健診データを用いて、2015~2020年度に日本人の血圧がどのように変化したかを解析した結果、2019年のガイドライン改訂や2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響が確認されたとする論文が報告された。東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の佐藤倫広氏らの研究結果であり、詳細は「Hypertension Research」に6月20日掲載された。

 近年の日本では国民の血圧に影響を与え得る二つの出来事があった。一つは2019年に日本高血圧学会がガイドラインを改訂し、75歳未満の成人の降圧目標を以前の140/90mmHg未満から130/80mmHg未満(いずれも診察室血圧)に引き下げたこと。もう一つは2020年のCOVID-19パンデミックで、生活様式の変化やストレスが、人々の血圧に影響を及ぼしている可能性が指摘されている。佐藤氏らは、健康保険組合および国民健康保険の健診データを用いた後ろ向きコホート研究によって、一般住民の血圧の変化を調べた。

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 2015~2020年度に定期健診を複数回受診していて、血圧の変化を把握可能な15万7,510人(平均年齢50.9±12.3歳、男性67.5%)を解析対象とした。後期高齢者医療制度の対象である75歳以上は含まれていない。解析対象者は、高血圧治療を受けていない男性が56.2%、同女性が27.9%、高血圧治療を受けている男性が11.0%、同女性4.9%で構成されていた。

 まず、ガイドライン改訂前までの2015~2018年度の変化を、季節による血圧の影響を除外するため健診を受けた月を調整して検討した結果、収縮期血圧は前記の4群の全てで有意な上昇が観察された。血圧に影響を及ぼし得る季節以外の交絡因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、腎疾患・虚血性心疾患・脳血管疾患の既往、および血清脂質・血糖・肝機能関連指標などの健診で把握可能な全ての因子と時間依存性共変量)を調整すると、高血圧治療を受けている男性のみ、2015~2018年度にかけて有意な収縮期血圧の低下が観察された。一方でその他の3群の収縮期血圧は、いずれも有意に上昇していた(治療を受けていない女性は+0.33mmHg、同男性は+0.15mmHg、治療を受けている女性は+0.43mmHg、同男性は-0.24mmHgの変化)。

 次に、ガイドライン改訂の影響を調べるため、2018年度と2019年度の差を見ると、前記の全交絡因子を調整したモデルでは、高血圧治療を受けていない女性を除く3群で、有意な収縮期血圧の低下が認められた(治療を受けていない男性は-0.16mmHg、治療を受けている女性は-1.01mmHg、同男性は-0.25mmHgの変化)。治療を受けていない女性は有意な変化が認められなかった。

 続いて、パンデミックの影響を調べるため、2019年度と2020年度の差を前記の全交絡因子を調整したモデルで見ると、全群で有意な収縮期血圧の上昇が認められた(治療を受けていない女性は+2.13mmHg、同男性は+1.62mmHg、治療を受けている女性は+1.82mmHg、同男性は+1.06mmHgの変化)。

 まとめると、日本人の血圧は、2019年のガイドライン改訂後にわずかに低下し、2020年のパンデミック後に収縮期血圧が1~2mmHg程度上昇していた。パンデミックによる血圧の上昇について著者らは、「一般住民で認められたこの血圧上昇幅は、米国からの報告とほぼ一致している。一人一人で見ればわずかな変化と言えるかもしれないが、全国規模では合併症罹患率などに大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

 また、パンデミック後の血圧上昇幅が、男性よりも女性で大きいことの背景として、「パンデミックが女性に対して、より大きな精神的ストレスを与えていることを表しているのではないか」との考察を加えている。

[HealthDay News 2022年8月1日]

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