タブレット端末に図形を描くプロセスをアルツハイマー病の判定に生かす――。そんなシステムの研究を韓国の全北大学校、サムスン医療センターなどのグループが進めている。医療情報の専門誌『Journal of Medical Internet Research』で2020年8月に報告した。

 アルツハイマー病を含む認知障害患者の検査には「レイ複雑図形検査(Rey-Osterrieth複雑図形検査、RCFT)」と呼ばれる神経心理学的検査が広く用いられている。この検査では、ペンと紙によって図形を描いてもらい、完成した図形に基づいてスコアリングする。

 研究グループは、完成した図形だけでなく、描画のプロセスも判断材料にしようと考えた。実際、従来の研究で、認知機能の変化を捉えるためには、描くときの動きも参考になると報告されていたことがあるという。具体的には、運動学的要素(時間、速度など)、人が装置を扱うときの物理的要素(圧力、手を動かすの回数や密度など)が役立つというのだ。

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 そこで、タブレット端末とデジタルペンを使い、描画プロセスを追跡できるようした上で、それをスコアリングに活用できるかを検証した。

 研究グループは、健常対照者、早期発症アルツハイマー病、後期発症アルツハイマー病の3つのグループに対してタブレット端末とデジタルペンを渡し、次のように図の書き写しを依頼した。「タブレットの上半分に図が表示されます。ペンで図を書き写してください。できるだけ下の部分を使ってください。ペンには消しゴムはありません。描いた絵を変更することはできません。間違えた場合、無視して作業を続けてください。焦らず、完成したら教えてください」。

 これにより、描画パターンや運動性などを、ペン先の軌跡、空間配置、完成した図面の類似性から分析した。

検証の結果は…

 その結果、アルツハイマー病になると、描画の際のペンの動かし方や書くスピードなどに変化が見られたという。研究グループによると、アルツハイマー病の患者は健常対照者と比べると、より長い休止時間を取りながら断片的に図を書き写していた。さらに、書き写す対象の絵の近くに描いたほか、図の正確性も低くなっていた。

 一方で、早期発症と後期発症の間では差が見られなかったと説明している。空間の使い方や描画の初期の手の動きは似通っており、違いは早期発症の患者で図全体を描く際に左方向に逸脱する兆候が見られただけだった。研究グループは、対象者の少なさなどが理由で、より多くの人を調べると違いがみられる可能性があると指摘している。

 研究グループは、今回の結果から、描画させる方法はアルツハイマー病の「デジタルバイオマーカー」として利用可能だと指摘している。検査を繰り返すことも可能なため、病気の進行を確認するためにも応用できるとの見方を示している。


(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)