子育て世代に当たる日本人成人のがん検診受診行動に関連する因子が明らかになった。新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科の杉崎弘周氏らの研究によるもので、教育歴や経済状況、がんの家族歴などが、がん検診受診率に有意に関連しているという。研究の詳細は「Healthcare」に3月10日掲載された。

 がんは長年、日本人の死因のトップを占めている。がんの治療は確実に進歩しているものの、予後を左右する最大のポイントが早期発見であることは変わりない。しかし日本人のがん検診受診率は諸外国に比べて低いことが報告されており、例えば乳がん検診受診率は米国の80%以上に比較して44%に過ぎない。また、がんは一般に加齢とともに増えるが、日本では晩婚化と高齢出産の増加により、子どもが成人する前に親ががんに罹患することもまれでない。子育て世代のがん死は、残された家族への影響がより大きい。

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 これまでに、がん検診受診行動を左右する因子についての研究は国内でも行われてきた。しかし、子育て世代に焦点を当てた研究はなく、実態が明らかでない。杉崎氏らの研究は、このような背景のもとで実施された。

 2018年8月に、インターネット調査会社の登録者5万2,883人にアンケート回答を依頼し、8,608人から回答を得た。未婚者や子どものいない人、回答内容に不備がある人などを除外。全国7つの地方(北海道・東北、関東、北陸、中部、中国、四国、九州)からそれぞれの人口比率に応じた回収目標を達成し、2,410人を解析対象とした。対象者のうち、男性が51.0%であり、年齢は20代1.0%、30代19.7%、40代58.7%、50代18.8%、60代1.7%だった。がん家族歴については「なし」が37.6%、がんで亡くなった家族は「なし」が71.7%で、がん既往者本人からの回答も3.9%存在した。

 がん検診を受けたことがあるとの回答は57.3%だった。性別では、男性は41.0%、女性は74.3%が何らかのがん検診を受診していた。ロジスティック回帰分析により、がん検診受診の経験があることと独立して関連する因子として、女性〔オッズ比(OR)5.31(95%信頼区間4.24~6.65)〕、高所得〔年収400万円未満に対して800万円以上はOR1.79(同1.26~2.54)〕、がん家族歴〔OR1.69(同1.38~2.07)〕、教育歴〔高卒以下に対して大卒以上はOR1.36(同1.04~1.78)〕という因子が浮かび上がった。

 次に、自治体などによる検診が比較的充実している、肺・胃・大腸がん検診の受診経験を性別に検討すると、男性では、がん家族歴と年齢(40代に比し、肺・胃がん検診は50代以上で有意、大腸がん検診は60代以上で有意)との関連が認められ、所得や教育歴は有意性が見られなかった。女性では、家族歴はいずれのがん種の検診受診経験とも有意に関連していたが、教育歴や年齢は有意でなく(胃がん健診のみ50代が40代より経験ありが有意に多い)、一方で胃・大腸がん検診は所得によって受診経験に差が見られた(いずれも年収400万円未満と以上で有意差あり)。肺がん検診に関しては所得による差はなかった。

 女性の乳がん検診の受診に関連する因子としては、がん家族歴と所得(400万円未満に対して600万円以上で有意)が関連し、年齢と教育歴は非有意だった。子宮がんについては、家族歴、所得(400万円未満に対して800万円以上で有意)、教育歴(高卒以下に対して大卒以上で有意)、年齢(20代に対して30~50代で有意)が、受診経験があることに関連していた。

 以上の結果から著者らは、「教育歴、所得、年齢、がんの家族歴が、子育て世代のがん検診受診行動と関連していることが明らかになった」と結論付けている。また、日本では大半の人が健康保険に加入しており、いくつかのがん種に対する検診を無料や安価で受ける機会があるにもかかわらず、一般的な健康診断と同様に、社会経済的因子が受診行動に影響を及ぼしているという問題を指摘。「教育歴が短くて収入が少ない、壮年から中年期の成人に対するがん検診受診率改善の取り組みが必要とされる」と述べている。

[HealthDay News 2022年4月18日]

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