市は独自事業として受診勧奨を継続

 事業に用いた評価指標の根拠は、八王子市の12年6月から16年8月までの実医療費から算出した医療費削減効果で、1人当たり187万2514円としていた。しかし、19年度にキャンサースキャンが京都大学大学院医学研究科と精査したところ、大腸がん早期発見1人あたりの医療費削減効果は614万9000円に上っている。

 報告書では、これらの分析結果に基づいて上記の「大腸がん検診支払い条件試算ツール」を用いて今回の成果を計算し直すと約3914万4000円となることから、予算上限の約1000万円を支払っても「十分な医療費適正化効果があった」としている。

 成果指標の設定については課題も指摘された。大腸がん検診の成果指標には勧奨を行った人の受診率を用いたことについては、本来の目的に照らせば前年未受診者全員の受診率を用いる必要があると指摘。また、早期がんの発見者数は年度ごとの変動が大きく、成果指標には適さないとした。

 SIB事業の在り方などについても提言なされている。報告書では、事業者の資金力で対応できる程度の事業規模であれば、SIBによる資金調達は不要だとした。さらに、今回のように医療費削減効果が明らかな事業は、民間の資金を募るSIBではなく、広域行政(国や都)がPFS(Pay For Success:成果連動型民間委託契約方式)事業として実施することを要望している。

 大腸がん以外の他のがん検診への展開については、現状すぐに進められる段階にはないようだ。報告書では、受信者数やがん罹患例の発見の多さ、検診費用の点などから「他のがん検診が、必ずしも、大腸がんのように便益が出るかは不明」であるとした。ただし、他のがんについても「早期がん発見と進行がん発見の医療費の差分を確認し、事業を可視化していくことは重要」とその必要性を展望している。

SIB事業の推進体制(最終報告書より)

 八王子市では、18年度以降も市の独自事業として前年度大腸がん検査未受診者への受診勧奨と精密検査未受診者への受診勧奨を続けている。18年度の大腸がん検査受診率は19.3%で、SIB事業の受診率には及ばなかったものの、目標上限の19%を上回った。勧奨経費は216万8215円だった。

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出典:「新・公民連携最前線」2020年12月9日付の記事より