人工知能(AI)を用いた自動会話システム(チャットボット)との会話によって、パーキンソン病患者の笑顔が増えたり、発語障害が改善する可能性が報告された。順天堂大学大学院医学研究科神経内科の服部信孝氏、大山彦光氏らの研究によるもので、研究成果が「Parkinsonism & Related Disorders」に5月4日、短報として掲載された。

 パーキンソン病は、神経伝達物質の一つであるドパミンが減って、運動機能が障害される病気。顔の筋肉も影響を受けるため、笑顔が減ったり発語しにくくなったりすることがあり、パーキンソン病の重症度や治療効果を評価する指標にもなっている。

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 これらの症状に対して発語訓練などのリハビリテーションが行われるが、その機会が十分提供されているとは言えず、患者のニーズを満たせていない。大山氏らは、遠隔医療とテクノロジーがそのニーズを満たす手段となり得るのではないかと考え、自動音声認識・言語処理システム、およびAIを利用して、患者と自動的に会話するチャットボットを開発し、以下の検討を行った。

 研究参加者は順天堂医院の外来に通院しているパーキンソン病患者から、年齢が20~80歳で日本語を母国語としていることを条件に抽出した20人。認知機能障害(MMSEが20点未満)や自動音声認識システムで認識できない発語障害のある患者は含まれていない。

 まず、20人全員にトライアル期間として、チャットボットによる会話を毎日、5カ月間にわたって続けてもらった。会話の内容は、症状に関することだけでなく、病気とは無関係の事柄(例えば趣味や好きな食べ物、日常生活での出来事など)を含め、毎日5つ以上のトピックを目安とした。このトライアル期間中、主治医との遠隔での面談が週に1回のペースで続けられた。チャットボットで交わされた会話の内容は自動でレポートが生成され、主治医はそれを閲覧することができた。なお、処方の変更などの臨床判断は、遠隔面談とは別の機会に行われた。

 続いて全体を無作為に1対1で2群に分け、1群には引き続きチャットボットでの毎日の会話と週に1回の主治医との面談を5カ月間継続。他の1群には週に1回の主治医との面談のみを5カ月間継続した。介入効果は、笑顔の表情の変化の程度や持続時間などを自動判定する「笑顔度」という指標で評価した。また、会話の間を埋める「つなぎ言葉」(えー、あー、など)をカウントして会話の流暢さを評価したほか、運動機能や認知機能、生活の質(QOL)の変化も検討した。

 解析の結果、トライアル期間も含めて計10カ月間の介入を行った群で、笑顔度の有意な改善が認められた(反復測定分散分析による時間と群間の交互作用が、笑顔の頻度はP=0.02、最大持続時間はP=0.04)。また、つなぎ言葉の頻度は、介入群は8.6%減少し、非介入群は22.8%増加していた(P=0.04)。

 一方、運動機能や認知機能、うつレベル、QOLには有意な影響が認められなかった。ただし、探索的分析から、笑顔度の上昇やつなぎ言葉の減少と、認知機能や運動機能、精神症状の改善とが有意に相関することが明らかになった。

 これらの結果から著者らは、「AIによるチャットボットを利用した遠隔医療によって、医療従事者の直接的な介入時間を増やすことなく、パーキンソン病患者の笑顔と会話を増やせる可能性がある。また、自動解析システムを用いることで、医師の診察時には把握することができないような、病状のわずかな変化も見いだすことができるのではないか」と述べている。

[HealthDay News 2022年7月4日]

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