舌など口や喉などの筋力を鍛えて、睡眠時の無呼吸や低呼吸の症状を改善する。そんなスマホアプリが臨床現場に将来広がるかもしれない。スペインのキロンサルードマルベーリャ病院を中心にした研究グループが、モバイルヘルスの専門誌『JMIR Mhealth Uhealth』で2020年11月にアプリ開発とその有効性についてのデータを発表した。

アプリで9つのエクササイズ

 閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)は、文字通り、寝ている間に、気道が狭くなり、呼吸困難が引き起こされる病気だ。肥満などが背景にあり、呼吸の問題にとどまらず、高血圧や不整脈、脳血管疾患などとも関係する。

 食事療法や減量、運動のほか、寝ている間に呼吸を助ける持続的気道陽圧(CPAP)を使って治療が行われる。手術が行われることもある。

 研究グループが着目したのは「口腔筋機能療法」と呼ばれる、口の周りの筋肉の機能を改善する治療だ。従来の研究では、この治療を行うことで、呼吸の機能が改善されるために有効であると報告されていた。研究グループでは、スマートフォンを使って口腔筋機能療法を手軽に行えるようにしたモバイルアプリを開発した。

(出所:AirwayGymアプリのダウンロードページ)

 アプリの名前は「AirwayGym」。まさに気道を鍛えるためのジムのように使えるものだ。患者は、アプリを自分で操作して、9つのエクササイズを行う。例えば、スマートフォンのスクリーンをあごに当てて、5秒間口を開けてスクリーンを押すというような運動だ。アニメーションに従って口の運動をして、フィードバックを得る。結果はオンラインで医師らに共有される。チャットで医師らと連絡を取ることも可能だ。

 エクササイズで鍛えるのは、舌の外側にある4種類の筋肉。それぞれの筋肉の緊張を高められるようにすることで、呼吸障害を改善する。

無呼吸や低呼吸が半減

 このたび研究グループは、40人を対象としてアプリを3カ月間に渡って90回使用するグループと、対照のグループにランダムに分けて、呼吸障害の重症度や症状への効果を調べた。

 この試験から明らかになったのは、アプリの利用によって、睡眠時無呼吸および低呼吸の重症度や症状が軽減するということ。1時間当たりの無呼吸や低呼吸の回数であるAHI指標は、44.7から20.88へとほぼ半減。1時間当たりの酸素欠乏に陥った回数、酸素欠乏指数は36.31から19.4とやはり半減した。

 舌やくちびるの筋肉の機能も有意に改善。AHI指標の改善が、この口腔機能の改善と相関していることも確認した。

 一方で課題となったのは、アプリの利用に向かない人も存在したことだ。もともと舌の動きが制限されていたり、重い鼻閉があったり、顎関節症があったりする場合である。今回の研究ではアプリを使用したうちの16.6%がアプリの利用を拒否した。

 研究グループは、課題はあるものの、上気道の筋肉機能に原因があるケースでは、閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群の治療としてアプリは有望な治療になると指摘する。

(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)