新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響でさまざまな医療の提供が先延ばしにされた。そんな中、がん治療が4週間遅れると、死亡リスクが6~13%も上昇する可能性のあることが、新たな研究で示された。クイーンズ大学がん研究所(カナダ)のTimothy Hanna氏らが実施したこの研究の詳細は、「The BMJ」11月4日オンライン版に掲載された。

 この研究は、2000年1月~2020年4月の間に発表された34件の研究をレビューしたもので、世界のがんの44%を占める7種類のがん(膀胱がん、乳がん、直腸がん、結腸がん、肺がん、子宮頸がん、頭頸部がん)に関するもの。対象者の総計は127万2,681人に上った。Hanna氏らはこれらの研究データを基にメタアナリシスを実施し、治療の遅れと死亡率との関連を調べた。検討した治療法は、外科手術、全身療法(化学療法)、放射線療法の3種であり、治療の遅れは、診断後の最初の治療(手術、放射線療法、術前化学療法)、または手術後に実施予定であった治療(化学療法や放射線療法)、術前化学療法後の手術の遅れと定義された。

 その結果、4週間の治療の遅れが、死亡リスクの上昇に関連することが明らかになった。外科手術では、治療が4週間遅れるごとにリスクは6%(頭頸部がん)~8%(乳がんの乳房全摘術、または乳房部分切除)上昇した。治療の遅れによる死亡リスクの上昇は、一部のがんに対する放射線療法と全身療法ではより顕著であり、頭頸部がんでの放射線療法の遅れで9%、大腸がんでの術後化学療法の遅れで13%の上昇が認められた。

 また、治療が8~12週間遅れると、死亡リスクはさらに上昇する可能性も示された。例えば、乳がん手術では、8週間の遅れで17%、12週間の遅れで26%、死亡リスクが上昇すると推算された。さらに、COVID-19パンデミックの影響などで、1年にわたり、乳がん患者の手術が12週間遅れた場合の超過死亡者数は、米国で6,100人、英国で1,400人、カナダで700人、オーストラリアで500人と推算された(一次治療の83%は外科手術、治療の遅れがない場合の死亡率12%を前提条件として算出)。

 Hanna氏は、「この研究結果は、がん患者を大いに心配させることだろう。COVID-19によるロックダウンの影響を受けて、実際に、プライマリケアやスクリーニングを含めたさまざまなサービスが滞り、診断に遅れが生じたのだから」と述べている。その結果として、診断時点でがんが進行してしまい、より複雑な治療が必要となる患者が増えただけでなく、がん患者数自体も増えたという。このことは、今後、医療システムに大きな負荷をかけていくものと同氏は予測する。

 Hanna氏によると、治療遅れの多くは、スケジューリングやリソース不足など、病院のシステム上の問題が原因であるという。同氏は、「システムレベルでの遅れを減らす政策によって、がん患者の生存率を向上させることができるはずだ」と指摘。その上で、「患者や患者支援団体は、医師や政策決定者がこの問題に目を向けるように促し、今回の研究で得られたエビデンスに基づいて、患者が治療を受けるまでの待機期間や基準を再考させることが重要だ」と提言している。

[HealthDay News 2020年11月5日]

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