手術を受ける前に頭を使うゲームをしておくと、術後のせん妄リスクが低下する可能性を示した研究結果が、「JAMA Surgery」に11月11日掲載された。著者らは、「手術の前に栄養状態などの身体面を調整するのと同じように、いわゆる『ニューロビクス(頭の体操)』によって脳の働きを活発に保つことにより、精神面でも手術に備えることができる」と述べている。

 せん妄は一過性の意識障害で、手術後などに発生しやすく、特に高齢者に多い。せん妄が発生すると入院期間が長くなりやすく、また回復の遅れや死亡リスク増大にもつながることが示唆されている。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのMichelle Humeidan氏らは、手術前の高齢患者に“脳を鍛える”とされるゲームをしてもらい、せん妄の抑制効果を単盲検無作為化比較試験で検討した。

 検討対象は、全身麻酔による大手術を控え、術後に少なくとも72時間の在院が見込まれる60歳以上の患者268人〔年齢中央値67歳(四分位範囲63~71歳)、女性64.9%〕。認知機能障害、およびうつ病患者は除外した。無作為に2群に分け、1群にはゲームのアプリケーション(アプリ)が入ったタブレットを渡し、手術前の一定期間、1日1時間プレーするよう指示した。

 ゲームの内容は、記憶力、注意力、順応性、問題解決能力、スピードなどをテストするというもの。患者がプレーした時間や頻度などのデータは、アプリ内に記録された。そのデータから、介入群に割り付けられた患者の97%が、実際にこのゲームをプレーしていたことが分かった〔プレー時間中央値4.6時間(四分位範囲1.31~7.4時間)〕。

 術後7日間のせん妄発生率は、対照群の23.0%(126人中29人)に対し、介入群は14.4%(125人中18人)で、群間差は有意水準に至らなかった(P=0.08)。ただし、介入群のうち実際にはゲームを行っていなかった4人を除外した事後解析では、せん妄発生率が13.2%(121人中16人)となり、有意な群間差が見られた(P=0.04)。

 この結果についてHumeidan氏は、「介入群の全患者が指示どおりに毎日1時間プレーしたわけではなかったが、少しでもゲームをした患者にはある程度の効果が認められた。ゲームをした患者はしなかった患者に比べて、術後せん妄が生じるリスクが40%低かった」と述べている。また、ゲームを全くしなかった患者に比べ、10時間以上プレーした患者の術後せん妄リスクは61%低く、5~10時間プレーした患者は50%以上低かったことから、「プレー時間が長いほど効果があるようだ」とも語っている。

 論文の共著者の1人で米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のSergio Bergese氏は、「わずかしかゲームをしなかった患者でも、リスク抑制傾向が認められた」とした上で、「最適な介入内容、介入期間について、さらに研究を重ねる必要がある」と述べている。

 またHumeidan氏は、「今回の研究ではニューロビクスにゲームを用いたが、新聞を読んだり、クロスワードパズルを解くなどの頭を使う作業を1日1時間ほど楽しむことも、脳を鍛え、せん妄の予防になると考えられる」と語っている。

[HealthDay News 2020年11月13日]

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