中国のヘルスケア分野を牽引する新たな動きとして、健康管理アプリなどのモバイルヘルス(mHealth)プラットフォームの拡大が進んでいる。孫逸仙大学の研究グループが、eヘルスの専門誌である『JMIR mHealth and uHealth』で総説を報告した。

 研究グループがmHealth拡大の背景にあるものとして指摘するのは、中国での医師および医療機関の不足と偏在だ。こうした医療資源の不足を補う存在として、健康管理アプリが欠かせなくなっている状況があると指摘している。

 医師登録数が多いmHealthプラットフォームとして研究グループが挙げているのは、「Doctor 7LK(七楽康集団の石榴云医、Pom doctor)」「Doctor Xingren(杏仁医生、Trusted Doctors)」「Micro-doctor(微医、we doctor)」「Doctor Hao(好大夫在線)」「Doctor Chunyu(春雨医生)」など。いずれも10万人以上の医師が登録している。

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 既に2017年11月時点で登録医師人数が多い順に、「Doctor Hao」約48万人、「Doctor 7LK」38.9万人、「Doctor Xingren」38万人、「Micro-doctor」26万人となっていた。

 これらmHealthプラットフォームの用途としては、予約や支払いのほか、医療相談や質問等のやり取り。さらには、生活習慣の改善や急性疾患の緊急対応などの情報提供。そして遠隔医療による慢性疾患管理などだ。本来であれば通院が必要になる診断や、処方箋の受け取り、支払いなどの医療に関わるプロセスがオンラインで可能になる。なお、今回の総説は2019年6月に報告されたものなので、現在はさらなる進展を見せていると考えられる。

 診療科の中でニーズが高いものについても言及している。医師と患者の登録数が最も多いのは循環器科。心臓病などの罹患率の高さを反映しているためだという。医師1人当たりの患者数が多いのはリウマチ科。これは、リウマチ科医師の不足を反映している。そして訪問(利用)数が最も多いのは皮膚科。オンライン診療の利便性を最大限に生かせる診療科である面があるようだ。

プライマリケア医療の担い手不足と偏在、国家レベルでの後押しも

 研究グループによると、1996年から2015年にかけて中国の医療従事者の数は674万人から1069万人へと58.6%増えたものの、専門医療ではない、総合的に第一線の診療にかかわる「プライマリケア医療」に関わる医療従事者は132万人から103万人に減ったという。しかも、規模上位100位の総合病院の半数以上が北京、上海、広東省に偏る一方で、西部12省、自治区では100位以内の病院は重慶省、四川省、山西省にしかないという偏在が顕著になっている。

 この第一線の医療の担い手不足と偏在の問題解決に、mHealthのニーズが強まっているというわけだ。中国で進む通信インフラの整備もmHealth勃興の背景にあるようだ。同国の国家統計局データによると、2015年末までに経済的な発展が遅れている地域であってもブロードバンドネットワークのカバー率は78%に達しており、全国では94.5%。2016年末までに携帯電話ユーザー数は13億2000万人に達しており、健康管理アプリは2000以上となっている。

 中国政府がmHealthの浸透に向けた動きを後押ししているのも大きいという。中央委員会と国務院の執行会議を主宰している李克強・中国国務院総理が、国家レベルでmHealthのサービスを推進している。国家主導によって普及が加速する同国ならではの動きが垣間見える。

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