手ごたえを感じている一方、移動・運行ルールや停留所の在り方は随時見直す必要があるとしている。

 また、利用者への利便性を高めることを一番の目的としつつも、利便性向上は協賛企業の増加にもつながることを期待している。2021年4月に予定している事業実施へ向けて、2020年7月には10月から運行を担う契約候補者を決定した。引き続き定期的に検証を行い、官民連携で展開する事業として増収につなげたい考えだ。

(タイトル部のImage:f11photo -stock.adobe.com)


出典:「新・公民連携最前線」2020年8月14日付の記事より