量子科学技術研究開発機構(QST)とアトックスは、半球状の検出器を配置したヘルメット型の陽電子放射断層撮影(PET)装置を開発した。既に医療機器承認を取得しており、2022年1月18日に国内販売を始めた。

開発した装置(左)と側面イラスト図(右)。座ったままリクライニングした後、帽子をかぶるように検出器部分がゆっくり降りてきて検査が始まる(出所:プレスリリース、以下同)
開発した装置(左)と側面イラスト図(右)。座ったままリクライニングした後、帽子をかぶるように検出器部分がゆっくり降りてきて検査が始まる(出所:プレスリリース、以下同)
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 PETは、がんなどの患部に集まる検査薬を注射し、検査薬が放つ放射線を検出器で捉えて病巣を画像化する装置。従来の装置は、患者が横になって大きな検出器のトンネルをくぐる形のため、大型・高価であり導入できる病院も限られていた。一方で、アルツハイマー型認知症の進行に関わるとされる物質の検出に特化した検査薬の開発も進んでおり、頭部に特化したコンパクトな装置が切望されていたという。

 そこで開発チームは、245ピコ秒という高い時間分解能を持つ検出器を開発。これにより、円筒型ではなく1/4~1/5の検出器数で済む半球状でありながらも、高画質な脳画像の撮像を可能にした。同時に、装置の構造を見直し、座ったまま検査できるようにした。

PETの同時計数(左)における時間分解能を245ピコ秒にして、検査薬の位置を3.7cmの線分上に特定できるようにした(右)。このような線分の集合体を画像処理して、3mm以下の分解能を達成した
PETの同時計数(左)における時間分解能を245ピコ秒にして、検査薬の位置を3.7cmの線分上に特定できるようにした(右)。このような線分の集合体を画像処理して、3mm以下の分解能を達成した
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 開発した装置は、これまでの脳腫瘍やてんかんの検査の高精度化に加えて、認知症の診断にも役立つと期待されるとしている。アルツハイマー型認知症は、アミロイドβやタウと呼ばれるたんぱく質の異常な蓄積が病気の進行に関わっているとされている。脳に蓄積されるこれらたんぱく質のごく初期の段階を捉えることで、今後有効な治療薬が開発された際の治療開始時期の判断に役立つことが期待できるとしている。

従来のPET装置(左)と今回の装置(右)の比較
従来のPET装置(左)と今回の装置(右)の比較
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(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)