大腸の中を、生きた生物のように動いて、腸内にピンポイントで薬剤を運ぶロボットが開発された。米国のパデュー大学の研究グループが、専門誌『Micromachines』で2020年9月に発表した。

髪の毛数本分のマイクロサイズ

 研究グループが開発したのは、直方体の形をした微小なロボットだ。大きさは、長さが800μm(μは100万分の1)と1mm弱。幅400μm、高さ100μmと「髪の毛数本分ほどのサイズ」(研究グループ)である。

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 外部から磁場を操作して動作させる仕組みを考案した。「回転する外部磁場を加えることで、車のタイヤが荒れた地形を進むのと同様にロボットを回転させて動かせる」と研究グループは説明する。磁場が生体に有害ではなく安全であるのも重要だ。

 用途として想定しているのが、薬剤輸送へ応用だ。ロボットを必要な位置に移動させ、一定時間が経過すると薬剤を徐々に拡散する。薬剤を全身投与した場合のように、抜け毛や消化管出血などの全身性の副作用を最小化できる。

大腸の内部を着実に移動する

 腸では「蠕動運動」と呼ばれる動きがあり、液体や固体が肛門に向かって排出される。ロボットを肛門から内部へと動かすことは、腸本来の活動に逆行するため容易ではない。そこで研究グループは、麻酔をかけたマウスの直腸に開発した立方体のマイクロロボットを挿入。実際に腸内での移動が可能なのかをリアルタイムに超音波画像で観察した。

 こうして分かったのは、リアルタイムの超音波映像において、マイクロロボットが大腸内を転がって、厳しい条件下でも大腸の内部を移動できることだ。さらに、研究グループは、豚から切除された大腸の中でも回転移動できることを確認した。今後、開発したマイクロロボットを複数同時に使うなどして、スケールアップも視野に開発を継続する見通しだ。

 実用化を考えると、マイクロロボットは、ポリマーと金属でできており生産コストが安価であるのも利点という。研究グループは、診断目的への応用も想定する。マイクロロボットによって組織を採取するような用途が考えられるという。


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