新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続き、人々はストレスの高い状態を強いられている。こうした中、木々の緑に接したり、自宅の窓から緑を眺めることが、メンタルヘルスに好ましい影響を及ぼし得ることが明らかになった。東京大学大学院農学生命科学研究科の曽我昌史氏らの研究チームが、東京の緊急事態宣言解除直後に行った都民対象調査の結果であり、詳細は米国生態学会刊行の「Ecological Applications」に11月17日掲載された。

 COVID-19パンデミックの対策として、世界各国で外出自粛措置がとられている。東京も4月7日~5月25日に緊急事態宣言が発出され、人々の外出機会が著減した。このような特殊な状況が人々にストレスになることは、既に多くの研究報告から明らかにされている。一方、自然環境に接することにストレス軽減効果があることが、以前から報告されている。そこで曽我氏らは都民を対象として、緊急事態宣言下での自然との触れ合いと、メンタルヘルス状態との関連を調査した。

 対象はオンライン調査会社の登録者3,000人(男性と女性が各1,500人)で、期間は6月初旬の3日間。メンタルヘルス状態は、うつ・不安レベル、自尊心、生活満足度、主観的幸福感、孤独感を評価した。自然との触れ合いは、5月の1カ月間の緑地の使用頻度・時間、自宅の窓から緑が見えるか否か、および衛星観測による回答者の自宅周辺の植生指数(Normalized Difference Vegetation Index;NDVI)を評価指標とした。その他に生活習慣や社会人口学的変数として、年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、世帯収入などを質問した。

 回答者全体のメンタルヘルス状態の解析の結果、全般的に孤独感のレベルが高い傾向が認められた。自然との触れ合いについては、5月の大半が緊急事態宣言下にあったことから、60%の人は緑地を一度も訪れておらず、訪れた人の滞在時間も1~2時間程度の短時間が多くを占めていた。自宅の窓から緑が見えるとの回答は81%だった。