高齢者が趣味やスポーツを行ったり仕事を継続した場合、介護コストを大きく削減できる可能性を示す研究結果が報告された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らが行った、国内12市町村の高齢者を6年間前向きに追跡したコホート研究の結果であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月19日、論文が掲載された。

 この研究の対象は、2010年8月~2011年12月に日本老年学的評価研究(JAGES)の調査に協力した65歳以上の高齢者のうち、要介護認定を受けていない5万1,302人。この人たちを2010年8月から2016年11月まで約6年間追跡。転居により追跡不能となった人などを除外して、4万6,616人を解析の対象とした。このうち4,350人(11.8%)が追跡期間中に死亡し、7,348人(15.8%)が新たに介護保険の利用を開始していた。

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 介護保険の利用点数から介護コストを算出し、研究参加時に行った質問紙による調査に基づいて、社会活動(趣味、スポーツ、ボランティア)への参加や就労の有無別に、その後の介護コストを比較検討した。その結果、以下に示すように、社会活動に参加したり就労を続けていた人では介護コストが少ないことが明らかになった。

 まず、趣味に関する活動に全く参加していない人(全体の54.1%)では6年間で13.9%が死亡し、23.6%が要介護状態になり、1人当たり平均42.8万円の介護コストが発生していた。それに対して趣味活動に年数回参加している人(8.7%)の介護コストは21.4万円、1カ月1~2回の人(13.6%)は20.7万円、週1回の人(11.5%)は22.5万円、週2回以上参加している人(11.8%)は18.6万円だった。

 同様に、スポーツ活動に全く参加していない人(72.8%)は39.2万円であるのに対して、年に数回参加している人(4.1%)は17.2万円、1カ月1~2回の人(4.5%)は18.6万円、週1回の人(7.1%)は15.9万円、週2回以上参加している人(11.6%)は15.5万円だった。また、就労していない人(同76.1%)が37.9万円であるのに対して、就労している人は14.8万円だった。

 なお、ボランティア活動に関しても、参加していない人より参加している人の介護コストの方が低かった。ただし、ボランティア参加が高頻度の場合にコスト縮小幅が減少するという点で、他の社会活動への参加とは異なる傾向が見られた。

 次に、要介護リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、婚姻状況、独居か否か、併存疾患・障害、教育歴、収入、主観的健康感、物忘れの自覚、居住地域など)を調整した上で、同様の検討を行った。その結果、やはり研究参加時に社会活動に参加していた人や就労していた人の方が、有意に介護コストが低いことが確認された。全ての人が社会活動に参加したり就労を続けたと仮定して、6年間の介護コストを試算したところ、介護コストは趣味に関する活動で19.9%、スポーツ参加で25.3%、就労継続で13.4%抑制されると考えられた。

 著者らは本研究を、高齢者の社会活動参加や就労継続が公的な介護費の抑制に寄与することを示した初の研究と位置付けている。研究の限界点として、社会活動の内容の詳細が把握できていないこと、寿命の延伸に伴い生涯の総介護コストは増大する可能性を否定できないことなどを挙げた上で、「高齢者の社会活動と就労を促進することが、将来の介護コストの削減に役立つ可能性がある」と結論付けている。なお、ボランティア活動への参加頻度が高い場合に介護コスト抑制幅が減少することの理由として、「あまりに頻繁なボランティア活動は“無償の強制労働”という側面が生じてしまうのではないか」と考察を述べている。

[HealthDay News 2021年7月12日]

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