笑うことは、体と心の双方に良い影響を及ぼすことを示す研究データが報告された。福島県立医科大学疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らが、国内3カ所でメタボリックシンドローム(MetS)リスクのある地域住民を対象に行った、無作為化比較試験(RCT)の結果であり、詳細は「BMC Geriatrics」に4月23日掲載された。

 近年、笑うことがメンタルヘルスだけでなく身体的健康にも良い影響を与えることを示した研究報告が増えている。ただ、多くの研究は、同一対象の介入前と介入後の変化を評価したものであり、また、メンタルヘルスと身体的健康という双方への影響を同時に検討した研究は少ない。それに対して大平氏らの研究は、200人以上の地域住民を介入群と対照群に分けて、笑いによる体と心への影響を、多施設共同RCTで評価した点が特徴と言える。

 この研究には、福島県立医科大学、大阪大学、岡山大学の研究者が参画し、各大学周辺の地域住民から新聞広告などを通じて参加者が募集された。研究参加の適格条件は、MetSの構成因子(腹部肥満や糖代謝異常、高血圧、脂質異常など)を一つ以上持つ40~79歳の成人で、重度の心血管疾患や脳卒中後遺症のないこと。235人(平均年齢66.9歳、女性84.3%)が集まり、性別、年齢、BMIが偏らないように調整した上で無作為に2群に分け、1群を介入群とした。

 介入群に対しては、プロの噺家による落語の鑑賞、笑いヨガの実践、笑いと健康に関する講義などで構成された90分のプログラムを受ける機会が、12週間で8~10回提供された。このプログラム提供期間の前後での、BMIや健康関連の生活の質(HRQOL)、主観的ストレス・幸福感、うつ症状(GDS-15)などの変化を評価した。ベースライン時点で介入群と対照群の間に、年齢、性別(女性の割合)、BMI、飲酒・喫煙・運動習慣、笑う頻度、および、ストレスやうつ状態などのメンタルヘルス関連指標の有意差はなかった。

 年齢、性別、MetS構成因子該当数、処方薬剤数、研究地域などの影響を調整後、介入群は対照群よりも、複数の評価指標の大きな改善が認められた。例えば、体重(P=0.008)、BMI(P=0.006)の低下幅は介入群の方が有意に大きかった。また、主観的ストレス(P=0.004)、主観的幸福感(P=0.002)、楽観主義(P=0.03)のスコアも、介入群の改善幅の方が有意に大きかった。

 さらに、HRQOLで把握した健康関連の生活の質のうち、身体的側面を表すPCSスコアもやはり、介入群の改善幅の方が有意に大きかった(P=0.04)。加えて、このPCSスコアの変化とBMIの変化との間には、有意な負の相関が認められた(r=-0.19、P=0.04)。

 著者らは、本研究は自主的に応募した参加者を対象としているため、笑いに興味のある人の多い集団であった可能性があるという選択バイアスの存在など、解釈上の留意点が存在するとしている。その上で、「笑うことがストレスを軽減してメンタルヘルスを改善することにより、メタボリックシンドロームのリスク因子を持つ人の体重を減らすのに役立つのではないか」と結論付けている。

 なお論文中では、「声を出して笑うことによって消費エネルギー量が10~20%増加すると報告されており、笑いが有酸素運動としての効果も発揮するのではないか」との文献的考察も加えられている。また、介入群に割り付けられた人は、介入中に他者との出会いの機会が大幅に増加するという変化も認められたという。

[HealthDay News 2022年6月13日]

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