10代女の子に「苗木保護ゲーム」に取り組んでもらうことで、HPVワクチン接種の理解を進められる――。そんな研究成果を、米国のノースカロライナ大学などの研究グループが専門誌『JMIR Serious Games』で2020年12月に発表した。

米国でも高いとはいえない接種率

 子宮頸がんをはじめとした発がんリスクを高めるウイルスとして知られているヒトパピローマウイルス(HPV)。HPV感染やHPV関連のがんを予防するために有効なのがワクチン接種だ。日本でもHPVワクチン接種を促すべきだと議論になることがあるが、米国でも2018年にHPVワクチン接種(2回または3回)完了率は13~17歳の10代でおよそ半数と決して高いとは言えない状況だという。「破傷風、ジフテリア、細胞性百日咳の接種が9割近いのと比べると大幅に低い」と研究グループは指摘する。

 HPVワクチン接種が普及しづらいのには複数の理由があるようだ。研究グループによると、医療提供者が強力な推奨を行っていないほか、保護者に「一般市民のHPVウイルス感染率は低い」と認識されていたり、ワクチンの副作用や費用負担の懸念があったりするという。接種率を高める上では、こうした障壁を認識した上で、対処していくのは重要だという。

イメージ画像(出所:Getty Images)

 そこで研究グループが着目したのが、ゲームの活用だ。研究グループは、ワクチン接種の効果が高い11~12歳の子どもと保護者の意見を取り入れつつ、ストーリーの中でワクチンについて学べるゲーム「Land of Secret Gardens」を開発した。

 秘密の庭という題名の付いたゲームの内容は、薬を使いながら、苗木をウイルスから守り、庭造りをしていく内容としている。ゲームを進める中で、HPVワクチン接種によって、体をHPVから守るという知識を学べるようになっている。ゲームを進めることでポイントを獲得できたり、課題達成のバッジを得られたり、関心を高めていくゲーミフィケーションの手法が用いられている。

「幼い子でも考えやすい」

 研究グループは、ワクチン接種を開始していない55人の子どもを対象として2つのグループに分け、28人はゲームをプレイしてもらうグループ、残りの27人はゲームをしない比較対象のグループとして、その後のHPVやワクチンについての知識、ワクチン接種を妨げる障壁を乗り越える自信をつけてもらえるか(自己効力感)を検証した。ワクチン接種の開始や完了についてもグループ間で差が出てくるのか比べた。

 こうして分かったのは、ゲームのプレイによってワクチン接種についての知識や自己効力感が高められるということ。ゲームをプレイしたグループの方がワクチン接種の開始や完了が増える傾向が見られたという。

 ただし、統計的な有意差が認められるまでには至らなかったとしている。研究グループは、「庭のたとえにより、有害なウイルスを防ぐワクチン接種を幼い子どもでも考えやすくなる」と説明する。

 ゲームで知識や障害を乗り越えられるようになるポイントは、ワクチン接種への興味を持った上で、家族や友人との会話が促されるところにあるようだ。インタビューを繰り返しながら、ゲーム内容の改善を繰り返したことで、興味を持ちやすい内容に改善したのも重要なポイントだとしている。


(タイトル部のImage:Romolo Tavani -stock.adobe.com)