いかにも機械という硬い動きではなく、人の手指のような柔らかい動きができて、知覚も備えた「人の指ロボット」が開発された。立命館大学の研究グループが、専門誌『Nano Energy』で2021年1月に発表した。今後、ヘルスケア分野での応用が期待されそうだ。

空気量の調整で柔らかな動きを実現

 ヘルスケア分野でのロボット活用は広がりを見せている。手術支援ロボットが前立腺がんの手術をはじめ幅広い腫瘍切除の手術で使われているほか、高齢者介護では労務軽減につながるロボットが実用化されていたりする。

イメージ画像(出所:Getty Imeges)

 一方、研究開発の余地はまだ広い。例えば、課題の一つになるのが繊細な操作の実現だ。ヘルスケア分野の応用においては、壊れやすい物体や生物を扱う操作も多い。ネックになるのがロボットの動き方だ。硬い動きで物体をつかむのは、損傷を加える懸念や安全性に悪影響を及ぼす懸念もある。知覚を持たせる場合も、硬い動きよりも、柔らかい動きである方が物体などに柔軟に接することができるので好ましい。研究グループは、人と同じように物体を握ることができるロボットは最重要の目標になると説明している。

 このたび研究グループが設計に取り組んだのが、人のような柔らかい動きを可能とするロボットだ。活用したのは、複数の素材を扱える「マルチマテリアル3D プリンティング技術」。柔らかい動きを実現すると共に、センサーも一緒に組み込み、状況変化に合わせて動きが調整される、まさに人のようなロボットを目指した。

 こうして完成したのが、指の曲がり方や動き方に合わせて、動きを柔軟に変えていける、これまでにない特徴を持つロボットだ。複数の素材を積層していくが、層と層の間に空気を含ませ、この空気の量を調整することで人の指のような柔らかな動きを実現した。

知覚は、複雑な機構や電力供給がなくてもセンシング可能に

 低消費電力の知覚センサーを組み込んだのも特徴だ。物質に圧力がかかると電圧差が生じる現象「圧電効果」をセンサーに応用して、複雑な機構や電力供給がなくても、ロボットの屈曲や動きの硬さを感知して、動きを柔軟に調整できるようにした。

説明資料(出所:立命館大学のプレスリリース)

 研究グループは3Dプリンターを使うことで、容易に、しかも迅速に試作が可能となったと説明する。開発されたロボットは安全に物体を扱う技術として応用が進む可能性がありそうだ。


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