介護保険の住宅改修費給付制度の利用状況を調査した結果が報告された。医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構の土屋瑠見子氏らの研究によるもの。認知機能障害や視覚障害による要支援者は、他の理由による要支援者よりも、住宅改修を行う割合が有意に低いことなどが明らかになった。詳細は、「BMC Geriatrics」に5月20日掲載された。

 何らかの機能障害がある場合、その障害のタイプや程度に応じて住宅改修を行うことにより、転倒などによる受傷リスクが低下し生活の質(QOL)が維持され、死亡リスクが低下することが報告されている。介護保険制度でも、要支援・要介護認定を受けた場合には、住宅改修コストの1~3割、最大20万円まで助成され、手すりの設置、段差解消、便器の取替えなどが可能だ。土屋氏らは、この制度の利用状況と、障害のタイプ、性別、世帯収入などとの関連を詳細に検討した。

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 解析には、首都圏にある人口約49万人の都市の2010~2017年度の介護保険関連データを用い、要支援認定を受けた人の住宅改修状況を調べた。前記期間に要支援認定を受けた1万1,229人から、転居者や解析に必要なデータの欠落者などを除外した1万372人を解析対象とした。なお、この都市の高齢化率は27.4%で、調査実施時点の全国平均(28.1%)とほぼ一致している。

 解析対象者のうち、要支援認定の翌年までに住宅改修の助成を申請したのは15.6%であり、認定から申請までの期間は平均4.0±2.7カ月、最頻値は2カ月(改修した人の26.8%)だった。6.2%の人は改修を2回行っていた。助成額は大半が17万5,000~18万7,500円(自治体支払い分)の範囲だった。

 要支援1と2を比較すると後者、性別では女性の方が住宅改修の実施割合が高く、生活保護受給者は改修実施割合が低かった。機能障害のタイプ別に見ると、下肢障害やバランス障害による要支援者は改修実施割合が高く、認知機能障害や視覚障害による要支援者は実施割合が低かった。多変量ロジスティック回帰分析により、住宅改修実施割合に有意な関連の認められた因子は以下の通り。

 まず、調整オッズ比(aOR)が有意に高い因子として、女性〔男性に対してaOR1.182(95%信頼区間1.026~1.361)〕、下肢障害〔aOR1.290(同1.148~1.449)〕、バランス障害〔何らかのサポートにより立位保持可能でaOR1.724(1.429~2.080)、立位保持不能でaOR2.176(1.608~2.945)〕などが抽出された。

 反対に、調整オッズ比の有意に低い因子は、認知機能障害〔認知症高齢者の日常生活自立度のランクIでaOR0.774(0.690~0.868)、IIa以上でaOR0.553(0.434~0.704)〕、視覚障害〔aOR0.861(0.741~0.999)〕、生活保護受給〔aOR0.147(0.092~0.235)〕で認められた。なお、聴覚障害や上肢障害では、有意なオッズ比の上昇や低下は見られなかった。

 このほか、住宅改修コストについても、視覚障害による改修では中央値12万5,304円に対して、視覚障害以外による改修では13万8,047円で前者の方が有意に低いことなどが分かった(P=0.018)。

 これらの結果をもとに論文では、「認知機能や視機能に障害のある高齢者の住宅改修実施割合が相対的に低いことが明らかになった」と結論付けられている。著者によると、例えば温度の上限設定が可能な給湯システムへの改修によって認知機能障害のある要支援者の熱傷を防いだり、屋内の危険な箇所の素材変更や照明の設置により視覚障害者の受傷を防ぐことが可能という。ただし、これらの改修コストは、現時点では給付対象にならないことから、論文では「政策立案者は、給付制度の改善を検討する必要があるのではないか」とも述べられている。

 なお、生活保護受給者の住宅改修割合が低い理由としては、「その88.1%が賃貸住宅に居住しているため、必要があっても改修できないケースがあると考えられる」との考察を加えている。

[HealthDay News 2022年6月27日]

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