メタボリックシンドローム(MetS)の診断基準に含まれる「腹囲長(waist circumference;WC)」を、新たな腹部肥満指標として近年注目されている「体型指数(A body shape index;ABSI)」へ置き換えると、動脈硬化進展や腎機能低下の予測能が有意に向上することを示すデータが報告された。東邦大学医療センター佐倉病院内科の永山大二氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Obesity」に11月25日掲載された。

 MetSは、腹部(内臓脂肪型)肥満に基づく各種代謝異常が複数重複し、総合的には心血管イベントリスクが高い状態。その診断基準の設定は人種ごとに異なるが、腹囲長を腹部肥満の指標として用いる点では共通している。日本の基準では男性85cm、女性90cm以上の腹囲長がCT法での内臓脂肪面積100cm2以上に相当する腹部肥満であるとされ、MetS診断の必須項目となっている。しかし、このカットオフ値が最適なのか、そもそも腹囲長を腹部肥満の指標とすべきなのかという議論が長年続いている。腹囲長はbody mass index(BMI。肥満度を表す体格指標)と同様に内臓脂肪の蓄積を必ずしも反映しないため、現行の基準で診断されたMetSの存在意義を疑問視する声もある。

 このような状況を背景として著者らは、腹囲長をABSIに置き換えMetSを診断することで、動脈硬化の進展や腎機能低下への予測能が向上する可能性を検討した。ABSIは腹囲長を身長と体重を用いて補正することで算出され、BMIとは関連しないことが特徴である。本研究では、日本人を対象に検討されたCardio-ankle vascular index(CAVI。全身の血管弾性を反映する指標。その高値は動脈硬化の進展を意味する)とABSIの関連を示す既報研究に基づき、「ABSI0.080以上(男女共通)」を3種類のMetS診断基準における腹囲長に代わる腹部肥満指標とした。

 研究の対象は、日本健康増進財団が行っている健診に4年連続で参加した人からデータ欠落者などを除外した5,438人(年齢中央値48歳、男性43.5%、BMI中央値21.9kg/m2)。まず、日本のMetS診断基準において従来の腹囲長を用い診断したMetS(WC-MetS)の該当者と腹囲長をABSIに置き換え診断したMetS(ABSI-MetS)の該当者を比較すると、後者は前者よりも女性、高齢者の割合が高く、現喫煙者、習慣的飲酒者、肥満者(BMI25以上)の割合が低かった。

 次に、日本の診断基準に加え欧米で用いられている基準(NCEP-ATPIII)および国際糖尿病連合(IDF)基準をWC-MetSとABSI-MetSにかけ合わせた計6種類の診断基準でMetS群/非MetS群に群分けを行った。各群のCAVI値を比較したところ、WC-MetSはIDF基準で診断された場合のみ、MetS群のCAVIが有意に高いという結果が認められた。日本の基準やNCEP-ATPIII基準では、WC-MetSの該当者と非該当者でCAVI値に有意差はなかった。一方、日本基準、IDF基準およびNCEP-ATPⅢ基準の全てで、ABSI-MetS該当者におけるCAVI値は有意に高かった。

 続いて、各診断基準で判定したMetS該当者が、4年間の観察期間中に腎機能低下(eGFR60mL/分/1.73m2未満)を新規発症するリスクを縦断的に検討。開始時に395人に腎機能低下が既に認められ、4年間でさらに474人が新規に腎機能低下を発症した。

 年齢や蛋白尿、糖尿病・高血圧・脂質異常症、CAVI値で調整したCox回帰分析において、日本基準で診断したWC-MetSの新規発症腎機能低下に対するハザード比(HR)は0.718(95%信頼区間0.487~1.057)であり、有意な予測因子ではなかった。それに対して、同じく日本基準で診断したABSI-MetSはHR1.623(同1.273~2.069)であり、有意な予測因子であることが確認された。なお同様のCox回帰分析において、IDF基準やNCEP-ATPIII基準で診断したWC-MetSおよびABSI-MetSは、いずれも新規発症の腎機能低下に対する独立した予測因子ではなかった。

 これら一連の結果から著者らは、「現行のMetS診断基準の腹囲長をABSIに置き換えることで、動脈硬化や腎機能低下のリスクがある集団を、より効率よく検出できるのではないか」と結論。その背景として、MetSという病態の基盤にある内臓脂肪の蓄積を把握する上で、腹囲長は最適なマーカーとは言えない可能性を指摘している。ただし、本研究はCAVIや腎機能低下との関係のみを検討しているため、「ABSIを使用したMetSの診断が心血管イベントリスクや死亡率も予測し得るかを確認する必要がある」とも述べている。

[HealthDay News 2022年1月11日]

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