買い物をナッジとして活用する「買い物リハビリテーション」によって、高齢者の身体機能や認知機能が改善することが報告された。雲南市立病院地域ケア科の毛利直人氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に1月5日掲載された。

 加齢に伴う身体機能や認知機能の低下予防・改善にはリハビリテーションが有効だが、リハビリ開始に至るまでの動機付けがネックとなることが少なくない。それに対して近年、行動科学の知見に基づき「ナッジ」(わずかに後押しする行為)を応用する試みがなされている。毛利氏らは、ナッジとして高齢者の買い物をサポートする試みを行い、その後の身体機能や認知機能の変化を検討した。

[画像のクリックで別ページへ]

 研究参加者は雲南市内に居住する高齢者72人。そのうち59人が6カ月間にわたる平均月4回の「買い物リハ」を終了した。

 買い物リハは同市内最大のショッピングセンターで、1回につき約120分かけて行われた。その内容は、まず、高齢者9~12人に対し作業療法士2人が付き添い、30分かけてショッピングセンター内で買い物をしてから、屋内イベントスペースでの60分ほどの体操を挟み、その後、再度30分のショッピングを楽しんでもらうというもの。このほか、自宅での運動方法を指導するなどの働きかけを行った。なお、参加者の95%は、自宅とショッピングセンター間の移動にシャトルバスを利用していた。

 介入を終了した59人の平均年齢は86.32±4.67歳で、93%が女性であり、64%が家族と同居、36%は独居だった。年齢や女性の割合、認知症有病率、飲酒・喫煙習慣、チャールソン併存疾患指数、居住環境(戸建てか共同住宅か)などは、家族同居群と独居群とで有意差はなかった。

 運動機能と認知機能の評価には、厚生労働省の基本チェックリストを用い、介入開始時点と介入6カ月後の計2回評価した。基本チェックリストは点数が高いほど要介護リスクが高いことを意味する。本研究では、既報論文を基に合計点数8点以上をリスクの高い状態と判定し、その割合を検討した。

 介入開始時点の基本チェックリスト合計点数は平均6.71±3.34点であり、家族同居群(6.87±3.22点)、独居群(6.43±3.60点)との間に有意差はなかった(P=0.632)。また、8点以上の割合は、全体の39%、家族同居群では37%、独居群では43%だった。

 6カ月間の介入により、基本チェックリスト合計点数が8点以上の割合は27%となり、有意に減少した(P=0.050)。ただし、家族との同居か否かで層別化した解析では、同居群では24%へと有意に減少していたが(P=0.050)、独居群は33%へと減少したものの介入前との差は有意でなかった(P=0.428)。なお、介入に伴う有害事象は観察されなかった。

 この結果を基に著者らは、「リハビリテーションに買い物を組み込むことで、基本チェックリストの点数が向上する可能性が示された。買い物という行動が高齢者の社会活動を刺激することで生活に変化が生じ、フレイルリスクの抑制、生活の質(QOL)の向上につながるのではないか」と結論付けている。なお、独居者は基本チェックリストの合計点数8点以上の割合がやや高く、かつ介入前後の変化が有意でないという結果に関連して、「家族の助けのない独居高齢者は、買い物の際、食料品を含む生活必需品を十分に入手できていない可能性も考えられる」とし、今後の詳細な研究の必要性を指摘している。

[HealthDay News 2022年2月21日]

Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

(タイトル部のImage:f11photo -stock.adobe.com)