くも膜下出血を招く「脳動脈瘤」を、3Dプリンターにより人工的に作成することに米テキサスA&M大学などの研究グループが成功した。脳動脈瘤の破裂を予防するために行われる血管内治療の新しい技術を試す開発プラットフォームとして期待される。この結果は、バイオ技術の専門誌である『Biofabrication』誌で2020年9月に報告された。

動物実験では開発に限界あり

 脳動脈は脳に血液を送り込む血管だが、この血管の筋層が弱くなると、風船のように膨らみ脳動脈瘤を作ることがある。

イメージ画像(出所:Getty Images)

 治療法の一つとして広がっているのが、脳動脈瘤の内部にコイルを詰めて塞栓させる方法だ。太ももの血管からカテーテルを挿入し、血管内からアプローチする手術となる。この方法は、血管外からクリップで脳動脈瘤を隔離する外科的な手術よりも大がかりな手術を要さないだけメリットが大きい。入院期間が短く費用も安く、回復時間も短くて、合併症も少ない。

 この血管内治療はさらに器具が進化しており改良が進んでいるが、そのときのボトルネックが、改良の試験が難しいことだ。実際の脳動脈瘤に近いものでないと、新しい治療法がどのように血管内を塞いでいくのかをシミュレーションすることができない。「動物実験が行われているが、人間と同じ仕組みを再現するのが不可能」と研究グループは指摘する。

 そこで、このたび研究グループが活用したのが3Dプリンターだ。3Dプリンターであれば、実際の脳動脈瘤の形状に近い構造を作り出しやすい。さらに、内部に脳血管の細胞を付着させて人工的な血管や動脈瘤を形作ることができれば、人の動脈瘤の内部が塞がるメカニズムを再現することも可能となる。

 研究グループは、細胞の足場になるマトリックスを3Dプリンターによって印刷。この内部に細胞を生きたまま付着させて細胞を融合させる開発を進めた。目標は人間の体内にできるものに近い脳動脈瘤を体の外で再現することだ。

動脈瘤内の血液凝固を評価可能に

 こうして作り上げたのが、脳血管にできるものに近い脳動脈瘤のモデルだ。脳血管の細胞は、作り出した血管壁の内部に広がって、互いに融合していることを確認。実際の人の脳動脈瘤に近い構造にすることができたとする。

 さらに、研究グループは作り上げた脳動脈瘤を使って、血液を実際に流し、コイルを充填する試験を実施。すると血液の流れから、コイル内の凝固の様子までを評価できることを確認した。

 研究グループは、血管内治療に用いるコイルが動脈瘤内にうまく適合するのか、あるいは止血できるのかを調べるための有望な方法になると結論。脳動脈瘤の治療を進化させる新しい開発プラットフォームになりそうだ。

(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)