高血圧と大腸直腸がんリスクの関連を示唆するデータが報告された。既知のリスク因子の影響を除外してもなお、有意性が維持されるという。東京大学医学部附属病院循環器内科の金子英弘氏らが、200万人以上の医療データを解析して明らかにしたもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に11月2日掲載された。

 これまでの研究から、高血圧が大腸直腸がんのリスク上昇と関連する可能性が示されている。ただし、その関連を示した研究は、高血圧患者に肥満や糖尿病などの発がんリスク因子を有する人が多いことや、一部の降圧薬が発がんリスクに影響を与える可能性を考慮していないといった解釈上の限界があり、高血圧そのものと大腸直腸がんのリスクとの関連の有無は明らかになっていない。そこで金子氏らは対象を未治療の高血圧症例に絞り、肥満や糖尿病の影響を調整した上で大腸直腸がんリスクを検討した。

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 研究の手法は、60以上の保険団体の健診および医療費請求データを解析するというもの。このデータベースでは、2005年1月~2018年8月に252万8,157人が、健診において血圧を測定されていた。20歳未満、降圧薬が処方されていた症例、大腸直腸がんや大腸直腸ポリープの既往症例、大腸直腸がんのリスク因子である炎症性腸疾患症例を除外した222万112例を解析対象とした。

 解析対象者の平均年齢は44.1±11.0歳、男性が58.4%であり、米国心臓協会(AHA)/米国心臓病学会(ACC)の基準で判定したベースラインの血圧は、正常血圧52.4%、血圧高値15.8%、ステージ1高血圧21.0%、ステージ2高血圧11.2%だった。血圧高値以上のカテゴリーに該当する群は、正常血圧群に比べて高齢であり、男性、現喫煙者、習慣的飲酒者の割合、BMI、ウエスト周囲長、血糖値、HbA1c、LDL-コレステロール、中性脂肪が高く、HDL-コレステロールは低かった。

 1,112±854日の追跡で6,899件の大腸直腸がん診断が記録されていた。Log-rank検定により、ベースライン時の血圧が高い群ほど大腸直腸がんリスクが高いという有意な関連が認められた(P<0.001)。

 Cox回帰分析により大腸直腸がん発症に関連する可能性のある因子〔年齢、性別、肥満、ウエスト周囲長、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞の既往、喫煙・飲酒・身体活動習慣、非健康的食習慣(朝食欠食、就寝前の摂食など)、アスピリンの処方〕を調整後、ベースライン時にステージ2高血圧だった群は大腸直腸がんリスクが有意に高いことが分かった〔ハザード比(HR)1.17(95%信頼区間1.08~1.28)〕。また、収縮期血圧が10mmHg高いごとに大腸直腸がんリスクは4%上昇し〔HR1.04(同1.02~1.06)〕、拡張期血圧が10mmHg高いごとに6%上昇する〔HR1.06(同1.03~1.09)〕という関係が認められた。

 なお、性別に検討すると、男性ではステージ2高血圧だけでなく、ステージ1高血圧でも有意なリスク上昇が認められた〔HR1.10(同1.00~1.20)〕。一方、女性は血圧カテゴリー別の検討では有意な関連が見られなかったが、拡張期血圧が10mmHg高いごとにリスクが4%上昇する〔HR1.04(同1.00~1.09)〕という関係が存在した。

 これらの結果から著者らは、「血圧の上昇は既知の大腸直腸がんリスク因子を調整後にも、大腸直腸がんのリスク上昇と有意に関連しており、特に男性でその関連が強かった。血圧測定が大腸直腸がんハイリスク者の特定に役立つ可能性がある」と結論付けている。

[HealthDay News 2021年12月24日]

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