富士フイルムは、特殊光を用いて組織の酸素飽和度を画像化する酸素飽和度イメージング技術を開発した。外科手術用内視鏡システムなどに応用することで、外科医による血流状態や虚血状態の判断を支援することが期待できるという。
がんの手術などで臓器を部分切除する際、処置に伴い腫瘍周辺の組織は血流が悪くなることが知られている。この血流が悪い部分(虚血域)を残したまま臓器を縫合してしまうと、縫い合わせた部分がうまく治癒せず、縫合不全が起きる可能性が高くなる。縫合不全の発生率を下げるためには虚血域を残さず切除したうえで縫合することが重要とされており、医療現場では、虚血域を明確に特定する技術が求められていたという。
今回開発した酸素飽和度イメージング技術は、観察したい消化管の組織に特定の波長の照明光を当てて、血液中の酸化ヘモグロビン(HbO2)と還元ヘモグロビン(Hb)の吸収係数の違いにより、酸素飽和度を画像化する。同社の外科手術用内視鏡システムで観察された組織表面の酸素飽和度を画像化し、リアルタイムで提供することができるという。画像は、組織の酸素飽和度に基づいたヒートマップ表示などの方法で提供が可能である。
組織の酸素飽和度をリアルタイムで画像化することで、外科医による組織の血流状態や虚血状態の判断を支援し、縫合不全などの合併症の発生率抑制につながると期待できる。同社では、この酸素飽和度イメージング技術を搭載した外科手術用内視鏡システムを、2021年内にも米国で販売開始する予定だとしている。
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